That Way About Things
ハラダユウコ
Archive&Style Shop Press
1971年2月東京生まれ。アメリカ、ヨーロッパを中心に幅広いジャンルと年代からバイイングされたUSEDやデッドストックを扱う古着屋「アーカイブ&スタイル」のショッププレスとして、古物をこよなく愛する日々を送っています。
www.archiveandstyle.com
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M-65 Field Jacket
2009.12.11
フイナムブログをご覧の皆様こんにちは☆
今日は久しぶりにちゃんと物の話を書きます。
何をとりあげようかな~?と考えた挙句、
ド定番(笑)なM-65にしました。
今、30代半ば以上~50代前半までの年齢の方なら、
きっと一度は誰もが袖を通した事があるのではないか?と思える
(あくまでも、ハラダ個人の思考ですが。。)
USフィールドジャケットの定番中の定番ですが、
その歴史でもちょこっと書いていきたいと思いますので、
毎度、ちょこっととか言いつつ、
長いブログになりそうですから(笑)
お時間に余裕のある方はどうぞ~~~~~お付き合いくださいませ~~~☆
まずはこちらが、↓M-65の写真です。
M-65フィールドジャケット(M-65 Field Jacket)は、
US 陸軍の野外戦闘用のジャケットで、
1965年に正式採用されたことから、
M-65フィールドジャケットと呼ばれています。
採用初期のものはミルスペックに,
「COAT, MAN'S, FIELD, M-65」の表記がありましたが、
その後は「M-65」の表記が無くなり、
代わりに「COLD WEATHER」の文字が、
追加される様になりました。
襟部分のジッパーを開けると、
中にフードが装着されている事から、
「~WITH HOOD NYLON COTTON SATEEN OG 107」
と併記されているものもあります。
↓ こちらがそのタイプのミルスペック(1967年製のM-65です。)
![]()
同じくミルスペックに記載されているサイズ表記に、
X-Short、Short、Regular、Longとあるのは、
着丈の長さのサイズで、
XS,S,Mの各々のサイズごとに4種類があります。
(ただしL,X-LサイズにはX-Shortの設定は無いようですが)。
最終的には
ミルスペックの表記は
「COAT, MAN'S COLD WEATHER,FIELD~」となり、
COLD WEATHER=寒冷地用外套ということからも分かる通り
元々は陸軍の装備品では単なるジャケットというより
防寒用のコートという位置づけで作られていたのだと思います。
肩の後ろの背中の部分にはバイスイング(アクションプリーツ)と、
呼ばれる折り込みがあって、
布に余裕を持たせ、 腕の取り回しがし易いように設計されています。
裾とウエストの部分には、
ドローストリングと呼ばれる引き紐が 取付けられていて、
生地を体に密着させて動き易くしたり、
寒さを防ぐことができるようになっています。
![]()
アメリカ軍では個人に支給された官給品の衣類は、
基本的には返還する義務があります。
そんなわけで、自分のサイズに直すことは出来ないため、
体型よりも大きいサイズを着用せざるを得ない場合があるので、
上記のバイスイングやドローストリング、
開口部分にベルクロを採用することによって、
ある程度のサイズは個人差に対応できるように考慮されているのです。
フロント部分のジッパーは、
1971年頃までの初期納入分はアルミが用いられていましたが、、
柔らかい金属であるアルミは耐久性や 酸化して開閉しづらくなる問題があり、
中期以降ほとんどのモデルで真鍮製のものが採用されています。
しかし、真鍮も酸化に強いとはいえ金属であるため、
腐食は避けられないのと、また軽量化を計るため、
1985年頃からのモデルにはプラスティック製の
ジッパーが採用されることが多くなりました。
ジッパーの製造会社は 初期のものではCONMAR、TALON、
