あのね、ケジメじゃなくて、イジメなんだよ、それ。 - Boolog A Go-Go!（石光史明）

｢TBSは今日、死んだに等しいと思います。」

これは'95年にオウム真理教による坂本弁護士一家殺害事件の発端となったと言われる「TBSビデオ問題」に対して、当時のNEWS23のメインキャスターだった筑紫哲也さんが自身の番組内で口にしたもので、18年も前の事なのに、この日の放送は鮮明に覚えていますし「今まで誰も触れなかった、アンタッチャブルな何かが動いた」そう感じたものです。

昨日発売された週刊文春の記事で、AKBのある女の子の熱愛がスクープされました。すでにこの件をご存じの方も多いだろうし、特にAKBに興味がなくとも、メンバーである以上彼女たちには恋愛は御法度で、もしバレたら引退か左遷という見せしめ的な結末が待っているのがお約束というのが彼女たちの暗黙のルールというのはご存じのはず。

ただこれに関しては昨年末に総合プロデューサーの秋本康氏が自分はそんな事言った覚えはないという事をラジオ番組で発言した後に、総監督という立場のリーダーがイベントで改めて「恋愛禁止を掲げる」と明言した経緯があるようですが...

いや、正直これはこれでどうでもいいのです（※）。

言っても今どきの芸能界やアイドルの話なんで、CDの発売や舞台が始まる前や客入りがわるそうだと急にスキャンダルや病気ネタが出てきて世間の注目を集めて...なんて言うのは世界中どこにでもある話。AKBのそれにしてもまぁそれが最初からのルールなら仕方ないよね、程度の認識でした。

ただ昨日の夕方になって（大袈裟に聞こえるかもしれませんが）事態は一転し、僕のタイムラインにこんなツイートが踊ったのです。

そして、そこにあったリンクをクリックしてみると、YouTubeのAKB48公式チャンネルにつながり、ここに埋め込んだ信じられない画像が流れ出したのです。

一番最初に込み上げてきたのはやり場のない、収まらないほどの激しい怒り、そして吐き気でした。僕に子供がいますが、自分の子供が夢のためとは言え、いつかこんな姿になっている事を想像しただけで悪寒がはしります。涙が出ました。いま想像しただけでも涙が込み上げます。

総合プロデューサーの秋本康さんは一体何を考えているのでしょうか？

この画像を撮影し、アップロードし、またそれを許可した担当者は何を考えているのでしょうか？

関係者の中にお子さんがいる方はどのくらいいらっしゃるのでしょう。若者の気持ちやニーズがわかる事と、未熟な若者や子供の事を守る事は違うはずです。

AKBのルールがあるのはわかります。でもそれ以上に本人や周りの意向に関係なく日本国民として、人間としてやってはいけない事、守らなければいけないルールや法律、そして人権があるはずです。独立国家ではないのですから。

2ヶ月前まで未成年だった女の子が、たとえ芸能人とはいえ、掟があったとはいえ、恋愛？をし、それを週刊誌に撮られたからと言って、百歩譲って映像の中で語っているように自分の意思で、誰にも相談せずに刈ったとしても、彼女がそこに至ったメンタル的な流れを作った事も問題視されるべきです。

それがわからない人は、今の日本が抱えている「イジメ」や｢体罰」の本質を理解していないのです。言わないから、やらないからイジメがないわけじゃない。知らないフリ、見ないフリをするのも、本当に知らない、見ていないのも、もはや同罪なんですよ。社会として終わっている。（今回の事がイジメや体罰と捉えるかではなく、そういうスタンスがそこに至るという意味）

それなら全柔連も大阪の桜宮高校も問題なくなっちゃうでしょう？お金を貰っているから、芸能界だから、アイドルの事だからって許されるわけがない。いや、絶対にあってはならないと思うのです。強豪校だからしょうがない、お家芸だから金を獲るためにはしょうがないって言って今まで見逃してきた構造と同じじゃないですか。海の外から見たらそれこそ何も変わらないと思いますよ。

逆に彼女たちの方が遙かに影響力があるからこそ、率先して改革して行かなければいけないはずです。

僕が前述し※印を付けた部分。

｢いや、正直これはこれでどうでもいいのです」って始まる所。

これこそが今の日本の異常さ、無関心さ、イジメ体質の本質だと思うんですよ。これはこれでどうでも良くないってみんなが感じて声を上げて、動いて行かなかったら、そのうちいつか、すぐそこに最悪の事態が訪れるという危機感を持つべきです。ちゃんとしていた他の子が可哀相なんて言ってこの異常事態を見逃してたらそのうち大変な事が起きると危惧しないと。

