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【FOCUS IT.】シルバーに宿る、旅と記憶。サラフィンチリーがつくる普遍のアクセサリー。

〈サラフィンチリー(Sara Finchley)〉のアクセサリーには、イギリスの教会や骨董市で出会った古いものの記憶、そして試行錯誤を繰り返しながら形にしていく彼女のものづくりが息づいています。ミサンガから始まり、いまやブランドのシグネチャーとなったシルバーアクセサリーは、どのように生まれるのか。4月28日(火)から「レショップ青山店」で開催されるオーダー会を前に、バイヤーの中村さんとともに、そのルーツを辿りました。

  • Photo_Kae Minami
  • Edit&Text_Shun Koda
  • PROFILE

    サラ・フィンチリー

    〈ヨウジヤマモト〉のアクセサリーデザインを担当していた経歴を持つデザイナーが2023年にスタートしたブランド。”服以外のもの”をコンセプトに、ジュエリーを始め、バッグや帽子、テキスタイル彫刻家とのコラボレーションなど、その活動は多岐に渡る。

    PROFILE

    中村英生

    2008年にベイクルーズへ入社し、当初は〈ジャーナルスタンダード〉でキャリアをスタート。現在は「レショップ」のバイヤーとして手腕を振るう。普遍的な服、偏った服、ルーツを持つ服、属性のない服が持つその奥深さを知り、選ぶ愉しさを共有できる洋服を探し続けている


    “面白ければ勝ち”で培った、トライ&エラーのモノづくり。

    long vowel mark (usually only used in katakana)元々〈ヨウジヤマモト〉で働かれていたと伺いました。ご経歴は?

    サラ:実は、〈ヨウジヤマモト〉に入る前に、別のアパレル会社に入社しているんです。そこは1年ほどで辞めたんですが、その後、門を叩いたら、「じゃあ明日から来て」と言われて。そこから辞めるまで、17年間の慌ただしい日々が始まりました。

    long vowel mark (usually only used in katakana)当時は、ずっとデザインの仕事に携わっていたんですか?

    サラ:そうですね。テキスタイル科出身だったので、もともと服をやりたくて入ったんですけど、「あなたはアクセサリー」と言われて。それ以来、ずっとアクセサリーを担当していました。 とはいえ、それまでは洋服づくりしかやってこなかったので、アクセサリーはまったくの未経験。入社した次の日に、上司たちから「面白そうだからやってみなよ」と言われて、チャンスをもらったんです。

    Nakamura:いい時代ですね。今だと、どうしても経歴や実績を気にしてしまいますから。

    long vowel mark (usually only used in katakana)一見すると近い分野に思えますけど、服とアクセサリーって全然違いますよね。最初に苦戦した部分はありましたか?

    サラ:うーん……でも、すごく楽しかったんですよね。やったことのないことばかりだったので、もちろん失敗もたくさんありました。でも、その失敗も含めて楽しかった。本当にいろいろなことを経験できる部署だったので、毎回新鮮な気持ちで取り組めましたね。

    苦戦したというよりは、17年間が本当にあっという間で。「ひとつのことを極められたのかな」と疑問に思うこともあるんですけど、広く浅くではあっても、いろんな知識や経験は身についたと思っています。経験なんてほとんどなかったのに、「面白ければ勝ち」みたいな空気があって。だから、自分で勝手に何かをつくっては、「こんなのつくってみました」と見せに行っていました。

    long vowel mark (usually only used in katakana)会社に所属しながらも、独立したデザイナーのような立場だったんですね。そうした知識は、どうやって身につけていったんですか?

    サラ:もう、ひたすらトライ&エラーです。自分で工場に行って、職人さんに教えてもらって、その繰り返しでした。初めてバッグをつくったときなんて、“型”というものがあることすら知らなかったんです。もちろん、型代がかかることも知らなくて。あとになって会社にかなり高額な請求が届いて、めちゃくちゃ怒られました(笑)。

    Nakamura:想像しただけで冷や汗が出ますね(笑)。

    サラ:最初は本当に、そんな失敗の連続でした。でも、そうやって一つひとつ、徐々に学んでいった感じですね。

    long vowel mark (usually only used in katakana)そうして1年目につくったものが、すぐ商品として発売されていく。そのプレッシャーは感じませんでしたか?

