人体構造を熟知したシルエットは〈AG〉のデニムに共通する魅力だ。スリムストレートの「マッチボックス」やスリムテーパードの「テリス」など顔となるモデルも数多く存在する。そのシルエットに合わせ、ステッチのピッチやポケットの位置まで計算し尽くされているのも特筆すべき点だろう。
作業着というレッテルを剥がすのみならず、スタイル、シーンを超えたボトムとして認知させるのに研ぎ澄まされたシルエットが貢献したのは間違いないが、〈AG〉といえば加工技術も見逃せない。
新生〈AG〉の地力をみせつけたコレクション「AG-ed」はまるでワインのように3年もの、5年ものといった具合に穿き込まれた想定年数を記している。そのユニークな仕掛けもさることながら、唸らざるを得ないのは年数表記に真実味を感じさせる精密な加工っぷりだった。これを支える自慢の工程がシワ加工とレーザー加工だ。
シワのリアリティは職人が一本一本刻んでいく気の遠くなるような作業があってはじめてカタチになる。まさしく根気と年季がいる工程である。一方のヒゲ加工に代表されるレーザーを駆使した3D表現もひけをとらない。レーザー加工にはその型となるテンプレートがいるが、〈AG〉のそれはこだわりが高じて一からつくり込んだオリジナルだ(競合他社のほとんどはありものを使用している)。必要とあらば通常は1〜2回の加工工程を3回、4回と重ねることも厭わない。
メキシコに第二の工場を設けて増産体制を整えた〈AG〉だが、いまなお一本のデニムに最低でも100人! 近い職人が携わっている生産背景は変わらない。
「マッチボックス」と「ディラン」の中間ともいうべきシルエットで近年人気が高まっているモダンスリムの「テリス」。膝や腿のメンディング&当て布、鮮やかな色落ちがモデル名に付した16YEARSに説得力を与える。ストレッチ混で穿き心地もノーストレス。¥38,000。(ONLINE STORE)