いざ、湖へ。
撮影当日は梅雨の真っ只中で、厚い雲が富士山の頂を覆い隠すあいにくの空模様。それでも本栖湖の水面はとても穏やかで、透明度の高い水中は湖底まで見通せるほど。思わず背筋もすっと伸びて、都会の生活で凝り固まった身体も自然とほぐれてきます。「サップって、なんとなく女性がヨガをやってるイメージがあって今まで縁がなかった」と苦笑いしながらも、ライフジャケットを身に着けパドルを手にした大橋さんの表情は、どこか少年のように弾んで見えます。最初は仕事のためと右も左もわからないまま釣りを始め、気づけばどっぷりハマっていったという大橋さんですが、まさにあの時と同じ好奇心が、今日もうずきだしているようです。
ーサップは今回が初めてだったんですよね?
大橋: そうなんです。サップをやることも初めてだし、なんなら目の前で見たり触ったりするのも初めてです(笑)。たまに釣り場で遠目に見かけることはあったんですけど、女性の方たちがサップの上でヨガをやってたりして、正直そういうイメージしかなかったですね。
ー実際に乗ってみてどうでしたか?
大橋: 思ったよりずっとしっかりした運動で驚きました。下半身にすごくくるし、体幹もかなり使う。ただリラックスしてるだけっていう感じではなく、足の筋肉もすごく使ってる感覚があって。なのに気持ちとか内面は自然とリラックスしている。体は疲れるんですけど、気持ち的には癒しというか。いままでに感じたことがない感覚でした。
ー釣りやほかのアウトドア遊びと比べて、サップならではだなと感じる部分はありましたか?
大橋: 装備が少ないのに、得られるものがすごく大きいというか。水の上に出るだけで、気持ちの切り替わり方が全然違うんですよね。たとえば釣りもひとりで出かけることで身体は疲れても頭はすっきりしてトータルで回復できる感覚があるんですけど、サップはそれがもっとダイレクトに感じられるというか。
ーサップ中に一度、湖に落ちましたね。
大橋: はい、豪快にいきました(笑)。でも正直にいうと落ちる前までは、「落ちないように落ちないように」ってずっと意識してたんで、そればっかりに集中して周りをみる余裕がなかったんです。でも一回落ちたら「もういいや」ってなって、一気に視界が広がったというか、心も身体も自由な気持ちになりました。落ちてからの方がずっと楽しかったです。
少し慣れてきたころにバランスを崩してお約束の流れ。でもライフジャケットのお陰で落ちてもこの笑顔。
ーお店のバイイングと、自身がフィールドで使うギア選びの目線はリンクするものですか?
大橋: どうなんでしょう、意識はしてないですがどこかでは繋がってる部分は当然あると思います。もともと釣りを始める前からバスプロショップス(※アメリカで有名な釣り総合アウトドストア)で買い付けに行っていたんですが、そのころは釣りコーナーを全部すっ飛ばして買い物していました。でも釣りを始めてからは自然と釣りコーナーにも足が止まるようになって。自分が実際にやることで、道具の意味や魅力もわかるようになるし。やっぱり何でも自分で体験するのは大切ですね。
ー大橋さんにとって「いい道具」の定義は?
大橋: 機能面はもちろんなんですが、改めて考えてみると見た目では一概に言えなくて。たとえばそれが新しく手に入れた物であっても、自分がいま持っている身の回りの中に、違和感なくスッとハマってくれること。デザインだったり、色使いだったり、形だったり。装飾が多いからいいとか悪いとかじゃなくて、感覚的に自分のラインナップの中に自然と入ってくるものが、自分にとってのいい道具なんだと思います。それがうちのお店っぽさとか、ぼくっぽさみたいなところにも繋がってると思っています。