PROFILE
國學院大學大学院修了後、出版社勤務を経て独立。世界中の危険地帯を取材するフリージャーナリストとして活動し、TBS系列のTV番組『クレイジージャーニー』で注目を浴びる。多数の著書があり、最近ではYouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」も人気に。國學院大學学術資料センター共同研究員も務める。
社会も変えたくなければ、誰かを救いたいわけでもない。
ー 丸山さんが取り上げるのは大手メディアに出ないような面白いネタが多いですよね。情報源は人づてなんですか?
丸山:どこか1つと決めずに、色々なところを情報源としていますね。いつ、どこからヒントが入ってくるかはわからないので。ただ、大手のメディアが拾わない細かいネタのヒントが多いです。でもそれは、日本のメディアが取材しない部分というわけじゃなく、媒体としてネタが合うか合わないかというだけです。大手メディアがメインストリームのネタを取りに行くと端が余るから、それを僕が拾いに行って、みんなが興味のある形にして届けるんです。大手メディアが僕のようにやれないのではなくて、やる必要がないだけなのかなと。
ー メインとサブ、どちらもあって成り立つわけですね。
丸山:たとえば、デモの参加者がどんなものを食べているかなんて、大手メディアを見る人は興味がないわけです。でも、日本には数万人くらいの細かなネタ好きな人がいるわけで、そこに向けて僕が取材しているだけ。スラム街でどんな人がどんな行政支援を受けているのかを調べるのが大手だとしたら、その人たちが出しているゴミはどんなだろうと自分がゴミ山を見に行く。そんな違いですね。
ー 辺境を取材し続けるモチベーションはどこにあるんですか?
丸山:自分が行きたい、見たいという気持ち、それしかないですよ。だから、何々を救いたいとか言っている人は、みんな裏があるか嘘だと思っています(笑)。でも、その中にたまにモンスターみたいな革命児がいて、本当に生涯をかけて誰かを救ったりするから、ばかにはできないんですが。
ー 丸山さんと言えば、大手のテレビ番組『クレイジージャーニー』をきっかけに世の中へ広く知れ渡ったという事実があると思いますが、ご自身にとっての手応えはあったんですか?
丸山:まず、あの番組は大手じゃないですよ(笑)。深夜番組ですし、TBSにも報道局はあって、彼らは自分よりももっとすごいところに行ってますからね。でも、あの番組をきっかけに興味を持ってくれる人が増えたのは、意外ではなかったです。視聴者の母数が増えれば、好きで追ってくれる人は増えるとは思っていましたから。
でも、実はこの10年くらい、多くの人に見てもらいたいとか、スクープを狙うという気持ちはなくて、やりたいことしかやりたくないモードなんです。自分に対する顧客分析くらいはしますが、お客さんの視点を意識しようとか、世の中を変えようとか、ましてや誰かを救おうとかはなくて、自分が面白いかどうかだけを優先しています。
ー そのモチベーションが続くのはすごいですよね。
丸山:若い頃は、スクープを、社会を、と頑張っていましたが、メディアからは拒絶されたんです。どこに企画持ち込んでもシャットアウトで、「タレントじゃないやつの海外レポートなんて誰も興味ないよ」って追い返されてばかりでした。だから、裏返って興味があることだけやっていたら、名が知られるようになって。いまさらスタンスを変える気もしないし、戻れないし、戻る気もないですね。
ー その山を越えて、もう後戻りする気はないと。
丸山:分かったことは、そういう人助けや社会を変えるようなニュースは、お金も権力もあるところがやるわけです。僕がやるのは世界の片隅を好きなように歩いて、好きな形で出して、見てくれたみんなに「興味を持ってもらって、ありがとう」と言うくらいでいいんです。僕は、ジャーナリストと名乗りつつ、気分は情報屋でいたいんですよね。海外ネタとか色々な情報を発信した時に、誰かが面白がってそれを買ってくれるということだけをやりたいんです。社会も変えたくもなければ、誰かを救いたいわけでもない。
ー 潔いですね。
丸山:ただし、大手メディアに出たくないということはないです。一緒にやろうと誘われたらやりますし、一緒に行きます。取材先で、大手の人はどんな経費の切り方をするんだろうとか、気になりますからね(笑)
ー そこも観察するんですね(笑)
丸山:大手メディアの人やテレビマンって財布や服はどんなものを使っているんだろうとか観察しますよ。これを持っているから、服にかけるお金はこれくらいなんだろうなとか、僕はなんでも興味は持つんです。でも、それが面白いかどうか、つまりそれを労力や時間、お金をかけてまで取材するかどうかは別ですけどね。