スタイリスト・荒木大輔さんが語る、ブランドの目線。

荒木大輔 / スタイリスト
1976年生まれ、群馬県出身。文化服装学院を卒業した後、スタイリスト・熊谷隆志氏に師事。2001年に独立し、雑誌や広告、アーティストのスタイリングのほか、ブランドのルックやカタログなども手掛ける。
このイベントの総指揮を務めたのが、私物の展示を行っていたスタイリストの荒木さん。このブランドの日本用のヴィジュアルも荒木さんがスタイリングを手掛けたそう。ということで、〈テイケン エブリシング〉にどんな印象を持って、どんなヴィジュアルをつくろうと思ったのか? そしてこのイベントのことについて、荒木さんに話を聞いてみました。
- ー〈テイケン エブリシング〉をはじめてご覧になられたときの第一印象を教えてください。
- 荒木:パッと見て雰囲気がすごくいいなぁ、と。無駄な装飾が一切なくて洗練されているし、見た感じ品質もよさそうだからこれは使えるだろうな、というのが最初に思ったことですね。で、値段を聞いてさらにビックリみたいな(笑)。どのアイテムも1万円前後というのには本当に驚きました。お手頃すぎるでしょ!って。

- ークオリティーと値段がいい意味でアンバランスなところが魅力だと。
- 荒木:うん、そうですね。リュックとトート、どちらかで迷う必要がないというか。どっちも買っちゃえる値段ですよね。
- ー今回のイベントですが、ストリート感が漂う演出が至るところにみられました。どんなことを考えてこういったアプローチをされたんですか?
- 荒木:〈テイケン エブリシング〉のアイテムはカナダのストリートシーンに影響力をもつ2名のデザイナーによってつくられているんですよ。彼らはDJをしていたり、スニーカーのショップを運営したりしているんです。だから彼らのバックボーンを伝えることを念頭に置いて、空間を構築していきました。


- ー店内の中央に展示されていた、たくさんのコーチジャケットとバッグが印象的でした。
- 荒木:コーチジャケットはまさにストリートを表すアイテムだし、トレンド的に注目されていることもあるので、このアイデアはすぐに思いつきましたね。ただ、こんなにたくさんのアイテムを集めるのが大変だった…。
- ーそうですよね、なかには荒木さんの私物があったりも?
- 荒木:ありますよ。グリーンのやつが〈エンジニアドガーメンツ × ビームス〉、ツイードのは〈メンテナント〉、黒いナイロンのは〈ヒューマンメード〉、バーガンディのコーチジャケットは〈フィルザビル〉のアイテムです。

〈エンジニアドガーメンツ × ビームス〉。荒木さん私物。

〈メンテナント〉。荒木さん私物。

〈ヒューマンメード〉。荒木さん私物。

〈フィルザビル〉。荒木さん私物。
- ーあと、入り口に展示されている私物もユニークでした。
- 荒木:大人でありながらもストリート感とユーモアのセンスがあるクリエーターにお声がけをして、実際にバッグを使ってもらったんですよ。で、「あなたはこのバッグになにを入れますか?」っていうお題をだして小物をお借りしたんです。
- ーそれぞれの個性が感じられますね。
- 荒木:みんなおもしろいもの持ってますよね(笑)。

平野太呂さん私物。

バリスタの澤田洋史さん私物。

「FRANK 151」の輪島リンタロウさん私物。
- ー荒木さんの私物も展示されていましたが、実際に使ってみてどんなことを感じましたが?
- 荒木:本当に使いやすかったですね、ストレスがないというか。「ポケットがここにあったらいいのに」とか、そういう煩わしさがない。むしろ、現代人の生活様式に合わせて然るべきところに必要な機能が備わっている。徹底的にユーザー目線にこだわって機能が考えられているんです。かゆいところに手がとどく、という表現がしっくりくるかな。だからスッと自然に生活になじむんですよね。ユーザーの個性をサポートしてくれるんですよ、〈テイケン エブリシング〉のアイテムは。
ストリートのキッズから紳士な大人まで、人を選ばないデザイン。
- ー今回、日本でのローンチに合わせて国内用のビジュアルを手掛けたそうですが、これはどんなコンセプトがあるんですか?
- 荒木:ユーザーの個性を尊重するアイテムということは、どんな人が持っていてもいいということ。実際にストリートにいるような若い子から、きれい目な格好をした大人まで幅広い人にアプローチできるデザインも魅力だと思うんです。だから人種も年齢も無視した4人のモデルをキャスティングして、それぞれに個性を引き立てるようなコーディネートにスタイリングしました。


- ーフォトグラファーには最近『Los Angeles Car Club』という写真集を発表された平野太呂さん、アートディレクターにはさまざまな出版物のアートディレクションを手掛ける吉田昌平さんを起用されています。このスタッフ構成にはどんな意図があるんですか?
- 荒木:平野くんはむかしから一緒に仕事をしていて意志の疎通がしやすいフォトグラファーなんです。今回色をつかったビジュアルをつくりたかったんですけど、平野くんとはそういう撮影を何度かしたことがあったので、すぐアイデアが出ましたね。
- ー平野さんご自身がスケーターですし、“ストリート”というブランドの背景も表現しやすかったんじゃないですか?
- 荒木:そうですね、それもすごく大きかった。ふとしたときの瞬間やニュアンスを切り取るのが本当に上手で、他の人には撮れない写真を平野くんは撮ってくれるんです。この後ろ姿が映っているモデルもなんてことない写真に感じるかもしれないけど、その普遍さを写真で表現するのってすごく難しいんですよ。
- ー吉田昌平さんに関してはいかがでしょうか?
- 荒木:吉田くんとも何度か一緒に仕事をさせてもらったことがあって。彼はコラージュの作品をつくっているんですが、ぼくはそれが好きで。じつは最初アートディレクターをスタッフに入れるつもりはなかったんですが、平野くんと話しているときに「コラージュにしたらいいんじゃない?」というアイデアがでて、だったら吉田くんしかいない! と思って参加してもらったんです。

- ーストリート感やひとの手触りみたいなものが感じられますよね。
- 荒木:そうですね。お陰ですごくいいものができあがったと思います。
- ーでは最後に、このビジュアルを見た人にどんなことを感じ取ってほしいか教えてください。
- 荒木:どんな人が使っててもおかしくないブランドなので、「なんか俺も使えそうだな」っていうフィーリングを持ってもらえたらうれしいですね。それで実際に色んなシーンで使ってほしい。本当に振り幅の広いアイテムが揃っているので、それぞれのライフスタイルに合わせて自由な感覚で楽しめるのが〈テイケン エブリシング〉の最大の魅力だと思うので。