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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.111 “あえての海外買い付け”が良い。 気張らず被りたい日本企業キャップ。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップが全て入れ替わった14シーズン目! 2巡目も折り返しの第111回目は、「オンザウェイ ストア(ONTHEWAY STORE)」の小山 翼さん! どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


小山 翼 / ONTHEWAY STORE 店主
Vol.111_日本企業のキャップ

ー2巡目ということで、今回はどんなニュー・ヴィンテージを紹介いただけますか?

前回同様、今回もアイテムはキャップ。テーマは企業モノで集めてみました。

ー企業モノのキャップといえば「アストロジーストア(Astrology store)」が Vol.43“雰囲気とノリのいいトラッカーキャップ”、「マーマレード(marmalade)」がVol.106“アメリカ買い付けのダッドキャップ”でも紹介していますが、また違ったアプローチでしょうか?

ウチでは基本的に海外でユーズドアイテムの買い付けを行っていますが、そこで“海外で出会う”というサプライズも込みで見つかると嬉しいのが日本企業モノです。タイや東南アジアなんかだとリサイクル物資として流れてくる場合もあるでしょうし、現地に生産背景となる自社工場や販売支社があったりするので、そこからユニフォームや販促ノベルティが放出される場合もあったりします。

ーたしかに。ちなみに現地での流通価格的にはどうでしょうか?

一部の有名企業以外はまだ価値を見出されておらず、マーケットも確立されていないので、あくまで中古衣服扱いの安価で売られています(苦笑)。ただし、一部のそういうのが好きなディーラーが〈ソニー(SONY)〉〈パナソニック(Panasonic)〉〈トヨタ(TOYOTA)〉のような有名企業で、かつデザインが良いモノはある程度の値段を付けてピックしていたりも。それで言いますと、この〈カワサキ(KAWASAKI)〉なんかはそっち側。

カワサキのキャップ ¥6,600(オンザウェイ ストア)

ー日本でも近年、バイクカルチャーが注目を集めていたりしますし、良きタイミング。結構凝った作りをしていますね。

見応えありますよね。フロントには“Kロゴ”を刺繍でドンッ! 同社の象徴的カラーであるライムグリーン、通称“カワサキ グリーン”を纏い、レーシングジャケットを想起させる切り替えが施されたデザインですからね。背面のストラップにはロゴが刺繍されているし、オリジナルのタグが付いているので、レーシングチームのスタッフ用か、販売されていたマーチャンダイズグッズだったのかも。

ー次もまた面白そう。〈クボタ(kubota〉って…あの?

クボタのキャップ ¥5,500(オンザウェイ ストア)

そうです。農業機械の国内トップメーカーの〈クボタ〉です。公式サイトによると環境ソリューションなど、幅広く事業を展開している模様。これもロゴを含めたデザイン全体の雰囲気が良かったので買い付けました。背面に刺繍された URLは、カナダ最大規模の〈クボタ〉ディーラーである「ベルク エキップメント(Berg Equipment)」のもの。〈クボタ〉には林業用の重機もラインアップされているし、この色鮮やかなオレンジとリアルツリーカモ柄のコンビネーションも、カナダと聞けば何か納得ですよね。

ー3つ目は?

釣り好きにはお馴染みの〈ダイワ(DAIWA)〉。この“TEAM DAIWA”というのは、1980年代後半〜2000年代初頭に、同社のラインアップの中でも上位機種に冠されていた称号のようです。

ダイワのキャップ ¥8,800(オンザウェイ ストア)

ーこういうの、近所の釣り好きオジさんがよく被っていました。

たしかに本当に“好きな人”しか被りませんよね(笑)。飾り紐が付いたこのタイプで、しかも〈ダイワ〉ですし。バイザー裏がグリーン、コットン×ポリ素材の黒ボディにアクセントとして金色の刺繍が効いています。ラストは、飲料メーカー〈サントリー(SUNTORY)〉の「ボス(BOSS)」。

サントリーのキャップ ¥5,500(オンザウェイ ストア)

ー「ボス」といえばいまも販売されている人気シリーズ。プレゼントキャンペーンで大ヒットしたボスジャンをはじめ、アパレルのノベルティグッズをよく作っているイメージがあります。

ボスジャンは継続的にプレゼントキャンペーンを行っているので国内でもよく出てくるんですが、キャップは珍しいかと。こちらはタイで発見。同じキャップに何度か遭遇していますが、別にタイでボス自体を販売している感じはないので、日本から流れてきたのかも…。いや、オーストラリアでは販売していたので、ノベルティだったのかもしれません。

ーこのシルエットも、何周か回って逆にいまっぽく感じられます。

バイザーがちょっと長めで、被りは浅め。どこかのストリートブランドが作っていそうなシルエットなのに、背面のアジャスターはパチパチでなくスライド式ベルト。このレトロな仕様も今の気分かなと。コレに限らず、日本企業モノを凝った格好に合わせると狙いすぎ感が出てしまうので、気張らず気軽に取り入れるのがオススメです。

小山 翼 / ONTHEWAY STORE 店主
オーダーメイドジュエリー会社に就職した後、独立を目指し一度、オーストラリアへ出稼ぎに行く。帰国後、人生の迷走期間を経てジュエリーブランド〈インプットアウト(IN-PUT-OUT)〉として独立。2023年夏に自身が作るジュエリーとセレクトしたアパレルを販売するべく、横浜の飲み屋街である野毛エリアに「オンザウェイ スト(ONTHEWAY STORE)」をオープン。国内外のニッチなブランドをメインに古着も扱う。
インスタグラム:@ontheway_store_yokohama

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