『ブルー・バレンタイン』で恋愛における天国と地獄を描き、つづく『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』で『ゴッド・ファーザー』シリーズのような親子2代に渡る、悲運と再生というドラマを生み出し、映画好きを唸らせてきたデレク・シアンフランス監督。
ライアン・ゴズリング、ミシェル・ウィリアムズ、ブラッドリー・クーパーという卓越した俳優たちと相思相愛の関係を築いてきた監督が白羽の矢を立てたのが、マイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルというアカデミーノミネート俳優のふたり。しかも二人は実の夫婦でもあります。
~STORY~.
孤島に暮らす灯台守の夫婦。
他に誰もいらない。そう願うほど幸福だった。その<罪>に気づくまでは。
戦争の傷跡で心を閉ざし孤独だけを求め、オーストラリアの孤島で灯台守となったトム。しかし、美しく快活なイザベルが彼に再び生きる力を与えてくれた。彼らは結ばれ、孤島で幸福に暮らすが、度重なる流産はイザベルの心を傷つける。ある日、島にボートが流れ着く。乗っていたのは見知らぬ男の死体と泣き叫ぶ女の子の赤ん坊。赤ん坊を娘として育てたいと願うイザベル。それが過ちと知りつつ願いを受け入れるトム。4年後、愛らしく育った娘と幸せの絶頂にいた二人は、偶然にも娘の生みの母親ハナと出会ってしまう──。
観客の心を幸せで満たすような絶頂期と、痛々しい辛苦を両方描くという『ブルー・バレンタイン』にも似た構造をもちながら、倫理や正しさというものを問いかけるようになっています、しかもすごく自然に。
彼らがそれぞれの状況のなかで取る選択を見るうちに、自分がこの立場に置かれたら、はたしてどんな行動をとるのか、どの登場人物に感情移入するのか。そんなことをつい考えてしまう映画です。
おそらく誰も間違っているわけではない。だからこそ、彼らの行動に対して自分はどう感じるのか、どうしてそう思うのか。映画館をあとにした後にも、そんな答えのない問いについて考えることになるでしょう。それは映画がもつ日常への“幸せな侵食”といえるのではないでしょうか。鑑賞後にも尾をひくこの作品を、俳優の見事な演技とともにぜひ堪能してください。
Text_Shinri Kobayashi
『光をくれた人』
5月26日(金)TOHOシネマズ シャンテ 他にて公開
Distributor: Phantom Film
ⓒ 2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC
cast
トム:マイケル・ファスベンダー
イザベル:アリシア・ヴィキャンデル
ハナ:レイチェル・ワイズ
セプティマス:ブライアン・ブラウン
ラルフ:ジャック・トンプソン
ルーシー=グレース:フローレンス・クレリー
フランク:レオン・フォード
staff
監督:デレク・シアンフランス
原作:『海を照らす光』(M・L・ステッドマン/古屋美登里訳/早川書房)