そのローファーはつま先にハギがありません。つまり甲の立ち上がりをぐるりと一周させたパーツは一枚革で構成されているということになります。ハギがなければその革は足を柔らかく包み込み、クリーンな印象を与えます。
そんな持ち味を加速させているのがコバ。出し縫いや目付けががないその佇まいはクリーンそのもの。
すべてが有機的に繋がるラインも美しい。
甲の立ち上がりを抑えたフォルムに気持ち張り出したラバーソールのバランスが秀逸で、思わず手に取ったローファーは、〈ザ・ロウ(THE ROW)〉らしさにあふれていました。
そしてこれまた〈ザ・ロウ〉ならではのあしらいですが、内装はヌメ革のフルライニング仕様となっています。素足でも気持ちよく履けるでしょう。
ミニマルとモダンの両立は多くのブランドが目指すところですが、〈ザ・ロウ〉は頭一つどころか二つも三つも抜けています。現代のニューヨーカーの息遣いをそのまま投影することのできる地の利があるのは間違いないけれど、真の強みはユーザー目線にあると踏んでいます。〈ザ・ロウ〉からはデザイナーが自ら着たい服をつくっている、という熱量が感じられるのです。
NIC LOAFER ¥244,200
Direction & Styling_Kazumi Horiguchi
Photo_Junghyun Kim
Text_Kei Takegawa