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スケーター上野伸平がコンバース スケートボーディングと向かう場所。
Shinpei Ueno Talks about Skateboarding.

スケーター上野伸平がコンバース スケートボーディングと向かう場所。

スケートボードシーンが盛り上がっている。もちろん最大の理由は東京オリンピック。でも、その盛り上がりによってストリートが侵食されつつあるのは由々しき問題である。競技とストリート。オーバーグラウンドとアンダーグラウンド。その両方を冷静に見つめるスケーター、上野伸平が語る最近のスケートボードと〈コンバース スケートボーディング(CONVERSE SKATEBOARDING)〉のこと。

  • Photo_Marimo Ohyama
  • Text_Ryosuke Numano

作らなきゃいけないみたいな強迫観念とかはなくて、
オーリーでこれ飛んだら次はこれを飛ぶみたいな感覚で服を作っていた。

ー 伸平君はつい最近大阪から東京に引っ越してきましたけど、環境の変化は?

大阪でやってたことも東京でやってることも、ものづくりっていう意味では一緒だから環境はほとんど変わらないし、拠点を移したところでずっと一緒にやっていた面子と再合流しただけだから。かっちゃん(南勝巳/Evisen Skateboards代表)がデスクの前にいるとか、濱ちゃん(Evisenデザイナー)やローレンス(Evisen Skateboardsライダー)が近くにいるっていうのはすごく良く変わった点ですね。『TIGHTBOOTH』、『Evisen』、『QUCON』、すべてがスムースに動けるからそういった意味では最高の変化です。

ー スケートの環境的にはどうですか?

スケートに関しては良くないですね。大阪のストリートは本当に最高なので。一番滑りやすいのは神戸で、阪神大震災があった影響で街全体が綺麗になった。繁華街も夜は人がいなくなって、住居も少ないから無法地帯。大阪はそれなりに人が多いから神戸ほどではないけど、東京に比べたらはるかに滑りやすい。かっちゃんにも『スケボーしにくくなるからそれは覚悟した方がいいね』と言われたし(笑)。実はちょっとした時間にさくっと滑るっていうのが大事で、東京にはさくっと滑れる場所が意外と少ない。本気で撮影するスポットだったら東京にもたくさんあるけど、仕事していたらそういうスポットばかりで滑ってもいられないじゃないですか。いつ滑りに行っても怒られないローカルスポットは東京にはないですね。まあスポットへの理想も高いんですが(笑)

ー 『TIGHTBOOTH』では現在どういう動きをしているんですか?

今、6年くらいかけてスケートビデオの『LENZ Ⅲ』を作ってるんですよ。『LENZ』、『LENZ Ⅱ』の続編。あとは年に二回のアパレルコレクションに加えて、スポット的なコラボレーションをずっとやっている感じですね。

ー 実は『TIGHTBOOTH』ってかなり前からアパレルを作っているじゃないですか。最初は小さなところから始まったと思うんですけど、かれこれ15年くらいですか?

最初なんてかなり可愛いですよ。実家の6畳の部屋で作業しながら家の電話の子機で営業してましたからね。オーダーはリビングの親機にFAXで来るんですよ(笑)。最初は金もないから手刷りでプリントしたTシャツをスケートショップに卸していて、ビーニーとかも作り方なんて知らないからホームセンターで買ったものにシルクスクリーンしたり。徐々に先輩から業者を教えてもらったり、自分からディグって作れるものが増えて今に至る感じです。アパレルがスタートしたのは2005年で、ちゃんとオリジナルで型から作ったのが2011年くらいですね。作らなきゃいけないみたいな強迫観念とかはなくて、オーリーでこれ飛んだら次はこれを飛ぶみたいな感覚で服を作ってました。ものづくりとしてアパレルはスケートボードに似てると思うんですよ。だからずっと続けられていて。自分を体現するツールだから常に自分が着たいものを作るし、どんどんレベルを上げていきたい。そうするとどんどんスキルが上がっていくんですよスケートみたいに。今『TIGHTBOOTH』は僕がやりたいことを素直にやっていて、パンツだったら最近はものすごい太いものばかり出しているんだけど、昔は営業からそういうのは売れないからやめてくれと言われたりしていた。でもある時に自分が好きなものを売れる売れない関係なしに作りたいって思って、すごいデカいバギーパンツとか袖が長いトップスを作ったらすごい評価が高くて。自分に素直に作ったものをお客さんがいいって思ってくれるようになったんです。でもそれはSNSで発信しやすくなったおかげでもある。今のお客さんってすごいシビアでちゃんと見てるんですよ。『ストーリーで着ていたやつはいつ出るものですか? サイズは何ですか?』とかDMで聞いてくるんですよ。それが無地のカットソーであっても。昔だったらスケートして映像に残しても人の目に届くのは数年後になる。自分の見せたいものをリアルタイムに見せれる時代になってきたんだなと思います。

ー そうした時代の変化とともに、自身のファッション観も変化してます?