中後期においては YKK、SCOVILL、などが多く見られます。
後で、写真も出てきますが、
M-65はその前の型のM-51を、
改良したもので、一見、
この2タイプはよく似ています。
2つのタイプの違いとしてあげられるのは、
1、生地が綿100%からナイロンとの混紡になったこと。
2、通常の襟から立て襟へ変更された こと。
3、ボタンで止めていた襟と袖口にベルクロテープが取付けられたこと。
4、袖口は防寒と手を保護するための角形のフラップが付けられたこと。
(またこれは、折り込むこともできます。)
5、ウエストにあるドローストリングが外側から内側に変更されたこと。
6、裏地が取付けられ二重構造となったため、若干保温性が向上していること。
などが挙げられます。
このような改良が当時(1965年頃)必要だったのは、
当時米ソ冷戦の緊張感が 急速に高まっていことが大きな理由のひとつで、
朝鮮戦争では極寒地で戦う現場の兵士達に、
防寒用の衣類のニーズが高まっていて、
その対策が急務だったからです。
↑ここまでがM-65の写真です☆
で、このM-65ですが、
先にも書いた様に、1965年に採用されたモデルなので、
もちろんこの前身にあたる型があります。
その本モデルは第二次世界大戦から朝鮮戦争において使用された
M-41、M-43や、
M-50、M-51フィールドジャケットです。
M-65はその後継として開発され、
1990年代後半まで、
実に40年以上にわたって現用モデルとして使用されていました。
↓ こちらが1941年5月に導入されたODフィールド・ジャケットです。
正式な使用番号はPQD No.20Aですが、
一般には「M-1941ジャケット」と呼ばれています。
元々はこの上に防寒コートやレインコートを
着るように考えられていましたが、実際にはそうした着用がほとんどなく、
充分な温かさも得られない上に、
雨から身を守る事も出来なかったので、
野戦用としては役立たないと判明しました。
また、こうした薄いカーキ色は、汚れやすい上に、
戦場では目立ってしまうため、公式には1943年の9月に廃止されましたが、
新型のM-1943が不足していたため、
1945年に第2次世界大戦のヨーロッパでの戦闘が終結するまで、
着用され「GI ジョー」のシンボルの一つとなりました。
↓ここからの写真はその、
M-65の一つ前の型で、
1951年に正式採用されたM-51です。
M-65はこのM-51を継承していて、
両タイプは類似している部分もすごく多いです。
M-43は、後で写真に出てきますが、
どちらかというとクラシックでトラッドなジャケットスタイルのデザインで、
生地の色もM-65より、
かなり落ち着いた暗めのトーンのODカラー使用となっています。
また、
M-51は、
M-43同様に襟こそ残っているものの、
基本系はM-65にかなり近いデザインに、
変化していますが、
やはり、M-65に比べるとどことなく、クラシカルな雰囲気です。
このM-51のライナー統合システムを継承した
M-65のデザインは他国の軍服デザインにも、
大きく影響を与えているらしく、
US陸軍だけでなく、周辺国の戦闘服でも、
類似するデザインを採用している例が多くあると言います。
また、日本でも、近年に自衛隊で
採用された防寒戦闘服外衣の上衣は、
外観、素材、襟に収納するフードなどがM-65から、
大きく影響を受けて作られているそうです。
そのような事実から、
M-65は、
アメリカ軍がこれまでに採用したミリタリーアイテム中で、
傑作の一つと言われているのです。
それから↓こちらが、
更にその前の型であるM-1943の写真です。
M-65 は、
実際には、
主にアメリカ軍及びアメリカ沿岸警備隊などによって使用されましたが、
南ベトナム軍や韓国軍など、
アメリカの支援する国々の兵士達にも少数ながら支給され、
着用されたりもしていました。
製造会社によって、細部の違いはあるものの、
正式納入されたM-65の素材の多くは 綿:ナイロンの混紡で、
1965年当時は、
最新素材だったナイロンの特徴である速乾性と耐久性、