    サラ:プレッシャーよりも、喜びのほうが大きかったですね。

    Nakamura:最初につくったのは、どんなアイテムだったんですか?

    サラ:今の私からは想像がつかないと思うんですけど……ドクロのブローチでした(笑)。

    Nakamura:今のサラさんのイメージからすると、たしかに意外ですね。

    サラ:そうですよね(笑)。でも、意外と評判がよくて、皆さん手に取ってくださって。すごくうれしかったです。そこからはアクセサリーに限らず、シューズや帽子なんかもつくらせてもらうようになりました。

    long vowel mark (usually only used in katakana)中村さんが〈サラフィンチリー〉を知ったきっかけは何だったんですか?

    Nakamura:サラさんとの共通の知人がいるんですが、ある日その人がすごくかっこいいミサンガのブレスレットを着けていて。「それ、どこのですか?」と聞いたら、サラさんがつくっているものだと教えてくれたんです。それで紹介してもらったのが最初でした。

    そのときは、〈ヨウジヤマモト〉にいたことも、長くデザインをされていたことも、まったく知らなくて。ただ純粋に「この人のつくるもの、すごくいいな」と思ったんです。

    long vowel mark (usually only used in katakana)いまではシルバーアクセサリーがブランドのシグネチャーになっていますが、以前からシルバーアクセサリーはよくつくっていたんですか?

    サラ:それが、数えるほどしかつくったことがなかったんです。だからこそ、今でも毎回新鮮な気持ちで取り組めています。

    Nakamura:「レショップ」で最初に取り扱わせてもらった頃は、ミサンガだけで、たしか3型くらいでしたよね。そこから、「もっと細いナロータイプも欲しい」とか、「石付きのリングをつくってください」とか、かなり無茶なお願いをしていました(笑)。

    サラ:そう、その無茶振りのおかげで、少しずつラインナップが広がっていきました(笑)。

    ブランドのシグネチャーともいえるシルバーミサンガ。タイ北部やミャンマーとの国境付近に暮らす山岳民族のシルバービーズを用いてつくられている。

    インスピレーションの泉となる旅と記憶、そして愛すべきガラクタたち。

    旅の記録でもあり、インスピレーション源となるアイテム群。シルバー製の靴べらをはじめ、陶器のマッチ箱やアクリル製のキーホルダーなど、どれもデザインだけでなく素材感も面白い。

    long vowel mark (usually only used in katakana)花だったり、そういったモチーフもよく扱われている印象があります。どんなものからインスピレーションを受けて、モノづくりに反映しているんですか?

    サラ:年に1〜2回は旅に出るんですが、よく行くのはイギリスとパリですね。教会だったり、古い建物からインスピレーションを受けることが多いです。

    Nakamura:バロック調のインテリアだったり、そういうものですか?

    サラ:そうですね。どこの国のものかも、何に使われていたのかもよくわからないようなものに惹かれるんです。旅先ではよく骨董市に行きますね。キーホルダーだったり、古いマッチ箱だったり……。収集癖があるんですよ(笑)。

    サラさんの祖母が趣味でつくっていた指輪。一部はサラさん自身がつくったものも含まれるが、どれもルーツを感じるデザインのものばかり。

    Nakamura:旅先で出会ったものや、そのときの記憶がヒントになるんですね。このリングも、何か古いものなんですか?

    サラ:これは祖母のものなんです。祖母が趣味で彫金をやっていて。

    Nakamura:そうだったんですね。まさか、そんなところにルーツがあったとは。

    サラ:それと幼少期に4年ほどロンドンに住んでいたことがあって。その頃に訪れた、ライという街があるんですけど、そこが〈サラフィンチリー〉のブランドイメージにすごく近いんですよね。

    Nakamura:古い街並みがそのまま残っている、とても素敵な場所ですよね。

    サラ:本当にきれいな街なんです。アンティークもたくさんあって、行くたびに発見がある。『魔女の宅急便』に出てきそうな、古き良きイギリスを感じる街ですね。

    long vowel mark (usually only used in katakana)ものづくりの過程としては、そうしたものをヒントにしながら、スケッチを描いていくんですか?

