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ハラダユウコArchive&Style Shop Press1971年2月東京生まれ。アメリカ、ヨーロッパを中心に幅広いジャンルと年代からバイイングされたUSEDやデッドストックを扱う古着屋「アーカイブ&スタイル」のショッププレスとして、古物をこよなく愛する日々を送っています。www.archiveandstyle.com

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ハラダユウコ
Archive&Style Shop Press

1971年2月東京生まれ。アメリカ、ヨーロッパを中心に幅広いジャンルと年代からバイイングされたUSEDやデッドストックを扱う古着屋「アーカイブ&スタイル」のショッププレスとして、古物をこよなく愛する日々を送っています。
www.archiveandstyle.com

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MAD MAGAZINE

2012.01.15

皆様こんにちは。
ここのところ、ぐっと冷えているので、
とうとう、ヒートテックに手を出してみました、ハラダです。
頑張ってなんとなく抗っていたんですけどね~。
正直、快適です(笑)。


さて、今回は久しぶりに漸く、
物の話を始めます。

以下、結構頑張って割愛せずに書いていきますんで、
と言うのも、今日のお題の「MAD」の歴史を調べたら、
なかなか話が面白かったので、ほとんど、省かずに書くことにしました。
なので、長いし細かいですから、
お時間ある時に読んでください~☆
(文章が多くなった為、写真は同じの何回か出てきますが、
気にしないでください~(笑))

こちら↓
スキッ歯の笑顔がなんともひょうきんな、
アルフレッドEニューマンの缶バッジです☆
キレ~イに24個揃っています☆
(たぶんバラで売りますが。。。)

P1090001.JPG

アルフレッドEニューマンとは、
1952年に創刊されたアメリカの人気風刺コミック雑誌
「MAD」のメインキャラクターです。

色々、説明する前に「MAD MAGAZINE」のHPがあったので、
よかったら、こちら
チェックしてみてください。

それとプラスして、
更にこちら
見ていただくと「MAD」の1952年創刊から最近の表紙が紹介されています。
今回ご紹介している缶バッジの表紙ももちろんあります☆
アルフレッド・E・ニューマンのいろんなスタイルが見れるので、
よかったら、覗いてみてください~☆


以下、「MAD」の歴史などひも解きます。
「MAD」は、先にも書きましたが、
1952年ECコミックから創刊された、
アメリカの風刺コミック雑誌です。

P1090004.JPG

ECコミックは正式名称を
Entertaining Comics(エンターティニング コミック)といいまして、
創始者は1930年代半ばに、
コミック史研究家たちから、
最初のアメリカンコミックと考えられている、
フェイマス・ファニーズ:ア・カーニバル・オブ・コミックス』を出版した、
アメリカンコミック業界の開拓者の一人として名高い
マックス・ゲインズです。


ECコミック
の編集者アル・フェルドスタイン
ハーヴェイ・カーツマンは、
ジョニー・クレイグを筆頭に有名かつ熟練したフリーランスの作画家達に仕事を依頼し、
カーツマンフェルドスタイン自身もまた作画を手掛けて、
それらの漫画原作はゲインズの助言の下に、
主にこの二人の編集者とクレイグにより執筆されていました。

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ECコミックは、
その原作が極めてセンセーショナルな物である一方で、
作画は非常に丁寧という斬新なアプローチと、
編集部に寄せられたファンレターおよび、
ファンクラブを通じて読者との交流を開拓することで、成功を収めていきました。
また、
作画家個人の署名を作品に入れる事を許可し、
個性的な画風の開発を奨励し、
更にはコミック誌の中に1ページの作画家紹介ページを盛り込むことで、
作画家チームの地位を向上させました。
それは、その頃の作画家の名前がよほど有名な作画家じゃないと、
クレジットされない当時の漫画業界の慣習とは対照的な物でした。

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また、
ECは一連の卓越したタイトルを、
エンターテイニング・コミックスの社名の下に出版しました。

最も悪名高かったのは、
ホラー物3誌で、
この3誌の中では、
物語の主人公が次々起こる不気味で皮肉に満ちた運命を通じて、
身の毛もよだつような「生の喜び」が描かれていました。


ECの戦記コミック誌
フロントライン・コンバット(最前線の戦闘)』と
トゥーフィステッド・テイルズ(鉄拳の物語)』では、
当時の愛国主義的な風潮にあらがって、
しばしば死んだ魚のような目をした英雄とは呼べないような主人公の物語が扱われていたり、