今どきの子供は、今どきの大人が思うほど強くないんですよ、実際。

例えばですが良く若手芸人さんが大先輩をド突いて笑いを誘うシーンがTVなどで見かけますが、あれは「若い人が目上を敬っていてるのが当たり前」で、その上であえて裏で事前に打ち合わせをするなり、後で平謝るなりしてあえてド突くから（見ている方もやっている方もそれを知っている）というお約束が面白い訳です。じゃなかったら非礼極まりないし、実生活でやったなら事と次第によっては殴り合いになる事でしょう。

そんなの当たり前じゃんって言われそうですが、残念ながら皆さんが思っている事がもはや当たり前じゃないんですよ。そういう世の中だ、時代だっていう認識が足りないからいつまでたっても同じような事件が起きるのです。

嘘だと思うならお子さんがいない方（いる方はなおさら驚くはずです）は親戚やお友達の子供に会ったら聞いてみて下さい。「急須」を知らない「お茶を入れる」という言葉を知らない子供が多いことに驚くはずです。だってあなたやご家族やお友達が急須でお茶を入れていない限り、生まれた時からお茶はペットボトルに入っていてコンビニで買うものなんですから。住んでいる家にもよるでしょうが、左（湯）右（水）の蛇口を捻って温度を調節することを知らない子供も多いはずですよ。だって彼らにとってカランかシャワーを選べば適温がいつも出てくるんですから...

今、日本は、本当の変革期、人が4足歩行から2足歩行に変わったように、民族として後の授業で出てくるような変化を遂げている最中だという事を認識するべきだと思うのです。

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｢AKBは今日、死んだに等しいと思います。」

このひと言を言えるのは、僕でもなければ周りの人でもない、他の誰でもない、総合プロデューサーであり、京都造形芸術大学副学長の職にある、秋本康さん、あなたしかいないはずです。

もしあなたの学校で、女子学生主体のアイドルサークルがあったとしましょう。自分たちをアイドルに見立てて活動しているのです。ただあまりにも結束が固くて単なるサークルなんだけどアイドルっていう設定にこだわって恋愛禁止のルールを設けたりしたものだから、その辺りもウケる理由になって他校にもファンが増えていきました。でもある時そのメンバーがルールを破ってゼミの男の子とデートをしているのを誰かに見られ、結果その20歳になったばかりの女の子は無残にも自ら頭を刈った挙げ句、部長はYouTubeでサークルのサイトにその画像を載せてしましまったのです。

教職の立場から、あなたならこの仮定の事態をどう思われますか？

どう対処されますか？

一人の子をもつ親として、一日本国民として危惧してしまうのです。

今すぐリセットされてはいかがでしょう。

大阪市も全柔連も、日本中でリセットが始まっています。

正直な話、AKBの国内における影響力は、オリンピックやアマチュア・スポーツとは比較にならないほどの影響力がある事は事実なのですから。

逆にこんなのおかしいよ、もうこんなんじゃ応援できないよってファンが主導になったっていいと思うんですよね。そういう応援の仕方があったっていいはずです。いまこそ動かなきゃ。みんなが動けば、大人もきっと動かざるをえないはず。

大袈裟かもしれないし、極論過ぎるかもしれないけれど、あえて口にするならば、1日も早いAKB48の解散（再出発）と、責任者である秋本康さんの大人のケジメが、ファンや彼女たち、そして日本の若者たちに示される事を願っています。それこそがルールを守ることだし、結束だと、教える事ができる最高の機会ではないでしょうか。

あのね、エンターテインメントって言うのはね、楽しくなきゃ意味がないんですよ。マジで。嘘だと思うなら辞書を引いてみて下さい。

どの国の言語のものでも、必ずそう書いてあるはずです。

だって俺AKB別に嫌いじゃないし、好きな曲結構あるもん。

でもこれは楽しくなかった。本当に不快だった。

ひとりの女の子をそういう風にさせ、マスコミや社会がそれに対しておかしいと言わない風潮を、日本を、変えなきゃいけない時期なんじゃないですかね。

だから僕はもうAKBを見ないし聞かない。悪循環を経つにはそれしかないから。変わる、変えるって、もはやそういう事。