CLOSE
FEATURE
知っているようで知らなかった焼き物の世界。マルヒロが見据える波佐見焼のこれから。
MADE IN HASAMI with PRIDE

知っているようで知らなかった焼き物の世界。マルヒロが見据える波佐見焼のこれから。

波佐見焼と聞いて一般的な和食器を思い浮かべる人も多いはず。でも、伝統は受け継がれ革新していくもの。想像してみてください、スニーカーの形をしたものや、ビールの瓶を象ったもの、はたまた伝統の形に現代的なアーティストがペイントした波佐見焼があるとすれば、より身近で親しみやすいものになると思いませんか? それを実現しているのが長崎県の波佐見町で商社として企画をおこなう「マルヒロ」。代表の馬場匡平さんは「波佐見焼の裾野を広げたい」と語ります。とはいえ、そうしたアイテムの数々は多くの職人の手を介して丁寧につくられています。波佐見焼は一日にして成らず。その生産工程を追いかけながら、波佐見焼の中に宿る秘めたる魅力を発掘していきましょう。

  • Photo_Fumihiko Ikemoto
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Yosuke Ishii

大衆の食卓を支えた波佐見焼の過去といま。

見晴らしのいい抜けのある山の景色が美しい波佐見町。空気も澄んでいて清々しい気持ちになる。

長崎県の波佐見町は、海に面した長崎の中で唯一の内陸の町です。長崎空港からはクルマで40分ちょっとの距離。窓の向こうにはのどかな景色が広がり、遠くのほうを眺めるとギザギザとした山の稜線が空と地上の境界線を描いています。

取材途中で訪れた中尾郷では、波佐見の焼き物がタイルとして使われていたり、
大きな焼き物が写真のように堂々と鎮座している。

この波佐見町でつくられる焼き物が、その名の通り波佐見焼です。九州地方といえば豪華な装飾や絵付けで知られる有田や伊万里焼も有名なのですが、どちらかといえば波佐見焼はもっと庶民派。食器類を中心に人々の暮らしを支える日用品として親しまれています。

歴史の話をすると、少なくとも約400年ほど前からつくられていたことが分かっています。九州では焼き物の原材料となる陶石や土が採れ、一方では中国大陸や朝鮮半島からさまざまな技術やアイデアが持ち込まれたりと、地の利を活かしながら文化として成熟遂げていったのもひとつの特徴です。

波佐見町には波佐見焼の資料館もあって、そこでは詳しい歴史を教えてくれる。出土品も多数展示。

日用品としての焼き物生産がスタートしたのは1690年代ころのことでした。それ以前は内乱中のヨーロッパへの輸出が生産者たちの大きな収入源だったのが、紛争がおさまったことで中国国内での生産も活発になって輸出量が減っていきました。それによって日本国内に向けて安価な日用食器を大量に生産し、全国へ輸出していったのです。

その時代に生まれた焼き物は「くらわんか碗」と呼ばれています。というのも、当時大阪の淀川まで行き来する連絡船があり、その乗客に「酒くらわんか」「飯くらわんか」と近づく茶船の存在もありました。そこで使われていた食器の多くが波佐見焼なのです。それ以外にももちろん、全国津々浦々、至るところで波佐見焼の食器が使われるようになり、日本の食卓を彩ってきました。

モダンな空間に悠々と陳列された「マルヒロ」の波佐見焼の数々。
朝から夕方までひっきりなしにお客さんが訪れ、中にはコレクターのような人もいた。

話を現代に戻しましょう。写真に映っているのは、波佐見町で商社として商いをする「マルヒロ」のショップ。ここでは自分たちのオリジナルブランドによる波佐見焼を企画・販売したり、さまざまなショップへ卸したりしています。伝統的な和食器だけではなくて、モダンなデザインのものや、一方ではさまざまなブランドとコラボレートしたアートピースの制作もおこなっているのも「マルヒロ」の魅力です。これまで制作したアートピースのアーカイブはこちらでご覧いただけます。

馬場さんは「マルヒロ」の3代目。日々職人たちの工場を行ったり来たりしているそう。

こちらが代表の馬場匡平さん。常にファンキーで親しみやすいムードをつくる、気配り上手の優しい人物です。馬場さん曰く「波佐見焼の特徴は分業で生産がおこなわれているところにあるんです」とのこと。波佐見焼はまずはじめに原型となる型がつくられ、そこに生地を陶土を流しこみ、できあがった生地は窯元で素焼きしたあとに絵付けをしたり釉薬をかけて色付けしていきます。そしてまた最後に焼き上げる。その行程はそれぞれ別々の場所でおこなわれ、行程ごとに専門の職人たちが汗を流しながら培ってきた技術を注ぎ込んでいるのです。

今回は型づくり、生地づくり、釉薬づくり、そして窯元での絵付けや焼き上げの行程を馬場さんに案内してもらいました。そこには驚くほど緻密でアナログな世界が広がっていました。

INFORMATION

有限会社マルヒロ

TEL:0955-42-2777
FAX:0955-42-2737
store.hasamiyaki.jp