    サラ:そうですね。でも最初は、びっくりするくらい下手ですよ。本当に落書きみたいなところから始まって、少しずつイメージを膨らませていくうちに、実際の製品に近い形になっていきます。

    アイデアが描かれたラフスケッチ。すべてのアイテムはここからモノづくりがスタートする。

    Nakamura:どうやって形になっていくのか、ずっと気になっていたので、すごく興味深いです。

    サラ:でも、実際に立体にしてみると、イメージと違うことも多くて。そこからまた微調整していきます。小さな立体物だから、細かすぎるディテールは再現できないこともあるので。

    Nakamura:このノートは、構想ノートみたいなものなんですか?

    サラ:そうですね。アイデアを書き留めていて。たとえば、いつか靴べらをつくってみたいな、とか。

    Nakamura:それは面白いですね。日々、アイデアを溜めているんですか?

    サラ:思いついたら描いたり、写真を撮っておいたりします。忘れてしまうことも多いんですけど、忘れてしまったなら、それまでだったんだろうなって思うようにしています。

    ホームページの構想も、このノートに書いていて。文字を全部手書きにしたいと思って、何度も書き直したりしていました。

    Nakamura:デジタルだけど、ちゃんと温もりがありますね。

    サラ:そこは、大切にしたいなと思っています。

    Nakamura:アイデアは、一気につくり上げるタイプですか?

    サラ:まずは描いてみて、良さそうなら数日後にまた見返して、さらに膨らませることが多いですね。

    試行錯誤の跡が、そのまま刻まれたデザイン画。

    Nakamura:サラさんでも、煮詰まることはあるんですか?

    サラ:もちろん、いっぱいあります。お蔵入りしたものも、たくさんありますよ。以前、スカーフリングをつくりたいと思ったことがあったんです。でも、落ちやすいスカーフに高価なシルバーをつけるのって、どうなんだろうって。重さもあるから、外れやすかったり、使う人のストレスになるかもしれないなと思って。それで、スカーフリングとして考えていたデザインを、指輪に変えたことはありました。

    Nakamura:まずは、とりあえずつくってみるんですか?

    サラ:もちろん、自分の中で振るいにはかけます。でも、いいと思ったものは、一度つくってみますね。スカーフリングも、試作まではしたんですけど、結局お蔵入りになりました。

    Nakamura:陶芸家さんが、納得できない器を割るような感覚に近いのかもしれないですね。

    long vowel mark (usually only used in katakana)実際にどういう工程でつくっていくんですか?

    サラ:ワックス原型と3Dプリンターを使う2種類の方法でつくることが多いです。ワックス原型というつくり方は、蝋をリューターやハンダゴテのようなもので削っていって、原型をつくるんです。それを石膏型にして、そこへシルバーを流し込む。そこからまた、できあがったサンプルを見ながら微調整を重ねていきます。

    上のグレーのコンチョとフックは、3Dプリンターで出力した試作サンプル。ここから実際にシルバーへ置き換え、何度も微調整を重ねながら完成形へと近づけていく。下に並ぶシルバーのコンチョは、左から順に製品化までの過程を追ったサンプル。よく見ると、立体感やエッジの深さ、細部の彫り込みが少しずつ異なっている。

    Nakamura:ひとつつくるのに、どのくらい時間がかかるんですか?

    サラ:ものによりますが、4か月以上はかかります。長いものだと、1年以上かかることもありますね。

    Nakamura:やっぱりそのぐらいの長い期間かかるもんなんですね。

    サラ:もう一つがまずイラストを描いて、そこから3面図を起こして、3Dデータにしていきます。それを3Dプリンターで何度も樹脂に出力して、形を調整しながら、最終的に金属に置き換えていくんです。

    long vowel mark (usually only used in katakana)見た目はすごくクラシックなのに、つくり方はすごく現代的なんですね。

    サラ:そうですね。何度もやり直して、失敗して。最終的に、もう少し丸みを出したほうがいいな、とか。そういうことをずっと繰り返しています。

    いずれアンティークになりうるホイッスルとリング。

    long vowel mark (usually only used in katakana)今回の受注会ではどんな新作が並びますか?

