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FEATURE
あれから11年。BEAUTIFUL LOSERSがいまに残すもの。
SPECIAL INTERVIEW FOR AARON ROSE

あれから11年。BEAUTIFUL LOSERSがいまに残すもの。

「全てはここから始まった」。これは、当時ニューヨークのロウワーイーストサイドにあった「アレッジドギャラリー(Alleged Gallery)」に所属していたアーティストの一人でもあるバリー・マッギーが語った言葉。名もなきアーティストたちの表現の場であったその場所は1992年に開かれ、2001年に突如閉鎖。しかし後に奇跡のムーブメントと呼ばれた「ビューティフル・ルーザーズ(BEAUTIFUL LOSERS)」という巡回展へと発展した。その後も書籍や映像作品、回顧展として後世に紡がれていった軌跡は、今なお世界各地で確かに残されている。あれから11年が経ち、今だに言語化ができぬまま神格化されていく「ビューティフル・ルーザーズ」という現象。「ビューティフル・ルーザーズ」とは一体何だったのか。その首謀者であり、稀代のキュレーターであるアーロン・ローズの言葉から改めて解き明かしたい。

  • Photo_Shin Hamada
  • Interview & Text_Yuho Nomura
  • Translate_Saya Nomura
  • Edit_Yosuke Ishii

その作品を通して君は何を伝えたいのか。それだけなんだよ。

ーまた「ビューティフル・ルーザーズ」の回顧展はもちろん、2000年には『アンタイトル』という名で日本でエキシビジョンを開いていたよね。その時の共同キュレーターが今は亡き『DUNE』創刊者の林文浩(ハヤシ・フミヒロ)さんだった。彼との深い親交は日本ではあまり知られていないけど、アーロンにとってどんな存在だった?

– 2000 had an exhibition in Japan. Fumihiro Hayashi from Dune magazine was the curator. How did he meet you?

あぁ、チャーリー・ブラウン(*林文浩氏のニックネーム)ね(笑)。もちろんよく知っているよ。彼はぼくと同じ志を持った数少ない親友のひとりだ。常に裏方に徹し、ストリートで芽の出ない新しい才能をサポートし続けていた。彼は日本で『DUNE』という雑誌の編集長も務めていて、当時もいまもあれほどファッションと写真の関係性を理解し、決して陽の目を浴びることのなかったグラフティカルチャーを取り上げた媒体はなかったと思う。

Charlie Brown!! I know him well. He’s one of my friends that have the same goals. He supports everyone, but behind the scenes. He is also the Editor in Chief for Dune. There wasn’t any magazines like that back in the day that supported graffiti.

ーそして同様に、今回のイベントのトークショーでも共演した野村訓市さんとも深い交流があるよね。彼とはどんな出会いや関わりがあって、今回のような取り組みが実現したのかな?

– There was a talk at the exhibition with a guest called Kunichi Nomura. How did this happen? How did you meet him?

2008年に「ビューティフル・ルーザーズ」の巡回展を原宿のラフォーレで開催したんだけど、クン(*野村訓市氏のニックネーム)とはその時にはじめて出会ったんだ。クンはその時の東京でのキュレーションやぼくらのアテンドを務めるプロデューサーとして働いてくれたんだ。会って少し話したら共通の友人が沢山いてね、すぐに打ち解けたよ。彼はとてもクレバーで、感覚もぼくとすごく似ていたんだ。

I met Kun in 2008 at the Beautiful Losers exhibition. He did a creation and was a general producer. We have so many mutual friends and tastes so we became friends. He’s clever and has the same taste as me.

ーそして〈ルーカ(RVCA)〉サポートのもと、「アレッジドギャラリー」の後継的な存在でもある“アーティスト ネットワーク プログラム”でのクリエイション、しいてはその活動の発端や〈ルーカ〉とアーロンの関係性についても教えてもらえるかな。

– Artist Network program is supported by RVCA. How did it start?

