第四講 阿部孝史
僕の中ではサードこそがGジャンの代名詞にして、ひとつの完成形。

阿部さんにとっての初サードタイプとその印象って?
阿部「70505 E」で17歳の頃。当時代官山にあった「メトロゴールド」でブランケットライニングが付いたモデルを3万円くらいで手に入れたのが、生涯初のデニムジャケットでした。ホントはブランケットなしが欲しかったけど、1万以上高かったので、やむを得ず妥協したと…。その後はご多分に漏れずファーストもセカンドも手に入れましたけど、Gジャンといえば、やっぱり僕はこのサードタイプを思い出しますし、少なくとも僕ら世代はみんなそうなんじゃないかな? 他ブランドのデニムジャケットでもサードタイプを模したモデルが少なくないワケだし。
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70519-1122 E
阿部僕のひとつめはピケ素材の「70519-1122 E」。20代前半の頃、知人から譲ってもらったもので。サイズ46と当時としては 相当大きめだったから安かったと記憶しています。まあ、今となってはちょうどイイんだけどね。別に先見の明とかじゃなくね(笑)
栗原いや、ただ太っただけですよね(笑)
藤原ピケのジャケットで言えば、前身モデルの「941 E」よりこちらの「70519-1122 E」の方が見ない気がしますね。

今野 46ってサイズ的にも珍しいよね。サードではTバック(古着サミットVol.1を参照)ってないの?
藤原サードはないですね。これは余談ですが、前身「941 E」と対となるパンツ「911 E」のレザーパッチがじつは存在するんですよ。
阿部ホントに?
藤原はい。以前、僕が1本売りましたから。
阿部レザーパッチって何年まで?
藤原個人的に調べた限りでは1958年だと思います。
阿部へえ。そんな古くからあったんだね。
今野でも、この個体に関してだけなのかもしれませんが、「70505」を謳っていながら「941」と比べて、そんなに丈が長く感じないですよね? 42ぐらいの感じかと。
阿部そう、同じぐらいか逆に短いぐらいで。
今野おそらく42とか44辺りまでは身幅とともに丈も長くなるんでしょうけど、それ以降のサイズは身幅だけ伸ばして、丈はそのままって感じなんでしょうね。

藤原僕の知る限りサードでは少なくとも52までは存在しています。確か阿部さんの会社の方が持っているとかで、インスタを見せてもらったんですが。そのパッチには「557 FXX」って表記されていたんですね。
今野FATのF?(笑)
藤原(笑)。いや、詳細は不明ですが。セカンドは僕の知る限り54まであるはずなので、サードも52以上があるのかもしれませんが。
今野今の感覚なら50アップでも全然着られそうだもんね。
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70505-1517 e
阿部2つめは「70505-1517 e」。いわゆる定番のコーデュロイなんですが、ネイビーって色み的にどうなの?
栗原パンツとの組み合わせで考えるなら、やっぱり茶系が中心なんで少ないとは思いますよ。
阿部勝手にネイビーなんていくらでもあると思っていたんだけど、今となっては珍しいものなのね。
今野ですね。
藤原球数云々抜きにしても、普通に着やすいし、カッコイイですから、人気もありますね。

今野ことコーデュロイに限って、黒に黒ステッチって存在するのかな? 黒に茶ステッチは見るけど。
藤原僕はまさに黒に黒ステッチだと思って買った個体をウチの代表が見て「それ後染めだから」って完全否定されましたけど(笑)
阿部やっぱり一番珍しいのは、今野くんの話にもあったピンクとエメラルド?
今野黒も全然出てこないですね。あとカッコイイかはさておき、黄色や紫もかなり珍しいかと。
阿部必ずパンツと対なの?それともパンツだけのカラーもある?
栗原おそらく赤辺りはパンツしかないので、必ず対ってことではないと思います。
阿部正直、サードタイプのコーデュロイジャケットって全然追ってなかったから、まだ学生時代の感覚が残っていて。4980円くらいでヤマほどあるイメージだったな。
藤原いやあ、もう全然出てこないですね。ネイビーなら中古で1万5800円、デッドストックなら2万9800円くらい。
阿部本当に⁉︎ スゴイことになってるんだね。
藤原あとコゲ茶もここ数年で徐々に人気が高まってます。

栗原まあ、色みを限定せずとも、このコーデュロイのサードタイプがすでにアメリカでも全然出てこないですからね。「519」(対となるコーデュロイパンツ)ですら最近あまり見ないじゃないですか?
阿部そうだね、確かに。
今野一応MADE IN USAですし、この先も価値は上がる一方なのかもしれませんね。
栗原ちなみに阿部さんが今日着てきたのは「558」ですか?
阿部そうそう。「558 XX」。何度か「557」は手に入れたんだけど、やっぱり丈が短いので「558」を探していて、一昨年くらいにやっと見つけたの。
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3rd TYPE SUEDE JACKET
阿部3つめはラフスエードの2ポケット。うろ覚えで申し訳ないんだけど、確か20年ぐらい前に知人から譲ってもらったもので…。でもスモールeだったから、じつは勝手に引け目に感じていたんだけど、裕くんに聞いたらスモールeの方が珍しいんだってね?
藤原ですね。ビッグEは結構出てきますが、スモールeはホント見ないですよ。
今野個人的にはJONIOさん(アンダーカバーのデザイナー・高橋盾)の印象。
栗原確か『Last Orgy 2』(かつて月刊宝島にて連載)で着てましたよね。
阿部当時はあまりに高くて、全く手の届かない憧れの存在だったけど、そのワリには結構安めに譲ってもらった記憶があって。一時は10万近くしてた時期もあったと思うんだけど、最近はどうなの?
藤原 2万9800円から3万9800円ぐらいですかね。まあ、じつは思っているよりも球数はあって、あの頃がちょっと異常だったと。とはいえ、今の価格帯も逆に安過ぎるとは思いますが。

栗原昔の高かったイメージが今だにあるらしく、アメリカのディーラーなら今でも日本の相場以上は普通に言ってきますけどね(笑)。でも、もしかすると、現状日本が底値でヨーロッパ辺りはもうちょっと高値で動いているのかもしれません。ロングホーンやショートホーン時代(タグに描かれたバッファローのアイコン。角が長いものが通称ロングホーン、短いものが同じくショートホーン)のスエードタイプだと値段もやっぱりしますよね。
今野ショートホーンのスエードって全部で何色あるの?
藤原黒、グリーン、グレー、ブラウン、コゲ茶だったかな。
今野黒は欲しいなあ。
阿部そうか、「557 XX」がサードタイプのオリジナルみたいに考えていたけど、スエードモデルとかも合わせるとあのカタチ自体は「557 XX」以前からすでに存在していたってことなんだね。
藤原そうですね。襟はスムースレザーですけどロングホーンタグが付いた個体があるので、おそらく一番古いもので’40年代後半から’50年代初頭頃には、すでにあのサードタイプのカタチ自体はセカンド以前に存在していたことになりますね。

阿部そう考えるとやっぱりこのデザインがGジャンの完成形だね。
栗原何かキレイにまとめましたね(笑)
一同(笑)