KEEN IN FUJIROCKFESTIVAL
2017年のフジロックフェスティバルは雨だった。コンディションはまさしく最悪。それでも、空間を、音楽を、祭りを楽しむ姿勢を誰もが見失わなかった。広大なフィールドでは同時多発的にライブが行われ、その全てを網羅することは誰にもできない。だからこそ、フジロックの正体は、個人の体験の中に存在する。フイナムは、4組のアーティストがそれぞれの目で見たフジロックの正体に迫った。足元にKEENを携えて歩き回り、インスタントカメラが捉えたフジロックの姿を、インタビューとともに振り返る。
武居詩織
モデル。洋邦問わないヘビーリスナー。フジロックには八回連続で参加中。
今までフジロックには何回参加しましたか？
武居2010年からだから、今年で8回目。最初に行ったのは19歳のときだったな。ちょうど洋楽を聴くようになった時期で、一番最初にハマったのがレディオヘッドとシガーロス。
暗いロックの二大巨塔ですね。
武居そうそう。レディオヘッドの『Everything in its rightplace』にハマって、『KID A』をたくさん聴いてた。シガーロスは『Takk』が好き。それまでは邦楽を幅広く聴いていたんだけど、洋楽ってこんなに挑戦的なんだ！って驚いて。そこから洋楽を聴くようになって、最初は主にダンスロックが好きだったなぁ。
フェニックスとかトゥードアとか？
武居そのちょっと前。ラプチャー、フランツフェルディナンド、フラテリス、ザ・ミュージック 、!!!とか。そのあたりが好きだったから、初めて行ったフェスはエレクトラグライドで。そこでクリスカニンガムの映像を見たんだけど、もーとんでもなかった。
話せる範囲で詳しくお願いします（笑）。
武居「エレグラだからなんでもOK！」みたいな雰囲気があって、もう本当にエロ、グロ、アートの極みみたいな。やりたいこと全部規制せずにやりきりました、みたいなVJだった。衝撃的すぎた。男性の局部が大写しで、「はわーーー」と見ているこっちが赤面してしまう様な（笑）。18歳で、初めて夜のライブに行ったのですよ。そこでそんなものを見てしまって、ちょっと無理かもって抜けたんだけど。一回落ち着いて考えて、やっぱり見た方がいいかもしれないって思い直して…そしたら妙にはまっちゃって。「変態だ…！！！」みたいな（笑）。
そこから目覚めてしまったと。
武居それで音楽に開眼して、その時のメンバーと行ったのが一番最初のフジロック。前夜祭の日の朝に到着して、テント立てて、前夜祭参加して、、、っていうフジロックのフルコースを、それから今年まで毎年やっている。帰りは「永井食堂」でご飯を食べるところまで（笑）。
ホテル泊はされないんですね。
武居うん、ずっとテント。とにかくテント泊が楽しいっていう記憶が、自分の中で最初から変わらず、フジでの強い印象になっているのかも。他のフェスだったら、アーティストが良かったら行くけど、フジロックはフジロックだから行きたいと思える。
そう考えている理由を教えてください。
武居フジにいる人たちはとってもピースフル。一人でテントの荷物運んでたら手伝ってくれたりする。あと、楽しみ方が本当に人それぞれなんだよね。ライブを観るだけがフジロックじゃなくて、ヨガとか、川があったりとか、緩急つけて遊べるし、テントでゴロゴロしててもいいだろうし、パリピな人は夜通し遊んでてもいいだろうし。
フジロックはとにかく広くて深いですよね。
武居そう、いまだに一度も行ったことないエリアとかあるもん。今回いいスピーカーとヘリノックスを持って行ってお酒を飲みながらテントでのんびり音楽聴いて、景色を見ながらまったりして・・・ってやってみたんだけど、それも良かった。キャンプしたい気持ちと、音楽と、友達がいてお酒も飲めて、ゴロゴロできて、もう全てが詰め込まれている。参加するハードルが高いから、来るのは本当に音楽が好きな人たちだけ。そういう人たちがフジロックの空気を作っているんじゃないかな。
音楽の価値を高く見積もる人じゃないと、金銭的にも労力的にも釣り合わないですよね。逆に音楽好きにとっては最高の環境。
武居ね。私、クラブミュージックは嫌いじゃないけどクラブという場所は苦手で、音楽を聴きたいからナンパされたりすると対応に困ってしまって。でも、フジの場合は一人行動していても一切声かけられないのがいい（笑）。今回、ボノボを観るときは持っていたお酒も飲み干して、とてもいい気分で見てた。歌物じゃないけど、音に酔いしれて想像するのもすごく好きだから。
