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FEATURE|古着サミット4 あの古着好事家が1年ぶりに集結!

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第三講 栗原 道彦
「ミリタリーのツナギはディテールの宝庫です」

阿部:では続いて栗君、お願いします。

栗原:毎回営業っぽくなって申し訳ないのですが、前々回の出張でバイイングしてきた〈パタゴニア(patagonia)〉の「MARS」を(笑)。スペクタージャケットとスプレーマスタージャケットです。今回、大量に発見できたんですが、おかげさまでもうほとんど売れちゃいました。

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今野:どっちもかなり珍しいよね。いやぁ、すごい…。

藤原:なんで5年くらい眠らせなかったの(笑)?

栗原:本音を言うならすぐに売りたくなかったけど、そんな余裕なんてありませんよ(笑)。

阿部:おさらいですが、そもそも「MARS」って何の略だっけ?

栗原:「Military Advanced Regulator System」の略で〈パタゴニア〉が開発したレイヤリングシステムです。軍用に開発してるんですが、形から作ったのはスリングショットくらいで、後は基本的にインラインでも展開されていたモデルだと思います。ダスパーカやスペクタージャケット、そしてレインシャドーや「R2」などもそうですよね。

阿部:カラーが違うだけ?

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栗原:おそらく。実際はトライアル的な目的もあったようで、ミルスペックがつく前に実際にサンプルとしてテストをしていたんだと思います。ただ<パタゴニア>の場合、クオリティはいいんですがいかんせんコストが高かったらしく、結局一般兵用としてはスリングショットが「ECWCS(Extended Cold Weather Clothing System)」のジェネレーション3のレベル4、ウインドシャツとして採用されていただけで、それ以外は特殊部隊用のPCU(Protective Combat Uniform)」で数型が採用されていました。

今野:このスペクタージャケット、試着していい(笑)?

栗原:え、いいですよ…。

今野:(鏡を見ながら)コレ、おいくらですか(笑)?

栗原:もしかしたら事務所にユーズドがあったかもしれないので、明日連絡しますね(笑)。

阿部:そもそも「MARS」を集めようと思ったきっかけは?

栗原:’90年代はよく〈パタゴニア〉を着てたんですけど、時代的にカラフルなものが多かったじゃないですか。その反動もあり、あまり着なくなったんですけど、「MARS」はご覧の通りカラーリングが落ち着いているので、これなら着られると思って。あとは昔からミリタリーウエアが好きというのもありますね。

藤原:いまや栗君と言えばミリタリーって感じだよね。

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阿部:確かにいつの間にか、そんなイメージだね。

栗原:以前勤めていた店の頃からミリタリーはバイイングしてたので、そのイメージが強いのかもしれませんね。

藤原:その頃から、栗君が大量のデッドストックを見つけたりすると、たいがいミリタリーだったような気がするし。

栗原:そうだね。もちろん今回持ってきたのも、ミリタリーが好きだからこそだよ(笑)。

阿部:じゃぁ、お金とミリタリー、どっちが好きなの(笑)?

栗原:ミリタリー=お金なのでどっちも好きです(笑)。

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阿部:コレは、何括り?

栗原: “ベタ”括りです。ベタなアイテムを集めてみました。まぁ、定番中の定番というようなアイテムです。ステンシルだったり、カラーフロッキーだったり、カレッジだったりとわかりやすいプリントのヴィンテージが気になってるので今回持ってきました。

阿部:このベタなアイテムの良さは?

栗原:最近は古着を全身ガッツリ着ることがほぼないんですよね。基本的には新品と合わせて着ることが多いんですが、その中で古着を一点取り入れるのであれば、こういったベタなアイテムがいいかなぁと。前回は無地のアンダーウエア系を紹介したんですが、ここ最近はプリントものの古着もまた着るようになり、中でもこの辺りが面白くて。

今野:このインディアンプリント、ヤバいね。

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阿部:お店だったら結構な値段になりそうだよね。

栗原:これはアメリカで自分用としてディーラーから買ったんですけど、結構な値段でした。というのも買った時が夕方で、しかも野外で見せられて。で、そのディーラーがこのスエットのボディは黒だって言い張ってて、でも自分にはネイビーにしか見えなかったんです。で、何度もネイビーだって言ったのに、ディーラーは黒の一点張りで。ただプリントがすごく気に入ったので泣く泣く黒ボディの値段で買ったんですけど、数日後に明るいところで再度確認したらやっぱりネイビーでした(笑)。

藤原:(笑)。ちなみにいくら払ったの?