『ショック・サスペンストーリーズ』コミック誌では、
人種差別
薬物使用アメリカ的生き方の是非の様な
深刻な問題が取り扱われていました。

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また、サイエンスフィクション分野でも、
ECは自社のSFコミック誌
ワイアード・サイエンス』や、
ワイアード・ファンタジー』を、
フィクション・ハウス社の『プラネット・コミックス』誌に掲載されているような
スペースオペラではない真のSF作品を掲載する、
我が社の最も誇るべきSFタイトル」と常に自慢していました。


こうして、
傑出したイラストにより描かれる衝撃的な結末の物語が、
ECのトレードマークとなっていったといいます。

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ゲインズは毎晩遅くまで大量の書籍を読み漁り、
物語の主題となる着想の源を捜し求めていました。

また、
その翌日には編集者のフェルドスタインが、
原作に発展させられそうなアイデアを思い付くまで、
発掘してきた素材を次々に提示して見せていたといいます。
ECの最盛期には、
編集者のひとり、カーツマン
3本のタイトルを担当していたのに対し、
フェルドスタイン7本のタイトルを担当していました。
こうして、
数百本の作品が執筆される中で
主要に取り扱われる基本的なテーマがありました。

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例えば、
しばしば登場人物の犯罪に対する因果応報が描かれる作品が登場しています。
「コレクション完成(Collection Completed)」と題された作品では、
妻に対する当てつけのために剥製作りに没頭する男が登場するのですが、
男が妻の可愛がっていた猫を殺して剥製にすると、
我慢の限界を越えた妻は男を殺し、男の死体を剥製にして飾るという顛末が描かれていたり、



「嫌悪感(Revulsion)
」は、
昔自分の食事に紛れ込んでいた虫を見つけたことで、
虫への嫌悪感を抱くようになった宇宙パイロットの話で、
物語の結末では、
巨大な昆虫型エイリアンが自分のサラダの中にいるパイロットの死体を発見し、
恐怖の叫び声を上げるというような。。。


この他にも、
生物の解剖、鍋の中で茹でられるロブスター、
毛皮のコート、魚釣り等もこれらの状況の一例であり、上の様なやり方で扱われています。

また、最近では珍しくなくなりましたが、
ヘンゼルとグレーテル』『眠り姫
赤頭巾』等の童話を、
身の毛もよだつような形に翻案した「恐ろしいお伽話」シリーズを60年以上も
前に展開していたり、と。


この他にも、
リンチ行為反ユダヤ主義警察の腐敗等なども、
ECは多く取り上げて掲載していました。

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また、面白い手法としては、
EC三大ホラー誌の中で3人組の物語の案内人を、
キャラクターとして登場させています。

『テールズ・フロム・ザ・クリプト』を案内するクリプト・キーパーと、
『ザ・ヴォルト・オブ・ホラー』で読者を出迎えるヴォルト・キーパーと、
『ザ・ホーント・オブ・フィアー』にけたたましい笑い声を響かせる
オールド・ウィッチです。


コミックの中で、
悪意に満ちた物語の筋書きを楽しげに詳しく述べ立てながら、
案内人達は他の案内人とくだらない口喧嘩をして、
次々に駄洒落を飛ばし、読者を嘲笑し侮辱しさえします。
ようこそ、腫れ物に食屍鬼どもよ......」と。


この読者に対する無礼な嘲りは、
同社のパロディ雑誌『MAD』のトレードマークにもなり、
その言葉巧みなやり取りは、
後にマーベル・コミックのスタン・リーを含む多数の原作者に模倣されました。

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最も後まで残されたECの遺産は、
このパロディ雑誌『MAD』です。
『MAD』ECの成功が確実なものとなる前に、
カーツマンの副企画として開始され、
アメリカで最も有名で最も長続きしたユーモア出版物となりました。


1954年に風刺が大ブームとなり他の出版社が、
『MAD』の模倣雑誌を出版すると、
EC姉妹雑誌『パニック』を創刊しました。
『パニック』アル・フェルドスタインにより編集され、
『MAD』の常連作画陣が参加していました。


1940年代の終りから、
アメリカンコミックの内容と、
子供に対する悪影響が取り沙汰されるようになり、
漫画業界は世間からの批判に晒され始めました。
1950年代に入ると、
連邦政府による捜査が始まり、
結果、コミックの売り上げは激減し、複数の企業が倒産しました。

ゲインズは彼の仲間である出版社に集会を呼び掛け、
コミック業界が団結して外部からの検閲と戦い
コミック業界の傷つけられた名声を修復する事を提案しました。

漫画出版社らは全米コミックスマガジン協会と、
コミックス倫理規定委員会を結成しましたが、
コミックス倫理規定委員会の規制は、
あらゆるコミック誌がその出版に先立って、
倫理規定の承認を受ける事を厳格に強制した形になってしまいました。
これはもちろん、
ゲインズの望んでいた事ではなく、
彼は委員会への参加を拒否しました。

