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服の求道者たち ~「E」の系譜~ 第三回:The FRANKLIN TAILORED デザイナー 板井秀司

2013.04.22

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局地的に高い人気を誇る本企画。フイナムがとくにプッシュしていきたい、"これから"な三人に話を訊いていくシリーズ企画もいよいよ最終回です。皆が皆、セレクトショップ「É」出身という、不思議な縁を軸に展開してきたファッションインタビュー。満を持しての第三弾は〈フランクリン テーラード(The FRANKLIN TAILORED)〉デザイナーの板井秀司氏。極限までこだわり抜いたアイテムに込められた思い、自身のファッション観までを、元同僚であり盟友の中室太輔氏(プロモーションプランニングオフィス「ムロフィス」代表)と語り尽くしてもらいました。

Photo_Shota Matsumoto(people)、Masaki Sato(item)
Edit_Ryo Komuta

板井秀司 Shuji Itai
1977年6月8日生まれの35歳。蝦夷(札幌)出身。高校卒業後の1997年よりアパレル会社勤務。2001年セレクトショップ"E"入社。2011年に退社。2012年の4月に〈フランクリン テーラード〉を立ち上げ、現在に至る

中室太輔 Taisuke Nakamuro
国内外のファッションブランドをメインに幅広いジャンルのブランドの プロモーションやPRを手掛ける「ムロフィス プロモーションプランニング」の代表兼ディレクター。ヒゲがチャームポイントで、最近では季節の変化をヒゲで感じれるほどに。

第一弾はこちらから。
第二弾はこちらから。

当時の「É」のオリジナルは本当に衝撃的だったね(板井)
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中室太輔氏(以下中室 敬称略): いやー、というわけで、この企画もいよいよラストですねぇ。今日は色々聞くこと考えてきましたよ、秀ちゃんに話聞くの楽しみで。

板井秀司(以下板井 敬称略): あ、ホント?

中室: うん。それにしてもお店(注:青山にある〈フランクリン テーラード〉のショップで取材しています)のレイアウトってこんな感じだっけ?

板井: 最近はこんな感じだよ。もう随分前なんじゃないの、お店来たの。なんか、こないだ雄飛(SUN/kakke デザイナー尾崎雄飛氏)もそんなこと言ってたなぁ。あ、そういえば呑みに行こうって言ってたよ。

中室: うん、行こう行こう。俺ら、意外とっていうとあれだけど、まだ交流はあるよね、定期的に。

板井: うん、あるね。まぁ雄飛とは、仕事の話をした流れでその後「行く?」みたいなのが多いかなぁ。

中室: 仕事の話? あれ、二人で何かやってんの? コラボ?

板井: うん、コラボレーション。名古屋の「kink」さんの別注なんだけど、ウチの型と雄飛のところの生地を合わせて、っていう。

中室: へー、知らなかった。

板井: 「kink」さんが1周年で、ウチのフェアをやりたいって言ってくれてさ。で、雄飛も名古屋出身だし、「尾崎さんと何か一緒にやったりできませんか?」っていう話をいただいて。

中室: そういうのがあると、否が応にも会うことになるし、絡んでいけるよね。なんかそういうの大事だなって最近思う。

板井: うん、いいよね。30歳ぐらいっていうか、俺らのジェネレーションってさ...。

中室: ...あれ、今ちょっとサバ呼んだ?

板井: ん?

中室: いや、俺と尾崎はタメだけど、あなたおいくつでしたっけ?

板井: 今年で36。年男。

中室: ほらぁ! 30ってことはないでしょ!

板井: いや、まぁ30代ってことよ。でも、「É」にいたときはムロの方が先輩だからね。。

中室: そういうのがややこしくさせるよね。社歴っていうね。そうまぁ、だからうらやましいなって。そうやって仕事できるのが。

板井: でも、ムロも色んな人と仕事できるじゃない。あれ、〈サンカッケー〉はPRしてないの?

