いまの時代、すぐにネット検索やAIを使って、誰もが即座に正解を求めています。誰かがつくった正解といわれるなにかを知ることで安心を得ますが、実際にそれが自分にとっての正解かを考えること、そして個人の思想はどこか抜け落ちてしまったようにも思えます。
少し話は異なりますが、現代アートの世界では社会への課題提起としてコンセプトを重視する作品が世界的に大きな流れとなっているのだとか。そんないまの時代にとっての正解の流れに対して、「Bギャラリー(B GALLERY)」は、個人の文化的な背景を通じて自らの技能を磨き、オリジナルの表現を追求し続ける現代アーティストたちに焦点を当てたグループ展「象牙の塔からの不条理主義者」を開催するようです。
参加するのは、オーガミノリさん、TENGAoneさん、細井えみかさん、増井岳人さん、そして展示のディレクターを務める宮原嵩広さんの5名。宮原さんによる熱のこもったコメントが以下です。
フォーマリズムや、フォーディズムの影響を受けつつ、現代アートはどのように進化し、社会的文脈と結びついていてきたのか。ポップアートは消費社会を積極的に取り込み、アートと商業的価値を直結させました。この商業化の流れは、アートマーケットの拡大とグローバルな商業ギャラリーシステムの成⻑を促し、アーティストが自己表現と市場の要請に応える形で作品を制作できるようになりました。加速する技術革新の中で、技法的ユニークさを失ったアーティストはどのように世界を捉え、視覚化しうるのか。かつての労働が、物的生産に従属していたのに対し現代では、非物的な生産、すなわち人々とのコミュニケーションや社会との接続が、新たな労働の中核を成しています。ミニマルアートが暴露したアートの労働性もコンセプチャルアートなどにより、知的労働、脱物質化が芸術的アウラさえも量産を可能にしました。同時に、この流れは脱物質化や商業主義への反動としての「脱アート化」も見られます。これは、植⺠地時代の芸術に対する再評価とも関連しています。植⺠地美術は、商業主義やグローバル市場との複雑な関係性を通して、現代アートに新たな視点を提供し、文化的アイデンティティと対話を強調しています。芸術は単なる視覚的な体験から、社会的・政治的メッセージを伝えるものへと変容し、肉体的発露は機械にかわり知的労働すら人工知能が補完しうる時代において人類はなにを芸術とするのでしょうか。
芸術は死んだのか? もしかしたら有史以前の戯れに還元されるのかもしれない。芸術における労働と技術またはその社会的・文化的背景を元に、制作の主導権をアーティストの手に戻してみようと思う。
この展示に合わせて、「伊勢丹新宿店」のアートギャラリーで、「マジシャンズエンカウンター #3 象牙の塔からの不条理主義者」も共同開催されます。2月15日(土)16:00からギャラリーツアーもあるそうなので、興味のある方は覗いてみては。
象牙の塔からの不条理主義者
会期:2月8日(土)〜2月25日(火)
場所:B GALLERY
住所:東京都新宿区新宿3-32-6 ビームス ジャパン(新宿)5F
時間:11:00〜20:00