金子さんの狂気性を引き出したい。
ー今回はおふたりのイレギュラー品に対する愛情のこもった眼差しから企画がスタートしたわけですが、そもそも普通のものじゃ物足りなくなっている感覚もあるんですか?
Kaneko: 物足りないかどうかでいえば、全然足りているんです。だけどイレギュラー品があることによって普通のアイテムが活きてくるし、それを着る目線で考えると、ファッションがグンと楽しくなる感覚があって。ちょっと違った文脈でのはずしになるから、わかるひとにはわかる感じも、なんだか新鮮なんです。
Genma: そういうアイテムを毎シーズン買い足していきたい。そんな気持ちで〈ERRA〉をはじめたところもあって。だから3年後も当たり前に着られる服づくりをしたいんです。
Kaneko: 根底にあるのはその気持ちですよね。ワードローブに追加したいんです。
ー金子さんは近年〈ファウンダ〉など、“はずし”をキーワードとした服づくりをされていますが、その経験がここでも活かされていたりするんですか?
Kaneko: 〈ファウンダ〉と〈ERRA〉はまったく別の考え方ですね。引き出しがまったく違っていて、今回の場合はぼくの中で眠っていたアイデアを源馬くんが上手に引き出してくれたんですよ。それはぼくにとって結構不思議な感覚でもあったんですけど。
源馬くんでないと話せないアイデアもあったりして、「きっと理解してくれる」という安心感があったから、ぼくもオープンにできたというか。そういう意味では化学反応というか、それを今回強く感じましたね。
Genma: 金子さんって、いま話しているみたいに淡々と思っていることを伝えてくれるんですけど、普通に狂気じみたアイデアを言ってくることがあって。普通に話してるけど、それ、だいぶやばいっすよっていう(笑)。そういう金子さんの狂気性を引き出したいっていうのが、ぼくの中にあったんですよ。
Kaneko: 「引き出されたい」っていうのはぼくの中にもありましたね(笑)。
ー源馬さんのこれまでのお仕事を見ていると、そうした狂気性を引き出すのに長けているひとなのかなと。
Genma: ぼくはアダプターみたいなもんなんです。狂気を持ったひとと、世の中を仲介するためのアダプター。狂気をそのまま狂気として伝えるのではなくて、きちんと世に理解される形に変換する必要があるのかなと。どう考えても金子さんのアイデアって普通じゃないし、おもしろいからそれを世に提案したいって思うわけですよ。だから、どうやってアジャストすれば届きやすくなるのかなって。もちろんビジネスとしてもきちんと成立させないといけないし。毎回必死なんです(笑)。
Kaneko: たしかに、源馬くんと話をしていると、いつもそこを気にしてますよね。
Genma: ベースとなるアイデアを生み出すのが、やっぱりいちばん難しい。金子さんは一見するとベーシックなコードを鳴らしているんだけど、聴こえてくる音はめちゃくちゃ狂気なサウンドになっていて。そこに強烈な個性を感じるんです。
Kaneko: いつもはぼくひとりがプロジェクトの決定権を持つことが多いけど、〈ERRA〉に関しては源馬くんとフィフティーフィフティーで進行していて。ふたりのアイデアが上手に混ざり合っているんです。だから、ぼくひとりでは絶対にできない服が今回できあがったんですよ。
冒頭で話していたようにお互いファッション感が違えば、通ってきたカルチャーも違うんだけど、重なり合う価値観はあって、そうしたお互いのズレと共通点が心地よい形でプロダクトに落とし込めたのかなと思います。もちろん他にもスタッフがいて、チームがいたからこその着地点でもあるんですけど。最終的にすごく気持ちのいいところに収まって、そういう共同制作の楽しさを今回めちゃくちゃ味わうことができましたね。
ー今後の展開も気になります。
Genma: 金子さんが持っている別注の引き出しも、惜しみなく使っていこうかなと。そこは楽しみですね。
Kaneko: 源馬くんの巻き込み力を利用して、ゲストデザイナーを迎えても楽しそうだし。
Genma: でも根本は変わらずに。誰かのワードローブに食い込むような服をどんどんつくっていきたいですね。
Kaneko: それをコンスタントに続けていくっていう。それだけですね。