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武田篤典ライター67年大阪生まれ・京都育ち・藤沢住まい。『R25』インタビューとか『スマートモテリーマン講座』とかを書いています。このブログは、かつて『ポパイ』『ハナコウエスト』誌に連載していたコラムのリメイク。街で見かけた赤の他人から勝手にいろいろ学んでいきます。

見知らぬあなた

武田篤典
ライター
67年大阪生まれ・京都育ち・藤沢住まい。『R25』インタビューとか『スマートモテリーマン講座』とかを書いています。このブログは、かつて『ポパイ』『ハナコウエスト』誌に連載していたコラムのリメイク。街で見かけた赤の他人から勝手にいろいろ学んでいきます。

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ねえ、魔法をかけて!

2013.08.31

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 ナタリーでマキタスポーツ「推定無罪」特集を観る。
 というか、1時間30分以上ある動画の、まだ14分ちょっとしか観ていない。

 マキタ氏は佐野元春のエピソードを語った。

 全体のテーマからしたら些細なエピソードだし、単に「アーティストは嘘をつく」ということの例として出てきたにすぎない。
 でも、おれは気分がちょっと良くなった。それで動画を止めて1年以上放置したブログを書こうと思った。

 マキタ氏によると、佐野元春はインタビューをチェックしたとき、スタッフにこんなセリフを言うことがあるらしい。



「ねえ、魔法をかけて!」



「いい感じに修正しておいて」というような意味ことばの佐野語訳のようだ。
つまりは、そのインタビュー原稿があんまりお気に召さなかったと。ちゃんとした形に直せと。

 まあ、そもそもインタビュー相手は原稿を直すものだ。
 事実関係や書き手の誤解を正し、より気分に近いニュアンスを加える。取材のときには思い浮かばなかった適切な比喩を入れたり、逆に関係各位に配慮して発言を削除したりする。事務所やレコード会社や宣伝会社の人がそれぞれの立場から直す。
 そのために「これでいいですか?」と、チェックしてもらってるわけですからね
 
 でも、たまに直さない場合がある。
 取材相手が「直さない」というポリシーの持ち主である場合。あとは、そのまま問題なくいける場合。

 おれは勝手に、佐野元春という人は前者だと思っていた。
「僕は僕の発言に責任を持つ。キミはキミの原稿に責任を持て」みたいな。
「ジャーナリストだったら、自分で考えてくれ」みたいな。

 でもそうじゃなかった。べつに普通に直す人だった(らしいということが、この動画でわかった)。
 6年前、おれは佐野元春にインタビューした。 彼は、おれの原稿には「魔法をかけ」なかったのだ。
 
 気分が良くなったのは、だからだ。
 

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