おっぱいの話(後編)
2012.02.19
ああ......。
前編をアップしたとき、後編も75%ぐらいまではできていたのに。
なんだかんだでまたずいぶん時間が経ってしまった。
書き始めるまでの顛末を416文字で書いたけれど、ちょっと暑苦しいので消した。で、シンプルに次の一文で始めることにした。
さあ、おっぱいの話の続きをしよう。
スイートハニーに希望を問うときや、男子同士でゲスな感じで盛り上がっているときなどに、おっぱいは話題に上る。ただ、そういうシチュエーションは特殊だ。少なくとも「公衆の面前で堂々と」という感じではない。後者のゲスな盛り上がりに......というか、アレだ、エロ話に関しては、居酒屋とかで行われることはあるけれど、そして結果的に声がデカくなりすぎて「公衆の面前で堂々と」になる場合もあるけれど、そんなときには、もれなく良識ある人たちににらまれたり叱られたり「エロ話不愉快なう」とかツイートされたりする。
あえてざっくりいうならば、人前でおっぱいの話はするな、ということだ。
だが、修善寺のアニエスは、ホテルのダイニングというごくフツーのシチュエーションで、自身のおっぱいについて語った(結構カワイイくせに!)。これはいいのだろうか。
だって母乳でしょ? って言う人もいるかもしれない。
そのとおり、育児の話だ。だから、彼女のおっぱいはいやらしくない、ということになっている。その形状が赤ちゃんの吸引力によってどう変化したかを彼女が語っても、べつに誰も怒らない。
だが同じ場所で、おれが理想のおっぱいの形状に関して主張したならば、どうだろう。
同じおっぱいの話じゃないか、両者の間の差は何なのか。ヌード写真集を出した女優のアレか? ほら「アートなので、ぜひ女性の方にも見ていただきたいです」とかなんとかいうやつ。要するにワイセツ目的でなければ、フツーに語っていいということか。
たとえば新婚夫婦に親戚のオジサンが聞く「二世の誕生はいかがかな」みたいなこと。不妊などとも関わってくるので、厳密には何らかのハラスメントかもしれないが、オジサンにしてみれば、べつに深い意図もないお決まりの世間話だろう。
でも、何が起こったかだけを取り出してみると......
①若いカップルに
②オジサンが質問した。
③「セックスしてる?」
そういうことでしょう?
おれはなにも、「断固おっぱいとかセックスの話をするな!」と言っているのではない。同じことが行われているのに、それがアリになるときと、そうでないときの差に不思議さを感じているのだ。
で。
この間、ある女性誌さまに取材を受けた。
「女の理解できない男の本音」みたいなことについてエラソーに2時間もしゃべり、そのあと、ふと「おっぱい問題」について逆質問してみた。女子の側のキモチをざっくり知りたかったのだ。そしたらなんと、ずばり母乳の話になった。
その編集女史、子どもちゃんを保育園に預けに行って、「そういえば断乳済みました?」って尋ねられたらしい。
同じ保育園のお父さんに。園の前で顔を合わせて、「おはようございます」ってあいさつして、「じゃあまた」って去りかけたときに、ものすごくさりげなく「あ。そういえば」って。
おれの「おっぱいの話論」に真っ向からタタカイを挑む姿勢である。仮にもヨソの奥さんだぞ、母乳のことなど聞いちゃいかんだろ、とおれは思う。
編集女史が「わたしビックリして」というのを聞いて、おれはちょっとだけホッとした。「ホレ見ろ」と。
彼女は思ったらしい。
朝、聞くようなことか、と。いや、時間帯は関係ない。
子どもが同じ保育園に通っているというだけで、なぜ自分のおっぱいに関する案件を公表せねばならないのか、と。いや、関係性は関係ない。
天気とか景気の話みたいに、おっぱいに言及するというのはどうなのか。
「あ。そういえば」って、そりゃ猥褻なキモチがないのはわかるけど、とはいえ、おっぱいである。100%完全に混じりっけなく、単なる「子どもに栄養を与えるための器官」として語られるのも、逆に軽く失礼というか......。
もちろん「うひひひひ、奥さ〜ん、どうですかーおっぱいの方はぁ〜」とか聞かれたいわけではないけれど......。
キモチは千々に乱れたが、眉ひとつ動かさず「ええ、まあ」とか適当に答えたらしい。質問したお父さんが、それに対してどんなリアクションを取ったかは聞きそびれたのだが、まあ「あ、うちもですー」か「うちはまだなんですよー」かのどっちかでしょ? で、今度こそ「じゃあまた」って去っていくのだ。なんだそりゃ? なんで聞く必要がある?
結局のところ"派閥"の問題なのだろうか。修善寺のアニエスと保育園のお父さんは、おっぱいの話・していい派、おれと編集女史はあんまりすべきじゃない派。
ただよく考えてみたら、アニエスがおっぱいの話をしていたのは、あくまでもいとこ(と思しき妊婦)にであって、おれにではない。酒も入っていた。
......ということはつまり、さっき書いた「周りに聞こえてしまう男同士のエロ話」とおんなじパターンとはいえないか。
アニエスは、すぐ隣のテーブルの立派な中年紳士(おれのことだ)に聞かれて平気だと思ってしゃべっていたのではなく、つい声がでかくなってたまたま聞かれてしまった、と。
編集女史の「ヨソのお父さん断乳質問事件」に関しても、尋ねてきたのが「ヨソのお母さん」だったらどうだったろう。「こんなところでおっぱいの話、すべきじゃないでしょ!」とかは思わなかったんじゃないだろうか。
あらま、あっけなく派閥が解体してしまった。
いや、むしろ保育園のお父さんだけは新たに「堂々とおっぱいの話をすべき派」を立ち上げたように見える。"してもいい"という生ぬるいスタンスではなく、"積極的にしていこう"という派。
結局すごいのはこのお父さんなのかもしれない。このお父さん、ちょっとモテるんじゃないかという気がしてきた。天然なのか確信犯なのかは分からないが、母乳や育児を免罪符に、朝っぱらから堂々とヨソの奥さんにおっぱいの話を投げかけ、キモチを千々に乱れさせているのだから。
相手を不愉快にさせないだけなら、記憶にも記録にも残らない。でもこんなふうに爪跡を残せば、相手も自分のことを認知してくれる。
つまり、「おっぱいの話をした方がモテる」!
............って何の話なんだ。
あー、ダメだ、まだ全然完結しない。書き始めたときの完成度75%から全然進んでいないではないか!
なのでやむをえません。
"後編"とかいって、あたかも終わりそうな雰囲気を出しておきながら、おっぱいの話、今後もつづきます。
でも次回はとりあえず『おれ vs VISVIM』というお話。
できればわりと素早く書くつもりでは、あります。
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