聴く側にも、才能と努力が必要ですよね。
武居そうなのかも。音楽に自分の気持ちをどう載せるか。想像力と、没頭することが楽しいって思う。
他に印象的なアーティストはいましたか？
武居The XXは、ずっと友人たちから「絶対好きだよね」って言われ続けていて、何回か観ているんだけど、熱狂的な友人との温度差を感じてしまう瞬間が…（笑）。これは自分でも本当に不思議！なんでだろ？ 今回も前に行く友達を見送って後ろで座ってゆっくり見ていました。
ベストアクトは？
武居環境とのマッチ具合でいうと、ライがよかったかな。照明を落として、夜のヘヴンとよく合ってた。エイフェックスツインもとっても良かったな、やっぱり。
ライブの良し悪しってどこで決まるのでしょう。もちろん色々な要素があると思いますが。
武居その時の自分の状態にもよるんだろうね。いろんな種類の感動があると思う。つい先日シガーロスを観たときは救われた感覚になったというか、デトックスというか、魂の混沌をたどる旅、みたいな感覚だった（笑）。まるで血管の中を通っているように映像が見えたし、内面に深く入って行く感覚。初めてだったな。PAと環境もすごく大事だよね。
武居さんは自分の内面的な領域を見つめていると思うのですが、それは昔から？
武居幼稚園の時から、みんながお昼ご飯を食べている時にひたすら空中の一点を見つめています。とか言われてたらしい（笑）。月を見てわーってなったりとか、夜の影で遊んだりとかね。不思議な子だったと思う。
中高生の頃はどうでした？
武居中学校に入った頃、メガネっ子だったんだよね。派手じゃないけどみんなと仲良い、みたいなポジションで、誰かに嫌われるとかはなかったんだけど、あるときクラスの男子が恋愛の話をしていて、私は地獄耳だったから「まずたけすえはないよね～」っていう言葉が聞こえて…そんな感じの子だった（笑）。
多感な時期にそれは応えますね…（笑）。
武居その時卓球部だったし、まあしょうがないと思ってたんだけど。あとは見ず知らずの人に「たまちゃん」って言われたり。いじられてたなぁ（笑）。でもね、メガネをやめた途端、いきなり男子に告白されたんだよね。
まるで少女漫画のように。
武居でもね、それでめっちゃ病んだ。メガネ外しただけで私は何も変わってないのに、なんで？って。そこからいろいろ考えるようになったな。顔が見えないオンラインゲームの世界で人と仲良くしたりとか。人生について考えたり。だから、今モデルをやっていることはある意味ですごく不思議なんだよね。
今や人前に出る仕事ですもんね。〈キーン〉はどうでしたか。
武居〈キーン〉はもともと履いていたんだけど、ピレニーズはもう最高。限定色のやつが可愛いし合わせやすくて。私はフェスの時青系の服装が多いから、すごく使いやすかった。
水を弾くピレニーズの動画、あげてくれてましたね。
武居そう！プルプルーって！1日目は本当に雨をバッチリ弾いてくれて、2日目もしみて来ることなかった。ユニークは行きと帰りに履いてたんだけど、はき心地が良くて、帰りは滝に寄ったんだけど、脱ぎやすいのもいいなってその時思ったな。
アウトドアシーンの足元にはすごくフィットすると思います。
武居キャンプサイト、足元みんな〈キーン〉なんじゃないかってくらい多かった。ユニークだらけ！
向こうで友達と会いましたか？
武居今年は東京がそのままフジロックに来た、みたいになってた（笑）。ただ、会う人は会うし、会わない人は会わないし、好きなアーティストが被らないとあんまり遭遇しないよね。
そうですね。フジロックはどう見るか、どう会うか、どう動くかがかなり難しいです。
武居単独行動ができて、見るアーティストが被ったら一緒に見て、集まる時はパッと集まる、みたいなのがいいよね。フジの場合は。今回一緒に行ったメンバーとはそこの考え方が近かったな。すごくやりやすかった。
フジロックにはこれからも参加されるんですか？
武居来年も再来年も行く。結婚とかもししたら・・・どうなんだろうね。子どもとか生まれたら行けないのかな。子どもも連れて、みんなで一緒に行ったりもするのかも。またKEENのお世話になると思います。