綿の特徴である保温性と吸湿性を兼ね備えた生地として採用されました。
この丈夫な素材の組み合わせはナイロンコットンと呼ばれ、
その後、アメリカ軍服に多用されました。
とはいえ、
M-65の弱点を挙げるとしたら、やはり、
このナイロンコットン生地の、通気性の悪さが一番にあげられます。
もともと 防寒用として作られているため、
風を通さない代わりに、 内側からの熱や湿度も籠もってしまい、蒸れやすいですし、
また、耐水性がほとんどないため、
雨天時には別にポンチョなどの雨具を別に携行する必要があります。
さらに、 それを重ね着すると一層蒸れてしまうという。。。。
そんな弱点を解消するために、
ベトナム戦争以降は、
新しい素材や柄のパターンなどの研究も改良され、
近年ではゴアテックスなどナノテクを用いて開発された
新素材で作られたECWCSパーカーなどの、新モデルが採用される様になりました。
そのような経緯で、
1990年前後にM-65の、
アメリカ軍へ正式な納入は完了しているのですが、
ここからが、なんだか親近感が湧く面白い話で、
ゴアテックス製品はやはり、非常に高価で、
部隊内で支給される数も少ないので、不足しがちだそうで、
アメリカ軍では州兵を始めとして、
官給品以外の私物装備の持ち込みに対して緩やかなこともあり、
入手しやすい価格帯のM-65は、
いまだに多くの基地内で現在でも実際に販売されており、
兵士が私物装備として使用を続けている場合も多くあるといいます。
そして、
その現場の兵士達の間では、
新型のゴアテックス素材の撥水性、保温性、放湿性、軽量性は
高く評価されているらしいのですが、
洗濯を繰り返した場合には効果が低下しまう事や、
野外での引っ掻きや擦れなどに対してはM-65 の方が
強度が高いという意見や、
ゴアテックスは付属のフリース素材のライナーを重ね着しなければ、
実はそれほど保温性が高くないので、
結局は蒸れてしまうという意見、
また厚く頑丈な生地で作られていたM-65は、
作業をする際には、身体を保護することができ、
簡単な破れだったら簡単に修理が出来ることから、
長年使用され続けてきたM-65を、
今でも、現役に戻したいという声も根強くあるのだそうです。
また、軍装としてだけではなく、
ファッションとしてもM-65が広く人気がある事は有名ですが、
私の個人的な記憶で鮮烈だったスタイルは、
やはり1976年に公開された映画「タクシードライバー」
でのロバート・デニーロ扮するトラヴィスが着用してたM-65スタイルですね☆
細かく調べたところ、
デニーロが着ていたのは、
ショルダー・ループ付でファスナーがアルミ製の前期モデルで、
左袖にはトラヴィスのキングコングの刺繍の入ったパッチが縫いつけられていました。
これは所属した海兵隊偵察部隊(架空)のチームパッチという映画中の設定だったそう。
また、右胸にはチームパッチと、
"We are the people"と書かれた缶バッジが 付けられていました。
また、このほかにも
有名なところとしては、
1982年の映画ランボーでは シルヴェスター・スタローンが、
また、
1979年に公開されたクレイマー、クレイマーでは、
ダスティン・ホフマン演じるテッド・クレイマーが OD色のものを着用しています。
また、アメリカでは軍への納入が終了した現在でも、
民間レベルでのニーズがあるために 製造が続けられていて、
アメリカ国内以外でも、ほぼオリジナルと同じスペックで作られた民生品も、
軍の放出品やデッドストックと共に今でも、多く流通しているのです。
![]()
と、以上、
かな~~~~~り長~~~~~~~いブログになりましたが、
お付き合いいただきまして、
ありがとうございました~~~~☆
来週には新しい商品たちも続々入荷予定です☆
またどんどんアップしていきますので、
どうぞよろしくお願い致します~~~♪
以下、久しぶりに店内写真を撮ったのでアップしま~~~す♪
あと今朝のごま&むぎです☆


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