ー4月21に別名義のプロジェクト"Flare"としてアルバム｢Two Albums｣をリリースされますが、今このタイミングで本作を出した理由などがあればお伺いできますか?

KEN ISHII：これは一応再発盤なんですけど。去年は15周年ということで過去の活動を振り返る企画をずっとやってたんですが、これに関しては全然触れていなかったので。あとは音楽性という面でもメインでやっている自分のプロジェクトとも違う流れなので、今僕のパーティに遊びに来てくれている新しいお客さんにも、こういうこともやっていたんだよっていうのを知ってもらいたいなと思って。

ーなるほど。

KEN ISHII：あとはさっき言ったことにもつながるんですが、昔だったら｢クラブ=ダンス｣で、ハッピーな感じだけでも良かったのかもしれないけど、本来クラブミュージックって、より実験性を求めるところもあってしかるべきだなとは思ってて。この｢Flare｣っていうプロジェクトはそこをやっていたんですよ。今はこれだけ成熟したシーンで成熟したリスナーがいるから、また当時とは違った感じで新しいリスナーに聴いてもらえたらいいなと思って。そういうつもりで出してます。

ー制作時はクラブでプレイすることを考えて作ってますか?

KEN ISHII：プロジェクトにもよるんですけど、この｢Flare｣名義のプロジェクトだと、全然考えてないです。ヘタするとレコード会社のことも考えてない。本当に自分が作りたい音を作っているだけ。それとは別の｢KEN ISHII｣プロジェクトでダンストラックを作る時は、｢ここをこういう展開にするとこういう流れになって｣とか、ある意味お客さんをコントロールするプログラミングを混ぜて作ったりはしてますけど。プロジェクトごとに変えていますね。

ーご自分で制作してアーティストとしてプレイもするじゃないですか。ダンスフロア用に作った曲を実際にクラブでプレイした時、お客さんからの反応はご自分で思った通りダイレクトに来ますか?

KEN ISHII：思った通りに反応がある時もあるし、全然ダメだこりゃっていうこともありますね(笑)。そこは難しいんだけれども、それが面白いところで。世界中の、どんなすごい有名なスーパースターアーティストでもみんなそうだと思うんだけど。

ーそうなんですね。

KEN ISHII：みんな経験上、こういう曲が受けるっていうのを知ってるはずなのに、いざ自分で作ってみると｢あれ、思ったよりウケないな｣っていうことがすごいあって。でも、ここが難しいからみんな音楽を作り続けるんじゃないかな。本当にわかったらみんな同じ事繰り返していればいいだけなんだけど。やっぱりそのへんはミステリーが未だに、あるんじゃないかなと(笑)。

ー(笑)。ちなみにプレイをする際に一番嬉しいのはお客さんが盛り上がった時ですか?

KEN ISHII：クラブでやる場合、僕の場合はお客さんがニコニコして楽しそうに盛り上がってくれてるっていうのが一番喜びを感じますね。あとは、自分にしかできない流れみたいなものが、うまくいったなと思う時とか。エンターテイメントな部分と、自分のアーティスティックな部分とのバランスなんですけど、その2つの要素をブレンドして、いつもその混ぜ方を変えているところがあって。例えばクラブでプレイするのとフェスティバルでプレイする場合は同じブレンドにはならないですし。そのブレンドし具合が今日はちょっと上手くいったなと思うと、盛り上がったのとはまた違う喜びがありますね。

ーなるほど。あと、今年はこんな活動をしたい、というものがあればお伺いできますか?

KEN ISHII：そうですね。去年が比較的国内中心で過去を振り返る感じのプロジェクトが多かったんで、今年は少しずつ新しいものを作り出していきたいなと思ってます。今まで一緒にやったことのないアーティストとコラボレーションしたり。最近も現代美術館でやったようなメディアアートのプロジェクトにちょっと参加したりとかしてたんですけど。あと最近、東京ミッドタウンで流れる音楽を今年一年間やることになったんですよ。ああいう場所に合った、所謂ストレートなテクノとかではない部分で自分で作っていきたいと思いますね。クラブでプレイするのは、僕の中で一番ベーシックで、好きな部分ではあるんだけど、それ以外の自分にとって刺激になるようなことを1個ずつやっていきたいなと思います。

ー最後に、4月10日にプレイするWOMBの10周年記念パーティの意気込みなどがあればお聞かせください。

KEN ISHII：去年もアニバーサリーでやらせてもらったんですけど、多分お客さんはずっと盛り上がってくれてるとは思うんですよ。自分がどの時間にプレイするかにもよるんですけど、最初から最後までバーっと飛ばそうかと思ってますので、みんなで楽しみましょう!

ーどうもありがとうございました。楽しみにしています!