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定番に宿る哲学。パラブーツのミカエルが、多くのひとに愛される理由。
The Philosophy of Making Shoes

定番に宿る哲学。パラブーツのミカエルが、多くのひとに愛される理由。

ヒップなひとを見かけると、ついつい足元をチェックしてしまいます。“お洒落は足元から”なんて気の利いた文句がありますが、それが語り継がれるのは、ある種の真実と哲学がそこに含まれるからです。今年で誕生80周年を迎えた〈パラブーツ〉の「ミカエル」も、多くのひとの足元を彩り、ファッションの定番としての地位を確立しました。そもそもこの靴は、チロリアンシューズがルーツ。出自は決して都会的ではないのに、どうして街に合うのか。やっぱりなにか理由がありそうです。フランスから来日を果たしたCEOのエリックさんにその秘密を聞いてみると、知ることのなかったさまざまなアイデアが隠されていました。

PROFILE

エリック・フォレスティエ
フランス・リヨン出身。スキー用品やテキスタイル業界にて、いくつかのブランドの運営に関わったのち、2019年に〈パラブーツ〉を展開する「リシャール・ポンヴェール」のCEOに就任。ブランドのレガシーを大切に守ることを日々意識しつつ、現代的な視点も加えながら舵取りを行なっている。

時間を超えて受け継がれる感情的なつながり。

ー「ミカエル」が誕生から80周年を迎えました。長いあいだ多くのひとたちに愛される理由はどんなところにありますか?

Eric: 「ミカエル」はもともと屋外で働く人たちのためにつくられた靴です。その魅力のひとつは、長く履けるということ。それはひとえに、革の質と製法のたしかさによるものです。スニーカーは短い期間で寿命を迎えてしまうのに対し、「ミカエル」は10年、20年、30年と履き続けられる。物理的な意味においても、ときを超えて存在し続ける靴なんです。

ーそれは品質のみならず、デザインにも言えるような気がします。

Eric: そうですね。「ミカエル」は非常にシンプルで、すぐにそれと分かる特徴を持っています。言い換えるならば、“デザインの魔法”があるということ。それがトレンドを超えて存在し続けられる理由であると考えます。たとえるなら、〈ポルシェ〉の「911」のようなものですね。「911」をひと目見れば、それが〈ポルシェ〉だとわかる。いつの時代でも基本のラインは変わりません。そのフォルムがずっと受け継がれている。「ミカエル」も同じで、純粋かつ変わらない美しさを持っているんです。そしてそれは、どんなスタイルにも合う靴であるとも言えます。

ー日本でも、いろんなシーンで履いているひとを見かけます。

Eric: スーツに合わせたり、ショーツに合わせるひともいるし、ジョギングパンツなどのスポーティなスタイルにもフィットしますよね。それが本当にすごいところです。どんな服装に合わせても自然に馴染んで、抜群のフィット感を生み出してくれます。フランスでは職業の垣根も越え、学生、医師、弁護士、ジャーナリスト、農家、ワイン生産者など、本当にさまざまな人々が履いています。社会のあらゆる階層をつなぐ靴でもあるんです。

Eric: シンプルであること、本物であること、そして修理して使い続けられて丈夫で長持ちすること。こうした価値観が世界中で求められています。そして「ミカエル」はそのすべてを体現している。それがいまも多くのひとに愛され続ける理由だと考えています。そういえば、フランスにはユニークな伝統があるんですよ。それも「ミカエル」の人気に関係しているんです。

ーどんな伝統ですか?

Eric: 子どもが18歳を迎えたときに上質な靴を贈る習慣があって、“最初の一足”として「ミカエル」が選ばれることが多いんです。そして長いあいだ履けるということは、靴とのあいだに“絆”が生まれるということでもある。靴は私たちと共に人生という名の道を歩む。そうしたストーリーは世代を越えて受け継がれ、「おじいちゃんがこの靴を履いていた」というエピソードもたくさんのひとが共有しています。

ーそうやって親から子へ、子から孫へと受け継がれていくわけですね。

Eric: 実際に半年前、私たちのもとに50年ものの靴が持ち込まれました。それは、亡くなったおじいさんの靴をお孫さんが持ってきたものだったんです。彼はその靴を修理して、自分で履きたいと言っていました。そのように「ミカエル」には時間を超えて受け継がれる感情的なつながりがある。長く履けるからこそ、思い出や愛着が積み重なっていくのです。

こうして「ミカエル」は特別な一足へと成長を遂げました。80年という長い歴史を重ねてきたことで、いまや靴の世界におけるアイコンになったということ。靴に少しでも関心があるひとであれば、「ミカエル」を一足は持っておきたいと思うようになっている。ワードローブに欠かせない定番としての地位を確立したのです。

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