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人間ゲーム。
2011.07.01
父親にトラウマをもった友人がいる。いや本当のところわからないがしかし酒を飲むとたびたび同じ話をするのでそうだろう。ああ幼少期の体験てのは人の心やその人生にすら大きく影響する。彼の場合、自他共に認めるマザコンでもあるが果たして父が厳しい鞭だったとして母が優しい飴だったらば、そりゃまあ必然だわなと納得するものがある。ただ普通の家庭なんてのはどこの家庭にもないのだからとりわけ自分が酷かったとか、いつまでもそんな思いに囚われなさんなと願う。
思春期は親や家族のひとりやふたり恨む。なんでこんな家に生まれっちまったんだあ、とか、いっそ死んじまおうかあ、とか。例えば深夜玄関先で包丁持ってぐだるアル中の叔父を、哀れんで何も言わん親の代わりに胸ぐらひっ掴んで外へ引き摺り出し殴る「酷でぇことしやがるガキだ」と言う叔父に「どっちがじゃボケ」等々、日々ろくでもない大人に囲まれて過ごせば中学の僕でも悩む。大人とはそういうろくでもない生物なんだと思いいっそ死にたくなる。だが今となると他の酷たらしい話に比べれば何ということもない出来事で、当時の大人と今の自分の歳を考えればもはや同じくらい。いやそれ以下くらい自分もろくでもない生物に成り果てた気もするし。
先の友人は脱サラして教員免許を取りに復学している。僕が友人というくらいだから歳も三十代半ば越え。現役の体育会系大学生に交じり、単位を取って、ついに先日教育実習を終えてきた。トラウマ持った人間だって教師目指す。いやそれ以前に彼の背中には酷い入れ墨がある。入れ墨持った人間だって教師目指す。潔癖症だったガキの頃には考えも及ばない。つまり暴力ふるうような父親も、アル中の伯父も、入れ墨はいってたかもしれない担任教師も、皆ただの人間だ。
そういえば、その友人と、同じ教育実習生である現役大学生君と、三人で酒を飲んだ。その席で、自分は教師に向いてないかもしれない、という現役君。理由を尋ねると担当の女子高生のタメ口に腹が立つらしい。
「じゃあ、どんな仕事したいの?」
「芸能プロダクションとかすかね?」
「え、じゃあそこでマネージャーやらされてさ、例えばAKBとかの」
「いいすね」
「でも、おい、現役!アンパン買ってこいよ!とか言われてどう?」
「マジすか!そんなこといわれんすか!」
「あったりまえじゃん。てめ、マジ使えねえなとか」
「.........」
現役君、一度社会に出て人間ゲームしてきなさい。
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