変わらないんだったら、その本質をとことん追求するしかない。
ー 〈ミハラヤスヒロ〉の服を韓国や中国のアーティストたちが着ていると思うんですが、ファッションでもそうしたアジア圏の国々の勢いを感じることはありますか?
三原:韓国とか中国の若い子たちは他の国の文化に興味があるんだよね。だからぼくの服を着たいっていうよりも、いろんな国の服を知りたいという理由で着てくれている。そこらへんはすごく冷静に捉えていて、自分のブランドはトレンドとは別のところにあると思ってるかな。
KEN ISHII:日本って世界的なトレンドをつくるのはあまり得意じゃないのかもしれないよね。その代わり、ワンアンドオンリーの強い個性とか職人的な人たちがいっぱいいる。それが俺らの強みなんじゃないかな。シーンそのものというよりも、その中にいる個性に惹かれている人たちがいっぱいいるんだと思う。
三原:たしかにそう言われると、うちのブランドは他と比較されたりしてないな。
KEN ISHII:要するに自分のスタイルがあるってことだよね。いい意味でメインストリームから外れたところにいるというか。
三原:それは自分でも意識してるんだけど、メイン街道にい続けるって体力的にもきついし、正直面白いことはできないんだよね。トレンドとかファッションビジネスの中心にい続けると、どんどん惰性になっていって長続きしないと思う。
KEN ISHII:やっぱり、なにをつくるにしても、なぜそれをやったのか? というのが重要で。ただ継続させるためにとかじゃなくて、好きで楽しいとか、やる意味が必要だよね。つくりたいものをつくるなら、絶対に楽しくやったほうがいいじゃん。
三原:そうだね。でも、本当にぼくは運がよかったと思う。勝手にやってても「三原ならしょうがないか」って言われるようなタイプだから。変わったクリエーションをして、プッと笑われるくらいがちょうどいい(笑)。
KEN ISHII:それぐらいがいいよ。
三原:本当にここ最近になって自分でも区切りがついたというのはある。いままでは時代の流れと共に変化する自分を大事にしてきたこともあったんだけど、結局のところ自分の本質は変わらないんだよね。自分でもやばいんじゃないかって思うほど変わってない。ある意味では諦めの境地なんだよ、いまって。変わらないんだったら、変わらないことをとことんやるしかないって。さっきのオウテカの話じゃないけど、独自の路線をいって生き残るというかさ。
KEN ISHII:俺がJ-POPをやる気がないのと同じだよ。アーティストはみんなやりたいことがはっきりしていて、それをやりたいから音楽をはじめたわけで。過去にたくさんJ-POPのオファーきたけど、やりたくないからやらなかった。
三原:リミックスはやったことあるの?
KEN ISHII:あぁ、それはあるね。『ホワイトアウト』っていう映画で使われた曲のリミックス。これは自分のやりたいことができたからよかった。映画ではインストバージョンが使われてるんだけど。
三原:歌入りでインナー・シティと一緒にやってたよね? ケンケンって歌モノつくれるんだって、そのとき思ったよ。
KEN ISHII:トラックだけ俺がつくって、歌のほうはインナー・シティに振ったんだよね。
三原:それってデータのやり取りなの?
KEN ISHII:ほとんどそうだね。でも、やっぱり原始的なつくり方のほうが楽しい。ついこの前もスペインに行って、クリスチャン・ヴァレラとずっと一緒にいたんだけど、スタジオで小さな機材ならべながら一緒に曲をつくって録音したんだよね。
三原:ぼくはむかし一度、サワサキ(ヨシヒロ)さんと一緒にトラックをつくったことある。
KEN ISHII:服や靴もコラボレートするときに「いいね、いいね」なんて言いながらつくるの?
三原:コラボレーションは思いつきがほとんどだよね。即興でやるのって結構大事で、そのときのノリで生まれたものがよかったりするじゃん。デスクの上で一緒に「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」みたいに話し合いながらやってる。一度持ち帰ってゆっくり考えたからといって、いいものが生まれるわけじゃないんだよね。
KEN ISHII:じゃあ音楽と一緒だね。
三原:そういう即興って、売れようとか、トレンドとかは抜きにした純粋なものがあるじゃん。
KEN ISHII:うん、音楽をつくるときもちょっとツマミをいじって、「こっちのほうがいいね」なんてやってるもん。