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石光 史明VISUAL CONNEXION C.E.ONY発のヴィジュアル誌、VISIONAIRE<ヴィジョネアー>の日本総代理店を営んでいますが、最近はもっぱら映画鑑賞家として「つぶやいて」います。昨年は自腹観賞232本! 今年も観まくるぞぉ~♪visualconnexion.com

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石光 史明
VISUAL CONNEXION C.E.O

NY発のヴィジュアル誌、VISIONAIRE<ヴィジョネアー>の日本総代理店を営んでいますが、最近はもっぱら映画鑑賞家として「つぶやいて」います。昨年は自腹観賞232本! 今年も観まくるぞぉ~♪
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2011.12.22

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「すみません、八幡町(やわたちょう)はどのあたりになりますか?」

歳の頃は70半ばといったあたりでしょうか、おじいさんと言うにはあまりにも元気な初老の男性が僕にそう訊ねてきたのです。

・・・

先日の皆既月食を余すことなく堪能した僕は、余韻覚め止まぬままにほろ酔い気分で月見散歩へと出掛けた途中、このおじいさんが自転車に乗った若者に何かを訪ね、その若者が何か無造作に答えたのを脇目に歩いていたのですが、しばらくしてその若者が「知りません」と考えもせずにぶっきらぼうに答えていた事に気付いたのです...  

そこから遡ること3 ,4日ほど前。
最近は健康管理とダイエットも兼ねて1日5キロ、週3回で計15キロのランニングを自分に課しているのですが、その日は天候も体調もすこぶる良く、いつもよりもハイペースで走っていたところ、ラスト直前に年配の男性が紙を片手に「すみません」と走っている僕に声を掛けてきたのです。

正直走っている僕に声を掛けたのにもビックリしましたが、とても急に立ち止まれる状況ではなかったので「ごめんなさい」と一声掛けて走り去ったのですが、どうにも気になり足を止めて戻ってみると「◯◯駅に行きたいのですが」との事。

とても歩いて行ける距離ではないので息も途切れ途切れに男性の進行方向を指して次の信号の大通りでバスに乗れば大丈夫と教え、元の方向へ走りだしてからしばらくするとこっちのバス停の方が近かった(と言っても数百メートルの差なのですが)という事に気付き、思考能力がぼやけていたとはいえちょっと悪い事をしたなと後々気にする羽目に...

そんな経緯もあったのでどうにも気になって冒頭のおじいさんのいた交差点の方に戻る事にしたのです。だってどう考えても夜中の1時過ぎにお年寄りが人に何かを訊ねるなんて変だし、もしいなければそれでいいかなと。逆に朝起きて事故で死んでたなんてニュースを聞く方が目覚めが悪いと...

5分くらい戻った辺りですかね、案の定しばらくすると件のおじいさんが前から歩いきたので目を合わせてあげると開口一番「すみません、八幡町(やわたちょう)はどのあたりになりますか?」と訊ねられたのです。

・・・

生まれも育ちもその辺りが地元の僕が知る限り、そんな町名は過去にも存在した事はないので「ここは、◯◯ですよ」と言うと、矢継ぎ早に自分は昔この辺りに住んでいて今日は東京から来たんだけれども気付いたらお財布も何もかも落としてしまって、仕方がないから友達の家に行こうと思ったけれど地名が変わってしまって道に迷ったと...

???

おじいさんの息からは一滴のアルコールの匂いもしません。ましてやこの辺りにこんな時間まで開いているお店もない住宅街。何となく予感は的中しているよう...

ただ頭ごなしに否定すると、しまいには「ありがとうございました」とどこかに行きそうになるで、何となく状況を把握しつつも、もうちょっと詳しい事を知った上で対処したかった僕はおじいさんの話しに合わせる事にしたのです。

そして、しきりにこの道を真っすぐ行けば小倉に着くのはわかってると言うので、「小倉って九州の?」と聞くと嬉しそうに「そうですよ!良かった知ってる人がいて」との答え。

そう、色々な話しから察するにどうやらおじいさん的には今いるのが昔住んでいた九州の八幡(今の北九州市)で、東京から遊びにきて道に迷ったと思っているようで、しきりに「すぐそばに友達の家があって、あの先の坂(注:この辺りは平地)を下った所に実家があるから10万円を借りて帰ろうと思うと」とまるで屈託のない笑顔で僕に語りかけるのです。


とはいえ「じゃあね、おじいさん!」なんて言うわけにもいかないので、まずは名前を聞くとキチンと答えられるんだけど住所がわからない。お金を持っているかを再確認するとやはりありません。ただもしかしたら携帯でも持たされているかもと思って訊ねると「携帯電話はもってるんだよね」とまたもや笑みを浮かべるもんだから「じゃあ使わなきゃ意味ないじゃん!」ってツッコミたくなったくらい(笑)。

早速おじいさんに携帯を出してもらうと「安心だフォン」を持っていて1〜3の短縮ボタンにはそれぞれ「◯◯センター」、「自宅」そして「◯◯◯」と女性の名前が...