中室: してないよ。コモさん(COMOLI デザイナー 小森啓二郎氏)の〈コモリ(COMOLI)〉もしてないよ。

板井: あ、そうなんだ。

中室: PRの仕事を依頼する、されるとかじゃなくてさ、まぁ、なんかこう50/50の関係っていうか、作り手同士の間柄ていうのがいいなっていう話ですよ。

板井: なるほどねぇ。

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中室: で、こんな秀ちゃん、秀ちゃん、なんて言って仲良くさせてもらってるけど、あんまり「É」に入る前のこと知らないんだよね。飲みとかでも、そんなに仕事の話はしないし。

板井: そうだね。

中室: だから、人から聞いた程度の情報しかないっていうか。札幌にいて、「É」の前は「BEAMS」?みたいな。今日はそのへんからちゃんと聞いていきたいなと思ってます。

板井: はい。まず、学生の時までさかのぼると、実は建築家になりたかったんだよね。北海道のとある工業高校に行くんだけど、そこで今「É」のバイヤーである、Kちゃんと会うことになるの。洋服に目覚めたタイミングでいえば、中学生のときの一個上の先輩に、とにかくおしゃれな人がいて。北海道ってお店もそんなにないのに、その先輩が穿いてるデニムだけ異常に色落ちがかっこよくてさ。それどこで買ったんですか?みたいなところから始まったんだよね。そこからどんどんデニムに魅了されていって、初めは古着屋に入ったんだよね。

中室: それはいつの話?

板井: 高校卒業してからだね。そこで2年働いた後は、とにかくずっとアメリカが好きだったから「BEAMS」に入社して。「BEAMS」ではアメリカの物に多く触れてたから、今度はヨーロッパをコンセプトにもつ「É」がだんだん新鮮に見えてきてさ。そして気持ちが徐々にヨーロッパに浸食されてきて、2年後に「É」に入ることにしたんだよね。

中室: なるほど。でさぁ、これ尾崎にもコモさんにも聞いたんだけど、なんで「É」を選んだの? 奇をてらってるわけじゃないけど、ちょっと天の邪鬼的な感じなのかなって。

板井: そうだね...。まず関係してるのは、当時、、たぶん十何年前に小森さんが作ってたオリジナルかな。とにかくものすごい完成度が高くてさ。自分が「BEAMS」にいたときも、どこのインポートなんだろうって思ってたぐらいだし。

中室: それが2000年ぐらいか。あー、コモさんが一番自由にやってたときなのかもねぇ 笑。

板井: いや、ホントに衝撃的だったよ。ずっとアメリカものを見てきた中で、その中でフランスのワーク寄りのアプローチっていうか。とにかく全然違うなと。あとは当時の「É」って、スノビズムっていうか、ひねくれた部分にかっこよさを見い出してたじゃない。そこに惹かれたんだよね。だから、他のお店とかは考えられなかったね。

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中室: 当時、札幌の「É」ってどんな感じだったの? 他のお店と比べて。

板井: うーん、一番「É」がかっこつけてたね。かっこいいか悪いか、じゃなくて、かっこつけてた 笑。でも、冗談抜きで当時の札幌店はかっこいいメンツが揃ってたしね。

中室: それは渋谷店にいても、そういう噂は聞こえてきてたよ。

板井: あ、ホント? で、俺副店長やってたんだけどさ...。

中室: え! 秀ちゃん、副店長やってたの?! その顔で? 笑。ということは内覧会とかも来てたんだね。

板井: うん、行ってた。

中室: そっかぁ。プレスになってからは俺も内覧会とかに出席するようになるわけじゃない。で、全国から来てるスタッフを見ても、札幌店はとにかくかっこよかったよね。

板井: そう言ってもらえるとうれしいよね。そうそう、当時上司に言われたフレンチの解釈を今でも覚えてるんだけどさ。「金」、つまりゴールドカラーは華やかなパリだと。で「青」はもっと田舎のワーカーたちの作業着。「É」にはどっちもあるんだから、どっちも知らないといけないんだぞって。フレンチの華やかな部分と泥臭い部分、その両方をうまく表現してたのが、小森さんのオリジナルだったんだよね。

中室: そうだよねぇ。コモさんの洋服は、とにかくあんなの見たことなかったんだよね。ひょっとしたら、今でもあんまりないのかもしれないけど。。コモさんの服が、俺にとっての"フレンチ"の入り口だったしね。

板井: とにかく"フレンチ"っていうキーワードが世の中に少なかったからさ。「É」がやってることが"フレンチ"っていう感じではあったよね。

中室: 確かに。うわー、これかっこいいですね! これ何なんですか? あ、これがフレンチっていうんですね、じゃぁ俺もフレンチでいきます!みたいな感じだったよね 笑。

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