倫理規定の新しい規則では、
いかなるコミック誌も表紙に、
ホラー」や「テラー」や、
ワイアード」といった言葉をタイトルとして使用する事を禁じていました。
流通業者はECのコミックの多数を取り扱い拒否するようになり、
1954年9月14日に、ゲインズは、
ECの三大ホラー誌2冊のサスペンストーリー誌を廃刊せざるを、
得ませんでした。


ECは主要な出版ラインを、より現実的なコミック誌へと移行し、
また、出版を続けていたSFコミック誌も改名しましたが、
それらの創刊号には倫理規定委員会の承認印が表示されていなかったことから、
販売業者は皆、取り扱いを拒否しました。

こういった事態から、社員との協議の末に、
ゲインズは渋々ながら自社のコミック誌を倫理規定に迎合させ、
新しく改変した全タイトルの第2号からは承認印が表示されるようになりました。
しかし、これらの改革の試みは悉く商業的に失敗し、
後に全タイトルが廃刊となってしまいました。

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ゲインズは彼のコミック誌を検閲から守り抜こうと、
コミックス倫理規定委員会と多数の闘争を行っていきます。
コミック史研究家ディグビー・ディールが記録している特に有名な例が、
SF漫画『審判の日』に対する修正要求に対し、
ゲインズが委員会理事を告訴も辞さずと脅迫した一件です。

この作品では、銀河共和国の代表として人間の宇宙飛行士がロボットの住む惑星を訪れます。
宇宙飛行士はロボット達が一方は他方に比べて僅かな権利と特権しか与えられていない事に気付き、
ロボット達の不平等さを理由にロボットの惑星を銀河共和国へ加盟させない事を決定します。


最後のコマで宇宙飛行士がヘルメットを脱ぎ、
彼が黒人であった事が明らかになるのですが。
倫理規定のいかなる条項とも無関係に、
理事のマーフィーは黒人の宇宙飛行士を削除するよう要求してきました。
このことを、
ディールは以下の様に詳述していています。

この倫理規定独裁者事務局の要求に、
ゲインズたちはかんかんになった。

「理事のマーフィーはいかれていた。
やつは本気で俺たちにそうさせる気だった」と。

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また、
[ECの編集者]フェルドスタインは回想しています。
「俺がこの原作を提出すると、マーフィーはこう言った。
『黒人は駄目だよ』。だけど......だけど、
それはこの作品のテーマそのものなんだぞ!」


マーフィーが黒人主人公の削除を強要し続けている一方で、
フェルドスタインは作品を印刷ラインに乗せました。
「いいかね」フェルドスタインマーフィーに言いました。
「あんたたちは、ただ俺たちを廃業させたいだけなんだ。
だから俺たちを締め付けて、何も出せないようにしてるんだ」
フェルドスタインから、
独裁者マーフィーとのやり取りの結果を伝えられたゲインズは激怒し、
すぐさま受話器を取り上げてマーフィーに電話をかけ、
「馬鹿げてる!」、
「私は報道機関にこの事を知らせるつもりだ。
そうすればお前に勝ち目はないぞ。お前を告訴してやるからな。」とがなり立てました。
マーフィーは彼が心の底から寛大な譲歩であると考えた物を提案してきました。


「わかった、パイロットから汗の雫を取り除くだけでいいことにしよう。」
これにはゲインズフェルドスタインも怒り狂った。
なぜなら、主人公の黒い肌に浮かんだ汗に、二人は星をきらめかせていたのです。
「くたばれ!」と、二人は受話器に向けて声を揃えて叫び、電話を切りました。
交渉は決裂のままに終わりましたが、
最終的にこの作品は無修正のままで、
インクレディブル・サイエンス・フィクション1956年1-2月号
に掲載されました。しかし、
これがECの出版した最後のコミック誌となりました。


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その後、
ECのアメリカ国内における流通は破綻し、
ゲインズ『MAD』を除くECの全タイトルを廃刊しました。

ECの受難の期間も『MAD』は順調に売り上げを博しており、
ゲインズ『MAD』を雑誌形式に変更する事を独断で決定しました。
この変更により『MAD』コミックス倫理規定の規制から自由になりました。
『MAD』はその後数十年にわたって多大な成功を収める事になり、
現在では欧州をはじめ複数の国々でも出版されているのです。


長々と綴ってみましたが、
そんな骨太い歴史」を持つEC『MAD MAGAZINE』
の看板キャラクター、アルフレッドEニューマン
典型的な呑気なおばかさんを表すキャラクターでもあるみたいですが、
どうしてどうして、能ある鷹は。。。の如く、
外見だけでは解らないアナーキーな心を持っていそうですよん。

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ニューマン君の缶バッジ、
気になる方は見に来てくださいね~☆


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