何となく1のセンターに電話をする気にならなかったので2の自宅に掛けようとすると「自宅は自分一人だから誰もいない」と。残すは3の女性しかないので「この人は誰?」と訊ねると「あぁそれは東京にいる妹だから掛けても迷惑になるだけだから」なんて言うから「大丈夫だよ、おじいさんが夜中に一人で外にいる方が心配だし妹さんに電話で行き方を聞いて一緒に行ってあげるよ」と説き伏せ電話を掛ける事に。

...と思った矢先、この電話、落とさないようにしてあるのか紐が付いていておじいさんのベルトに付けてあったのですが、とにかくそれが短くて30cmくらいですかね。とても耳まで運べないしどう見ても取れそうもなかったので仕方なくおじいさんの隣にひざまづいて掛けるという実に滑稽な様相に、片や酔っぱらいと片や迷子の陽気なおじいさんの2人で声を上げて笑ってしまったのです。

たださすがにこの時間に人様、それも赤の他人に電話をするのは気も引けたのですがこのまま警察のお世話になってはその後が心配なので3のボタンを押して何回かコールすると「はい、もしもし」と年配の女性の声が聞こえてきたので、実はこうこうこういう事情で多分お兄さんと思われる方と一緒で携帯に名前があったので電話をした旨を説明すると、状況が飲み込めたようで「ありがとうございます。今どちらですか?」と訊ねられたのでこちらの場所を伝えるといまひとつピンときていないようだったので、逆に先方の住まいを訊ねると「◯◯5丁目です」...って、さっきおじいさんが自転車の若者に訊ねていたところじゃないかと。

ラッキー!

しかも有り難い事に今から迎えに来てくれるというのですが、それなりに年配の妹さんという事もあってあまり道の名前に詳しくない。でもやり取りをしていると近くの病院の名前が出たので、その近くのコンビニで待ち合わせをしましょうという事に。もちろんおじいさん的には自分は九州の八幡にいて妹は東京という事になっているので、とりあえず実家まで一緒に行ってあげるよと病院のある方へと向かったのです。

ほんの5分くらいの道中ですがおじいさんはすまなそうにも「あの裏にちょうど同級生の家があって、その先を右に行った坂を下ると実家がある」って説明を始めるんだけど、不思議とおじいさんの昔住んでいた町の風景に見えてきちゃうんですよね。そして大通りを渡ろうとすると急に走り出して「いや昔はかけっこの選手でね」って本当に元気なんですよ(笑)。

ほどなく待ち合わせのコンビニに到着すると同時に一台のタクシーが止まって中から初老の女性が出て来たので「あの人だ」と思い信号を渡ると、さっきまで妹は東京だからとか言っていたおじいさんはどこ吹く風で満面の笑みを浮かべ「よぉ!」なんて声を掛けるもんだから「あれ?そこの所はいいの?」なんて思ってまたもや笑ってしまって...

妹さんはといえば繰り返し深々と頭を下げてお礼を言っていたのですが、おじさんといえば「いやぁ不思議なご縁もあるもんですねぇ!またどこかでお会いしましょう!」なんて取り付く島もない(笑)。

一応名前を聞かれたのですが、おじいさんの声にかき消されてしまったのと、別に何がという事もないので「良かったねおじいさん!夜中に出歩いちゃダメだよ!」なんて声を掛けて家路に。

とってもとっても不思議な時間でしたけれど、今思い出してもとってもとっても楽しい時間だった気がします。

Because of Christmas...
もし何の事か解らないとしても、あのおじいさんも素敵な時間を過ごしていますように...

Happy holidays to all of you...
そんな一日があってもいいと思います。

あれから気になって何度か同じ道を夜中に通っていますが、まだあのおじいさんには再会する事はありません...

元気かな?おじいさん。

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