FEATURE | TIE UP
もうPCいらない? スマホとアドビで、誰でもクリエイターの時代に。
Creativity for All

もうPCいらない? スマホとアドビで、誰でもクリエイターの時代に。

デザインや写真、映像のプロたちが使う〈アドビ(Adobe)〉のソフトウェア。これまで、素人が使うには難しかったし、価格のハードルもありましたが、それは遠い昔の話。いまはモバイル版が登場するなど、より多くのひとへ向けた設計になっています。実際に使うと「こんなことまでできちゃうの!?」って驚くはず。本国および日本で開催されたイベントで体感したのは、「カウチの上でなんでもつくれるのでは⁉︎」ということでした。

  • Photo_Masayuki Nakaya(Japan Event)
  • Text_Keisuke Kimura
  • Edit_Shuhei Wakiyama

写真から動画をつくったり、異なる画像を調和させたり。

ところ変わり、ここ日本でも11月に〈アドビ〉がイベントを開催。YouTubeとの協業からもわかる通り、やはりいまは、スマホでつくる・観るを完結するモバイルファーストな時代になっているのでは?ということで、モバイルについていろいろと話を聞いてきました。

クリエイターが100名近く集まった会場では、「Adobe MAX 2025」の内容を振り返るとともに、質疑応答なども。イベントの最後には、クリエイターのコミュニティを大事にしている〈アドビ〉らしいミングル(交流会)も開催。ここからは撮影もすべてスマホのみで取材を敢行した。

スケールの大きさに驚いたと、「Adobe MAX 2025」に参加したときの写真(右)を見せてくれたのは、デザイナーのタマケンさん。最近はプライベートでモバイル版を使うことも増えてきたのだとか。お気に入りはLightroomとExpress。写真にフィルターをかけたり、簡単なアニメーションをつくったりと、SNSへアップするときに使っている。どちらも操作が簡単かつ無料なので、はじめの一歩にぴったり。

イラストレーターとして活躍する北沢直樹さんが見せてくれた、Frescoモバイル版の使い方も印象的だった。なにかを閃いたときにスマホで絵をかき、それをPC版に移行させ修正する。豊富なテクスチャや、細かなタッチの再現性、他のアプリケーションとの連動に優れているのがお気に入りのポイントなんだとか。

〈アドビ〉には、ソフトウェアに精通し、そのよさを伝えるエバンジェリスト(伝道師)という存在がいます。今回はこのイベントのために4名が来日。最初に登壇したポール・トラーニさんは、デザイナーとして活躍するクリエイターです。

〈アドビ〉の技術革新を発信しているデザイナーのポール・トラーニさん。

そんなポールさんがいま、最も使う頻度が高いアプリが、Fireflyモバイル版だそう。

「少しの待ち時間があれば、Fireflyモバイル版を立ち上げて、トライしてるんです。PC版より動作も早く、待つ時間がとても少ない。移動中でも、カフェでも、思いついた瞬間にクリエイティブな作業に没頭できるんです」と言います。

また「若い人たちにとっては、モバイルで作業することが当たり前になりつつある。同時に、プロのデザイナーにとってもポートフォリオの一部になるし、ワークフローの一環として、スマホを使う人も増えてきている」と続けます。モバイル版は単なる簡易版ではなく、いまではプロにとっても、重要なツールになっているということです。

アメリカのアリゾナでミュージシャンおよび映像作家として活躍するジェイソン・レビンさんも人気エバンジェリストのひとり。

「いままで積み重ねてきた知識とスキルに、新しいツールが加われば、違う世界が見えてくるというのはよくある話です。だからこそ、プロの方も素人の方も、一度ダウンロードして、カウチの上でいろいろトライしてもらえたらうれしいですね」と話すのは同じくステージに登壇したジェイソンさん。よく使っているのはPremiereモバイル版だと言います。

「最初は画面も小さく苦労するかと思いましたが、モバイル用に設計されているので、とても使いやすいんです。それに立ち上がりも早く、パフォーマンスも優れていているから、さくさく作業ができます。くわえて、モバイル版のPremiereは無料で使える上に、Fireflyのテクノロジーもビルトインされている。生成AIも連携して使うことができるのも魅力のひとつですね」

いま注目する〈アドビ〉の新技術の話にもおよび、それがPremiereモバイル版のある機能。たった一枚の写真があるだけで、動画ができてしまうというものです。

〈アドビ〉が提供する生成AIのFireflyを駆使し、とても簡単なプロンプトで動画ができてしまいます。止まっている波を動かしたり、雲を動かしたり。たとえば、こんな感じで。

この動画は「浜辺です。雲と波を動かしてください」という簡単なプロンプトで生成された。音楽はサウンドトラックの「Beach Florida 02」を使用。

これがもとになった写真。

機能で言えば、今回、東京のイベントで、オーディエンスがもっとも沸いた瞬間が「調和」機能を披露したとき。

「最近、Photoshopモバイル版に『調和』という機能が追加されました。レイヤー機能をリリースして以来の画期的な新機能だと思っています。異なる環境で、異なる照明度の環境で撮影した2つの画像を、文字通り『調和』できるわけです」とポールさん。動画の中に画像を埋め込む際にも非常に役立つ機能だと言います。

それでは実践。たとえば、撮影したビーチの写真がちょっとさみしいかも…なんて思ったら、これもボタン一発でこの通り。まるで同じ場所で撮影したかのような一体感が生まれます。

素材として使うのは、ビーチで撮った写真(左)を背景に、Fireflyで「船」という直球のプロンプトで生み出した画像(右)。

Photoshopで調和をさせると、色味や質感が整い、影も入ってかなりリアルな画像ができあがる。コラージュの作品はもちろん、集合写真に撮影者を入れるなんて使い方もできそう。

どれもこれも、AIが発達したことによってどんどん作業が簡素化され、特別なスキルがない素人であっても、なんなく使えるようになってきています。そのほとんどが、スマホでできてしまうのだから、すごいんです。

実はジェイソンさん、子供向けのMVをつくったりもしています。その作品のひとつに『おならモンスター(和名)』という楽曲があり、そのキャプションやアニメーションをFireflyモバイル版とPremiereモバイル版を駆使して制作したというのです。

こんな作品も、スマホ一台あればつくれてしまいます。いまの時代、スマホしかもってないという人もいるでしょう。そんな人にこそ、クリエイティブの導入として、モバイル版のアプリをぜひ使ってみてほしい。

「私が仮にスマホしか持っていない学生だったとするなら、まずはPhotoshopのモバイル版を使って、どんどんクリエイトしていくと思います。自分の大好きなものをコピーして、トライアンドエラーを繰り返す。そうすればおのずと使い方の理解が深まるし、創作がもっと楽しいものになっていきますから」(ポール)

ジェイソンさんも同じ意見。どんどん試し、恐れず使うことが大切だと言います。

「自分の子供たちは、モバイル版のアプリを使って驚くようなものをつくったりするんです。彼らは、新しいツールや失敗することに関して、なにも恐れていません。その心持ちがなによりも大事だと思っています」

INFORMATION

関連記事#スマートフォン

もっと見る