自分流アップグレード - 代官山通信（蔡 俊行）

　ずいぶん昔、CAの女性たちと食事会をしたことがある。いわゆる合コンってやつですかね。今も昔も飛行機は一般人にとってそれなりに憧れの対象であり、ブラックボックスでもある。そしてその運行や秘密などについていろいろ知りたがるものである。当然我々もそうで、アップグレードされるコツみたいなものはあるのかとか、機内でどう声をかければCAと仲良くなれるのかというくだらない質問を浴びせかけたものである。

　その時にあるCAがなるべく最後の方に搭乗し、しれっと空いているビジネスクラスのシートに堂々と座ってればまずバレないわよと言うのだった。なるほど。

　そんな勇気のいることこれまでにしたこともなければこれからすることもないだろうけど、このニュースを読んでしなくて良かったと思った。

　ANA機出発1時間半遅れたトンデモ理由　「窓側に座りたい」と1ランク上の席に居座る

　たぶん昔と違い、いまは座席表のチェックをしっかりしているのだと思う。

　でもこれ読んで感じるのは、ANAの職員も安全上の問題というよりいうこと聞かないこのセコイ男にものすごく腹が立って、意地でも席に戻したかったんだろうと思う。それによって1時間半以上飛行機が遅れようが、この眼の前の男の方が問題だったのだろう。執念のようなものを感じる。たぶん機内から放りだした後に、パンパンと手を叩く姿が思い浮かぶ。

　このANAのニューヨーク便。いつもよく利用する便である。自分が搭乗している便でなくて良かった。