Vol.01 NED DOHENY / Hard Candy
初めまして、弓削匠です。
基本的に僕はファッションデザイナーとして生計を立ててるわけですが、ここ10年ほどレコード、CDのジャケットデザイン、ミュージックビデオの監督などアートディレクター業も並行していて、頭の中の映像を元に我儘にクリエイションさせてもらっております。昨年は「ADULT ORIENTED RECORDS」というレコードブティック兼レーベルを立ち上げ、さらに我儘具合が進行しているんですが……。
僕にとって音楽という文化は特別な存在です。中でもレコードジャケットは、そのアーティストの音を視覚で表現する重要なツールだと思っています。
レコードやCDを買うときのファーストコンタクトがジャケットになりますからね。ジャケットデザインと音がリンクしていると気持ちいいですよね
そんな僕が、ジャケットデザインというものに初めて意識が向いたレコードを、記念すべき連載第1回目に紹介したいと思います。

NED DOHENY2枚目のソロアルバム「Hard Candy」。
これはもう、言わずと知れたAORの大名盤! 中学生の時にレコード屋でこのジャケットを見て、なんて爽やかで綺麗な写真なんだろう、ここに行ってみたいなぁという思いに駆られたことを、今でも鮮明に覚えています。
NEDの代表作である本作、ジャケットの写真を撮っているのが ストロビスト、Moshe Brakha(NEDのこの作品のみBrahkaと誤表記されています)。1970年代中頃から1980年代全般にかけて、おもに「CBS」「COLUMBIA」系アーティストのジャケットを多く撮影しています。
Mosheの写真はコントラストが強く、ドラマティックでいて絵のようでもあり、当時はどうやったらこんな写真が撮れるんだろうと思っていました。大人になってから友達のフォトグラファーに聞いたところ「これは日中シンクロだね!」と初めてこの技法のことを教えてもらい、虜になりました。
Mosheが撮るジャケ写のほとんどが、この日中シンクロという、昼間に強烈なストロボをたいて撮影する技法が用いられています。どれもこれもがドラマティックで物語性のある写真ばかり。
同じ1976年にリリースされたBOZ SCAGGSの「SILK DEGREES」も有名ですね。バックを支えるミュージシャンたちも強力で、サックスはTom Scott、 Tower Of Powerのホーン隊、駆け出しのDavid Fosterなど、鉄壁の布陣で固められてます。
僕は兎にも角にも、このMoshe Brakhaというフォトグラファーが大好きで、音に関わらず「このジャケ、Mosheっぽいな」と思ったら迷わず購入します。なので、割と多くMosheコレクションがあるので、これからも機会があれば紹介していきたいと思います。これもMosheなんだ!という作品も結構ありますよ。
それではこれからも、どうぞお付き合いくださいませ。
PROFILE

1974年、東京都生まれ。1996年、桑沢デザイン研究所を中退後、劇団や芸能人のために衣装を手掛ける傍ら、シャツのオーダーメードブランドを立ち上げる。2000AWよりファッションブランド〈ユージュ(Yuge)〉をスタート。土岐麻子のアルバム『乱反射ガール』や一十三十一のアルバム『CITY DIVE』のアートディレクションを手がけるなど、アートディレクターとしての一面も持つ。2018年6月、代々木上原に〈アダルト オリエンテッド レコーズ〉をオープンし、“現代のAOR”を発信中。