栗原:350ドル。

今野:おー、結構な値段だね。確実に黒ボディの価格だし(笑)。

栗原:黒としても高い値段だったんですけど、やっぱりこのプリントが気に入ったので仕方ないかなと。

今野:このタイプのインディアンプリントってなかなかないよね?

栗原:はい。インディアンプリントってリアルな絵柄が多いじゃないですか。だから結構珍しいとは思いますけど。

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阿部:フットボールTって今だと逆に新鮮だよね。

栗原:そうですね。日本だと人気もだいぶ落ち着いてるから、値段も比較的買いやすくなってると思うんですけど、アメリカではまだまだ高いので向こうで買うのは結構大変です。

阿部:確かに日本ではだいぶ安くなってきてるけど、アメリカはそんなに高いの?

栗原:高いですね。だから「ベルベルジン」の値段設定はかなり良心的だと思いますよ。あの値段で出せるんですから。

藤原:山田さんもTシャツの値段は安くしてるって言ってた。

栗原:今は無地Tも高いからね、アメリカでは。こないだもダメージのあるちょい古の無地Tを15ドルって言われたから(笑)。

阿部:無地Tでもそんなにするんだね。

今野:最近の新品モノのプリントってかなり技術が高いからパッと見はわからないんだけど、やっぱりこの微妙なプリントの割れ方とかは表現できないんだよね。染み込みはかなり見分けがつかないけど。

栗原:逆にこういったフロッキーとかの風合いの方が難しいのかもしれませんね。

阿部:ちなみにこのベタなアイテムって色々持ってるの?

栗原:昔買ったモノはかなり残ってるんですが、サイズ的にちょっと着れなくなってしまったので、それらが入ったケースは怖くて開けてないです(笑)。

阿部:そんなに太った?

栗原:3年で…まぁ、いいじゃないですか(笑)。昔買ったモノがまた着たいです(笑)。

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栗原:次はウエスタンシャツです。

今野:この年代まで入れますか…。

栗原:グレーの〈ラングラー(Wrangler)〉のことですか? 個人的にはアメリカ製しばりで買っているんですけど、もうこのあたりも立派なヴィンテージですよ(笑)。実際若い子に〈ラングラー〉のウエスタンシャツって人気があって、かなり売れてるんですけど、アメリカでもヴィンテージとして扱われています。

阿部:ウエスタンシャツの良さは何でしょう?

栗原:合わせやすさですかね。ウエスタンシャツってディテールを見ると着づらそうにも見えるんですけど、意外と違和感なく合わせられるんですよね。新品のウエアもそうだし、他のヴィンテージと合わせても着やすいんですよね。しかも今って大きめのトップスが主流になっているじゃないですか。それもあってウエスタンシャツならではの着丈の長さも今だとそんなに気にならないかなと。

阿部:フロントは開けて着るの?閉じて着るの?

栗原:うーん、僕の場合は開けて着ることが多いですね。

今野:この辺りの頃のウエスタンシャツだとロングポイント(襟先の長い形)じゃないから着やすいかもね。

栗原:そうですね。’50年代以前になるといかにもヴィンテージっていう感じのロングポイントカラーになりますからね。〈ラングラー〉に関していうと、’80年代以降のクオリティの変わらなさは凄いと思いますね。

今野:確かに。全然ブレてないよね。

栗原:今のメキシコ製もタグを見ないとわからないですから。

阿部:ウエスタンシャツを集め始めたのは最近?

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栗原:かなり昔に〈Bar C〉のウエスタンシャツを着てましたよ。それこそ20年くらい前、阿部さんに雑誌『Boon』のスナップで声をかけられた時も〈Bar C〉のデニムウエスタンシャツを着てましたよ(笑)。

阿部:懐かしい(笑)。「メトロゴールド(今はなき渋谷の人気ユーズドショップ)」の近くで声をかけた時だね(笑)。

栗原:そうです(笑)。

阿部:ちなみに卸しでもウエスタンシャツは売れてる?

栗原:かなり売れてますね。アメリカ製のデニムウエスタンは色問わず人気があります。昔だったら小さいサイズしか売れませんでしたが、今はサイズ16くらいは普通に売れますし、なんなら17ハーフでも需要があったりします。

阿部:えー。大きく着るのかな?

栗原:そうだと思います。それだけ大きくなると横幅は大きくなっても、長さはあまり変わらなくなるので。ちなみにジージャンもサイズ44、46くらいの大きいものも売れるようになりましたね。今ってトップスを大きめに着るのが流行ってるので、大きいサイズだからと敬遠されることがなくなりましたね。

今野:シャンブレーシャツも同じように大きいサイズが売れるの?

栗原:シャンブレーに関していうと、そもそもまず数が集まらないですね。1年の半分くらいアメリカにいても、’70年代以前、コットン100%のシャンブレーなんて4、5枚も見つからないと思いますよ。もちろんローズボール(フリーマーケット)なんかに行けば見ることはありますが、まぁ高くて買えません。

阿部:そしたら日本の方が買えるかもね。

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栗原:間違いなく「オキドキ」の方がアメリカより安いと思いますよ(笑)。

今野:それにしても凄いね、この〈ラングラー〉の年代もヴィンテージとして扱われているんだもんね。ちなみに素材は気にしてるの?

栗原:個人的にはブルーデニムはやっぱり古いものが好きですね。これはこの年代ならではの色が気に入ってます。

阿部:このグレーは元々の色?

栗原:はい、ブラックとは別です。当時は赤とかもありましたね。最近は古着屋さんだけでなくセレクトショップさんやリメイクブランドさんにも卸しをしていて、以前より幅広いジャンル、年代の古着を見ているので、自分が買う、着る古着に対する感覚も変わったかもしれません。まぁ、良いものに年代は関係ないと言うことで。

阿部:そうやってまたお客さんを増やそうとしてるんじゃないの(笑)?

栗原:うーん、否定はしません(笑)。

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栗原:最後はツナギを。今野さんもツナギを紹介してますが、僕はミリタリー縛りということでジャンルが異なるので、予めご了承ください(笑)。

阿部:ではなぜミリタリー系のツナギを?

栗原:ツナギって古着屋さんでは売れにくい商材だと思うんですけど、個人的には昔から好きなんですよね。カーキが「MIL-S-5390B」で、オリーブが「K-2B」です。何よりツナギってディテールの宝庫ですよね。見てるだけでも面白いです。

阿部:このパンツは何?

栗原:これはこの「K-2B」をパンツにリメイクされたものです。

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藤原:当時誰からリメイクしたのかな?

栗原:いや、これはLAのGYPSY(ジプシー)さんがK-2Bをベースにリメイクして作ったパンツ。

藤原:あ、GYPSYさんが作ってるんだね。これ、よくできてるよね。

阿部:GYPSYさんって?

栗原:LAで古着の卸し、御自身のブランドをされている大先輩です。〈シャナナミル(SHANANA MIL)〉はGYPSYさんのブランドです。

阿部:あ、その方が作ってるんだ。

今野:パンツではなく、ジャケットがあったりもするよね。当時のリメイクなのかはわからないけど。

栗原:ありますね。あと、第二次大戦のHBT(ヘリンボーンツイル)のツナギをコートにリメイクしてるのをたまに見かけます。これは、ただパンツ部分だけをカットしているわけではなく、胸ポケットを移植したり、ヒップポケットを付けたりとかなり手が込んでるんです。

藤原:「こんなパンツがあったら良いな」っていうのを形にした感じだね。

栗原:これはアメリカのフリマでご本人から買わせてもらったんだけど、もしかしたら日本では販売されていないかも。やはりかなり手が込んでいるし、そもそもボディー自体がそこまで数が集まるものでもないので。

今野:この辺のツナギって幾らくらいするの?

栗原:僕の売値だと、1万円台半ばですかね。一般的にはそんなに人気はないかもしれないけど、僕の周りにはツナギ好きな人が結構多くて、玄人受けするアイテムなのかもしれませんね。女性からもリクエストされたりします。

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今野:トップス部分を腰回りに縛ってる着方もいいよね。

阿部:栗君もツナギ着てるの?

栗原:友人が着てるのを見て、自分でも久々に着てみたくなったんですけど、袖まで通して着るのはなかなかハードルが高くて…。ただこのリメイクのパンツをしばらく愛用していたらだいぶ免疫ができてきたので、今後はスーツとして着てみようと思ってます(笑)。

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今野:このサマーフライトの生地っていいよね。ナイロンが入ってるから透湿性も高いんですよね。コットン100%だと汗を吸収してすぐに身体も冷えちゃうじゃないですか。

阿部:なるほど。

栗原:最近は新品屋さんに古着を卸すことも多いので、古着屋さんとはまた違ったセレクトが本当に面白いんですよね。商品セレクトはもちろん、同じアイテムでもサイジングが違ったり、とても新鮮です。このツナギもまさにそんなアイテムの1つですね。

阿部:やっぱり栗君はミリタリーが好きだよね。

栗原:そうですね。そういえば今回もミリタリーに始まり、ミリタリーに終わってますから(笑)。

次のページは、阿部 孝史氏の私物をご紹介します。
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