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ティム・バーバー"僕は僕にしかできないことをやっている" 聞き手:菅付雅信

2012.12.13

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NYを拠点に活動するフォトグラファー、ティム・バーバー。先月、彼の最新フォトブックが発売され話題を集めたが、それが日本のファッションブランド〈ワコマリア〉とのタッグによって実現した1冊であっただけに、その驚きは様々なフィールドにまで及んだ。フォトグラファー、エディター、キュレーター。アーティストとして複数の顔を持つティムの実像に、編集者・菅付雅信が迫った。

Photo_Shota Matsumoto
Interview & text_Masanobu Sugatsuke
Edit_Yohei Kawada

ティム・バーバー Tim Barber
1979年生まれ。マサチューセッツ州出身。NYを拠点に活動する写真家でありながら、ライアン・マッギンレーやピーター・サザーランドらも作品を寄稿するオンラインギャラリー「tinyvices」を主宰する。また、2005年までアート・マガジン『VICE Magazine』のフォトエディターも務めた。写真集『High School』(07')、『Untitled Photographs』(10')など。

菅付雅信 Masanobu Sugatsuke
1964年生まれ。編集者(菅付事務所)。著書に『東京の編集』『編集天国』『はじめての編集』。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』『リバティーンズ』といった雑誌の編集長を歴任した後、現在は『メトロミニッツ』のクリエイティブ・ディレクターを務める。2012年より、朝日出版社とともに『アイデアインク』をスタート。マーク・ボスウィック、ジェフ・バートン、森山大道、篠山紀信等の写真集の編集も手がける。

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「雑誌のために写真を編集するのは、僕にとって常に興味の湧くもの」。

-私の英語は上手いと言えたものではないですが、そろそろこの英語にも慣れてきてしまっていて...。

ティム・バーバー(以下、ティム): ハハハ、大丈夫。僕の日本語よりはずっと上手いから(笑)。

-ありがとう(笑)。 まず最初に、どのようにして〈ワコマリア〉とのプロジェクトが実現したのか教えてもらえますか。

ティム: 以前、僕が手掛けた2冊の写真集を見て、〈ワコマリア〉が僕とコラボレーションをしたいって連絡をくれたんだ。ブランドのカタログのようなものを作りたいんだけど、よりアーティスティックなアプローチでそれを表現したい。じっくり時間を掛けて、僕のアーティストの友人をモデルとして起用したいってね。

-じゃあ、今回の写真集に登場するNYの若者たちは、皆あなた自身で見つけてきたというわけですね。

ティム: あぁ、そうだね。僕と、僕の友人でプロデューサーのうちの1人(ケン・イケダ)が協力してくれたんだ。ケンのことは知ってる?

-いいえ、知りません。

ティム: 彼は今回のプロジェクトを手伝ってくれたんだ。ジュン(スキマプロジェクトの平澤淳一氏)も色々と助けてくれた。スゴい複雑な企画だったんだけど、本当に大勢の人が協力してくれて実現できたんだ。

-想像できます。

ティム: 人はもちろん、時間もすごく掛かったね。毎日作業してたわけじゃないとはいえ、制作期間は大体2ヶ月ぐらいだったかな。

-それは大変でしたね。ところで、写真集のタイトル『OVER, UNDER, AROUND & THROUGH』には、何か意味があるのでしょうか? 僕はこのタイトルを見て、てっきり「セサミストリート」から引用したんじゃないかと思ったのですが。

ティム: (笑)。面白いね。でも実際はそうじゃない。じつは僕もグーグルで検索したんだけど、「セサミストリート」に関連したものが出てきて...。このタイトルは単純に、自分の頭に浮かんできたものなんだ。写真と関連していてひとつの物事を、いろいろな場所や視点から眺めるって意味合いでね。

-なるほど。あなたは『VICE Magazine』のフォトエディターを務めていたわけですが、どうやってそのポジションに就き、どうやってエディターになったのか。その辺の経緯を教えて欲しいのですが。

ティム: 『VICE Magazine』では、まだ僕が学生の時に働き始めたんだ。僕はカナダのバンクーバーにある学校に通っていたんだけど、夏休みの期間中、学習プログラムに参加するためにNYに住んでいる姉を訪ねたんだ。ちょうどその時、写真家のライアン・マッギンレーに出会って、彼と友達になった。彼はその頃、『VICE Magazine』のフォトエディターを務めていて、それで彼の紹介を受けて、そこで寄稿するようになったのが始まりだね。その後、ちょうど僕が学校を卒業する頃にライアンが『VICE Magazine』を辞めた。その代わりに、僕がそのポジションに就いたというわけさ。

-では、フォトエディターになる前から写真に興味があったのですね。

ティム: ああ、もちろん。学生の頃からずっと写真を勉強していたし、自分自身でもフォトグラファーとして撮影を続けていた。雑誌のために写真を編集したり、展覧会のためにキュレーションしたりっていうのは、僕にとって常に興味の湧くものだからね。

-あなたは当時、ライアンのアシスタントという立場だったのでしょうか? 彼から学んだものは何でしょう?

ティム: なんだろう。でも、彼のアシスタントをしていると思ったことは一度もなかったよ。写真についてまだ勉強していた頃だったから、技術面に関して言えばあまり役に立たなかったしね。もっとシンプルに、友達としての付き合いだった。一緒に撮影をしながら、僕ができる限りのことは彼に協力した。なぜならライアンは、仕事に対して真剣に打ち込んで、そこにものすごく情熱を注いでいたから。彼は限界まで自分を追い込んで、プロジェクトに取り組むんだ。僕が彼に協力していたとすれば、そこかな。それから、彼は僕にたくさんのフォトグラファーを紹介してくれた。彼は写真やアート界で、大きな影響力を持っている人だったから。

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