スケーターとしてあるべき姿に戻ってきてるんですよ。自分はスケートボードで大事にしているのがオリジナリティ。トリックもそうだし、どんなスポットでやるか、どんなファッションでやるか、どんなBGMを使うか、ここからそこまで何回プッシュするかとか、スケートの神にすべてのビジュアルを試されているというか(笑)。自分はそういうところにこだわるスケーターが好きなんです。すべてにおいて得点が高いスケーターが好きというか。もちろんその得点の基準は人それぞれだから、自分の感覚が一番だとは思ってないんだけど、自分が満足出来るものを追っかけている。だからスケーターとしては常に新しくいたいし変わっていきたいですね。シャツのなびき方が面白いとか、風が吹いた時にパンツに差している手ぬぐいが立体的に見えるとか、ファッションは映像の演出になっていて。自分が好きだったスケーターを映像で見るとそういう要素がある。これはデニムが限りになく薄いストレッチだからこのたゆたゆ感が出ているんだなとか。昔だと分からないから同じようなデニムを買ってもヘビーオンスでパリパリだったりする。『なんでこれ違うんかな? 俺スケボー下手やわ』って感じになるんですけど、今見るとすべてが紐解ける。ファッションもスケボーも一緒で、自分が理想とする形を追い求めているんですよね。

ー そこまでファッションのことをしっかり考えているスケーターってそんなにいない気もします。

スケートボードのどういうところが好きなのかによって考え方や体現の仕方が変わってくるんだと思います。体現の仕方にもたくさんあって、親友の丸山晋太郎(Evisen Skateboardsライダー)はワークパンツにTシャツだけでカッコいい。そこには彼のスケートに対する考え方や向き合い方、歴史が凝縮されてるんですよ。だから僕は彼を見てすごくお洒落なスケートボーダーだと感じます。スケーターには多様性が必要だと思っていて、ある時スケーターの格好がみんな似ているって思ったんですよ。僕の中でスケーターは本来ものすごいファッションに敏感だと思うんですよ。だけどスケートがメジャー化していくにつれてファッションとかけ離れていくような気がしていて、このままだと良くないからもう一度ファッション的な要素を取り戻そうっていう意識が僕の中にあるのかもしれないです。スケートを始めた頃の先輩ってみんなすごくカッコよくて、今では定番になったけど靴紐をベルトにしてるとか、でかいTシャツの下に1センチはみ出るようによりでかいTシャツを重ね着したりとか、帽子のかぶり方ひとつにしてもエッジがあったんです。そういうのを見ていてスケーターに憧れたんですよね。ファッションなんか気にしないでリアルスケートだろ! っていう根性論みたいなものをたまに聞きますけど、僕からしたらそれだとユニフォーム着てスポーツするのと変わらないと思ってしまいます。

ー ファッションを取り戻すっていうのは今の伸平君の全体的な動き方に繋がってくるのかなと感じます。『QUCON』で『FRAGMENT』とコラボしたり、これから控えているコラボもその流れの中にある。

たまにコートとかを着てスケボーするんですが、自然と大人になったからっていうのもあるけど、スケートしやすいことにフォーカスばかりしていたら自分の根本原理からそれちゃうんですよ。橋本瞬っていうスケーターがいて、すごい高さからドロップしてめちゃめちゃ危ないダウンヒルをボムする撮影があったんですが、そいつは短パンとTシャツで挑むんですよ。コケたらもう想像しただけでも恐ろしいレベルのスポットに短パンで挑んで、さらにベルトのループに鍵がジャラジャラついていて。邪魔だし危ないから取れば?って言ったら『いや、こんくらいのスポットでいちいち取らないっしょ』って、めっちゃイキがったんですよ(笑)。でもカッケー!ってなりましたね。本人はかなりビビってたと思いますけど、あえてその状況でその状態で挑むっていうスタイルがあって、コート着て滑るのもそれの一種でもあるし、いちいち真面目にやってられるかっていう格好の付け方の話ですね。それがファッションとの共通点でもあると思います。

INFORMATION

コンバースインフォメーションセンター

電話:0120-819-217
converseskateboarding.jp

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