〈ディオール(DIOR)〉がコラボレーションの相手に選んだのはヒルトン・ネル。ヒルトンはメンズ クリエイティブ ディレクター、キム・ジョーンズが愛してやまない南アフリカを拠点とする陶芸家だ。
クリスチャン・ディオールなど表舞台に立つ人々にスポットが当たるのは当然だが、どんなに卓抜したクリエーションでもそれを理解し、かたちにすることのできる職人がいなければコレクションは成り立たない――。キムはそんな思いをヒルトンに託した。
包みボタンが使われた胸ポケット。端正なステッチワークも美しい。
織りを感じさせるコットン、フラップポケット、コーデュロイ襟を思わせる切り返し。ディテールを拾えば確かに陶芸家の作業着のそれだが、仕上がってみればまるで印象が異なる。頭を混乱させたのは、端正なテーラリングや包みボタンに象徴されるオートクチュールで養われたもろもろだ。
ワークウェアやストリートウェアという相反するエッセンスをラグジュアリーに昇華する手法の、これは極北にあると思う。
Jacket ¥420,000
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa