職人たちのプライドと美意識が
込められたプロダクト。
ブランドディレクターであるサイモン・テイラーが、幼少期に近所に住んでいたおじさんのジャケットからインスピレーションを得てデザイン。キリッと品のあるパターンで、カジュアルアップに一役買ってくれる。
ワイドストレートに仕立てられた2タック入りのボトムス。この色味はもちろん、腰のアジャスターや、ヒップのフラップポケットなど、細かなディテールにデザイナーのこだわりが宿る。
メンズとは対照的に、デコルテのラインが強調されるようなデザインの一着。寒い季節にコートの中にインナーとして着るのもおすすめだ。
裾幅を広くとったバギーシルエットで、ワークアイテムに優雅な女性らしさが上手にブレンドされた一本。メンズとは異なり、ヒップはパッチポケットの仕様になっている。
テーチ木染めと泥染めによって染め上げられたアイテムがこちら。赤褐色のほうはテーチ木染めのみで、チャコールのほうはそこに泥染めをプラスしたもの。親方曰く「この色は化学染料じゃ出せない」とのこと。決して鋭くない柔らかな色彩が、自然の染料を使用して染められたことを思わせます。仕上がりを見た吉田さんもご満悦の様子。
「化学染料で染めたアイテムに比べると、やっぱりものすごく雰囲気がありますよね。こんなことを言ったら元も子もないかもしれませんが、泥染め云々というよりも、単純にこの色を見て『かっこいい』と思ってもらえるアイテムができあがりました。ぼくらも最初にこの色を見て商品をつくりたいと思ったので」
冒頭でも語ったようにこうした取り組みは、伝統を重んじながらも、それを新しい方向へと発展させた親方たちの決断と気概があってこそ成立します。「いろんな発想をすることによって活気が出るから、これからも仕事を続けるためにそれをやっていくしかない」とは親方の言葉。
「大島紬の染め方はもうずっとやっているからわかっているけど、こういったアパレルの商品はどう染めればいいかはじめはわからんかった。だから実験ですよ。いろんなことを試していくうちにやり方がわかってきた。そりゃあ失敗もたくさんありました。でもそこで手を抜いたら終わり。新しいことに挑戦するのはすごくやりがいを感じるし、どういう仕上がりになるのか楽しみでもある。これからもたくさん染めていきたいですね」
「肥後染色」と〈ワーク ノット ワーク〉が手を取り合って完成させたセットアップは、自然を相手に思い通りの美しさが出るようにしっかりと工夫されてできています。それはつまり、親方たちのプライドと美意識が染料を通してきちんと込められているということ。単に服と染料があればできる、ということではありません。どんなものでも簡単に手にはいる時代において、そうしたストーリーを感じられる服を着て街を歩くことこそ、ヒップなスタイルと言えるでしょう。
そして、今回のセットアップは自然の原料で染められているというのも大きなポイントでしょう。エキスを抽出したあとのテーチ木は、その後燃料として使用され、川で洗い流した泥はそのまま自然へと帰っていきます。こうしたナチュラルでサスティナブルなサイクルは、化学汚染や環境問題が叫ばれる現代において必要なシステムだとぼくたちは考えます。自然を利用し、それを文化として発展させ、伝統として継承する。奄美の豊かな自然と泥染めという文化は、この島の大きな財産であり、現代人が見習うべきものづくりのあるべき姿なのだと思います。
吉田さん曰く、両者の取り組みは今後も継続されるとのこと。どんな仕上がりのアイテムになるのか、パワーアップしたこのコラボレートも期待して待つことにしましょう。