    サラ:新しくつくったのは、リングとホイッスルです。リングは、もともとコンチョとしてつくっていたモチーフから派生したものなんです。セント・ポール大聖堂に、グリンリング・ギボンズという彫刻家が手がけた装飾があって。それを見たときに、「私もこんな立体的なものをつくりたい」と思ったんです。そこからコンチョが生まれました。

    今回のオーダーイベントに並ぶ、彫刻からインスピレーションを得た“Gibbons(ギボンズ)”シリーズのリング。細部まで彫り込まれた造形からは、試作と修正を何度も重ねた末にたどり着いた完成度の高さが伝わってくる。

    サラ:私自身、すごく気に入っているシリーズで。このモチーフでいつかリングをつくりたいと思っていて、最初はまったく違う形だったんですが、紆余曲折を経て、最終的にこの形になりました。

    Nakamura:かなり精巧ですよね。立体感もあって、本当にかっこいい。

    long vowel mark (usually only used in katakana)ホイッスルは、どういうところから生まれたんですか?

    サラ:昔の嗜好品に惹かれていて、ホイッスルはいつかつくりたいと思っていました。極論ですけど、シルバーって、なくても困らないものじゃないですか。服は生活に必要なものだけど、アクセサリーはそうじゃない。だからこそ、シルバーをつくることに責任の重さを感じているんです。何年も残っていくものですし。

    だから、自分が本当に納得できるまでは、つくってはいけないと思っていて。ある意味、振り切らなければいけない。誰に受けるかわからなくても、自分がいいと思えるものをつくろう、と思って挑んだアイテムですね。

    今回のオーダーイベントでの新作シリーズ“Pendere(ペンデレ)”は、ホイッスルをモチーフにした秀逸作。見事なクオリティで、右のものは実際に音がなるのだとか。

    Nakamura:現代でホイッスルをつくるブランドって、なかなかないですよね。

    サラ:つくるまでにかなり費用もかかってしまって、どうしても高価なものにはなってしまったんですけど、自分としては「これはつくれてよかった」と思っています。

    Nakamura:きっと、ゆくゆくはアンティークになっていくような作品ですよね。

    long vowel mark (usually only used in katakana)中村さんから見た、〈サラフィンチリー〉の魅力はどこにありますか?

    Nakamura:一つひとつのデザインに、意味や意義が込められているところですね。それが〈レショップ〉の考え方とも通じるなと思っていて。

    さっきのスカーフリングの話もそうですけど、作家的な視点だけで終わらず、ちゃんと使う人のことを考えている。そこが、お客さんから支持されている理由なんだと思います。

    long vowel mark (usually only used in katakana)まさに、“用の美”ですよね。

    Nakamura:はい。個人的には、新鮮なデザインなのに、どこか懐かしさがあるところにも惹かれます。先ほどのインスピレーションのお話を聞いて、どこか英国的なエッセンスを感じる理由もわかりました。

    サラ:そう言ってもらえるとうれしいです。私は、土臭さと近代的なもの、その両方が大事だと思っていて。あとは、誰が着けても似合うデザインにしたい、というのは意識しています。

    Nakamura:繊細なのに、かっこいい。それが、スタッフみんなが身につけている理由なのかなと思います。シンプルな服に合わせればアクセントになるし、デコラティブな服に合わせても馴染んでくれる。トップメゾンで経験を積まれてきた方だからこそ、僕らが見たことのない視点を見せてくれますし。まだ〈サラフィンチリー〉に触れたことのない方にも、ぜひ今回のイベントで手に取って、実際に見ていただきたいですね。

    INFORMATION

    Sara Finchley Order Event

    期間:4月25日(土)〜5月6日(水)
    Location: Reshop Aoyama
    住所:東京都港区南青山3
    Phone: 03-5413-4714
    Hours: 11:00 - 20:00
    Instagram@sarafinchley_official
    Instagram@lechoppe.com

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