「アレッジドギャラリー」が閉館して、一旦ロサンゼルスに戻った時に〈ルーカ〉の創設者であるパット・テノールから『ANP Quarterly』というアートマガジンを作らないかと声をかけてもらったんだ。かつての仲間であるエド・テンプルトンやブレンダン・ファウラーたちと一緒に12年続けているよ。そこでも『DUNE』のチャーリーへの追悼企画をやったり、様々なアーティストを紹介してきた。ちなみに〈ルーカ〉から、その内容について一度も訂正を入れられたことはないんだ。アーティストファーストという概念とぼくらへの信頼を持っている証拠だよね。

After the gallery closed. I went back to LA. I met RVCA’s founder and they asked me to make the art magazine called ANP Quarterly. I’ve been doing that for 12 years now. I also made an RIP issue for Charlie. They never tell me what to do, but have been very supportive.

ー理想的な関係性だね。「ビューティフル・ルーザーズ」から11年が経ち、様々な活動を行なっているアーロンのピュアなクリエイションは、いまどこに注がれているの?

– 11 years passed since Beautiful Losers. What’s next for you?

いまはソフィア・コッポラやマイク・ミルズ、ウェス・アンダーソンなどがいる「ディレクターズ・ビューロー」という会社で映画の制作を行なっているんだ。それがぼくのいまのクリエイションの主軸と言っていいだろうね。

I’m in a production called Directors Bureau. I’m making films with Sophia Coppola, Mike Mills, and Wes Anderson.

ーいまだに「ビューティフル・ルーザーズ」を超えるストリートアートのムーブメントは存在していないからこそ、多くの人々がいまなお「ビューティフル・ルーザーズ」に影響を受け続けている気がする。この現象は今後もアーロンの意思とともにアップデートされ、続いていくのかな? それとも違った展望があったりするの?

– There’s no such a big movement after BEAUTIFUL LOSERS . Beautiful Losers is still huge now. How long do you think it will last?

いまはInstagramなどのSNSが発達し、失敗が起こりにくい環境だと思っているんだ。そうした世界からはあの時のようなムーブメントはきっと起こることはない。もし起こることがあれば、インターネットから遠い世界、どこか辺鄙な国の島国とかでならありえるかもしれないし、その場所にしかないカルチャーやコミュニティが見つかるかもしれないね。あるいはもっと新しいアイデアを持って、唯一無二なオリジナリティを持った若い子がもしいたら、その概念からぼくを引きずり出してほしいね。

I think the next big movement will come from a small island with no internet. Because they have a strong culture and community. Or young people who have originality. I’m looking for them now.

ー「ビューティフル・ルーザーズ」の仲間たちだけではなく、若い才能が育まれていくことも期待していると。

– So you’re excited about young people who have talent?

もちろん、常に若い才能を探しているよ。ナイトクラブではいつもぼくが最年長なんだから(笑)。それにいまアメリカの高校のアートクラスでは、「ビューティフル・ルーザーズ」のDVDが教材になっているんだ。あの頃のぼくらの活動を収めたドキュメンタリーの映像を、いまの若い世代のユースが観て学んでいるというのは、幸せなことさ。

Of course. I’m the oldest person in the nightclub. In art classes in high school they play Beautiful Losers during class. I’m honored.

ーそれは知らなかった。素敵な話だね。では最後に、アーロンにとってのアートとは一体なんなのか。その答えをこれまでの半生を振り返りつつ、アーロンが愛したストリートアートのシーンに思いを馳せる多くのファンへのメッセージとあわせて教えてもらえるかな?

– That’s great! For the last question, what does art mean to you? And please give your fans a message.

もしこれからなにかを表現をしたいと思うユースがいて、アーティストになりたいと思うなら確固たる使命感が必要だ。映画や音楽はサンプリングなどから生まれていくこともあるけど、ペイントやグラフィティなどのストリートアートはそうじゃない。その作品を通して君は何を伝えたいのか。それだけなんだよ。ぼくにとってのアート、という答えにもなっているよね?(笑)

If you want to make art to explain something you need strong responsibilities. Think about what story you want to tell with the art. That’s the answer!

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