CLOSE
FEATURE
ルメールの二人が迫る、服づくりの核心。
Interview with Christophe Lemaire & Sarah-Linh Tran

ルメールの二人が迫る、服づくりの核心。

〈ラコステ〉に続いて〈エルメス〉のアーティスティックディレクターを見事務め上げたクリストフ・ルメール。その評価はうなぎ上りで日本でも広く知られることになった。自らの名を冠した〈ルメール(LEMAIRE)〉とは一体、どんなブランドなのか。『フイナム』のラブコールに応えて11月、クリストフは慌ただしいスケジュールの合間を縫ってパートナーのサラ リン・トランとともに取材に応じてくれた。日本の媒体への登場は数年ぶりとなる。

  • Photo_Takuroh Toyama
  • Text_Kei Takegawa
  • Edit_Ryo Muramatsu

湯豆腐のような服をつくりたいんです。

ー クリストフさんはいまだ3つの候補に未練があるようですが(笑)、それはともかく、そこからはクリストフさんがつくりたいものがくっきりと浮かび上がってきます。誤解を恐れずにいえば、ノームコアに近い。ただ、近いんですが、仕上がってみればまるで別物なんですよね。これが不思議なところです。

クリストフ:ノームコアは精製されすぎている。いってみれば、無味無臭です。一方、〈ルメール〉は人間というものを服づくりに込めたいと思っています。上質な素材、体の動きを踏まえたパターン、着まわししやすい色使い。このブランドについてまわるそれらフレーズはアウトプットされたものにすぎません。人には秘めた美しさ、というものがある。私はかねてからその美しさを追い求めてきました。

いまのファッションは誇張がすぎる。SNSの世界では盛り上がるかも知れないけれど、いざ着るとなるとどうでしょう。服はその人を構成するひとつであり、その人に溶け込まなければなりません。

サラ リン:世の中にはいまだ階級というものが厳然としてあり、その階級をあらわす服があることも知っています。私たちは、そういうものも取っ払って、人間の内面に迫りたいんです。

自分たちの服を表現するならfade(味気ない、という意)という言葉がしっくりくる。そうね、例を挙げるなら古ぼけた本屋で何十年も放置されて日焼けした背表紙のようなもの。あの色合い、たまらないわ。昔の日本家屋にもfadeは感じられる。日本といえば湯豆腐が好きなんだけど(笑)、滑らかな喉越しを生かしつつ、適度に温めるってとっても難しい。美味しい湯豆腐もまさにfadeね(上述したように、辞書を引けば味気ない、と説明されるが、彼らのニュアンスはちょっと違う。日本の言葉でいうと、枯れる、に近いかも知れない。その言葉には文字どおり枯れた、という意味に加えて、人物や技術が練れて深みを増すこと、という意味もある)。

クリストフ:今シーズン(2020年春夏メンズコレクション)の新作でいえばコート(ルック32)ですね。これはモーブ(薄い青といわれる野草)をイメージして、洗って少し色を落としている。野草の色合いがよく出ていると思いませんか?

INFORMATION

エドストローム オフィス

電話:03-6427-5901
www.lemaire.fr

このエントリーをはてなブックマークに追加