それを見る人が物語を連想できるようにすることが大事。
ー 今シーズンもルックの撮影のディレクションをされたと聞きました。具体的にどんなことをされたのか教えてください。



サイモン:ロケハン、モデル選び、ライティング指示、スタイリングを手がけました。私は「トマト」で映像作家として活動しているので、そのすべてを注ぎ込みました。
ー 撮影現場のムードはどんな感じでしたか?
サイモン:いつも支えてくれるスタッフがいたから、意思の疎通がしやすかったですね。これは8年もブランドを続けてきたからこそ結成できたチームだと思っています。ひとりだけライティングのスタッフが今回はじめてぼくらの現場に入ってくれたのですが、お互いいい部分を出せるように彼とじっくり話し合いもしました。誰が主役になるでもなく、全員がコラボレーションという意識を持つことで素晴らしい作品をつくることができたと思います。

ー サイモンさんがそうした撮影をディレクションする際に大事にしていることはどんなことなんでしょうか?
サイモン:ストーリーです。空間演出、モデルの表情、小道具など、さまざまな要素から、見る人が物語を連想できるようにすることを一番大事にしています。
ー 今回の撮影において、とくにこだわったのはどんなことでしょうか?
サイモン:ライティングですね。今シーズンのテーマである「サンライズ」を表現するために、日の出のような光を演出することは必要不可欠でした。そのためにとても高価なライトを手に入れたんです。それを使ってさまざまな実験を重ね、表情豊かな「サンライズ」を表現することができました。
あとはモデルのキャラクター設定もそうですね。私はフィルムメーカーとしても活動しているので、そうしたことは得意なんです。モデルには「夢見心地のような感じで」とか、「明るい未来を創造して」など、いろんなことを現場で叫びながら伝えました。
朝の匂い、眩しさ、音といった空気感や、「サンライズ」に直結するポジティブなエネルギーをルックから感じ取ってくれたらうれしいですね。
WORK NOT WORK / 2020SS COLLECTION
サイモンがディレクションを手がけた〈ワーク ノット ワーク〉2020SSシーズンのルック。
着る人が自分自身のアイデンティティを獲得する服をつくりたい。
ー 「8年もブランドを続けてきた」という言葉がありましたが、その中でさまざまな変化や成長があったと思います。サイモンさんは現在の〈ワーク ノット ワーク〉をどのようなブランドとして捉えているのでしょうか?
サイモン:さまざまな感情や想いがこれまでに交錯してきましたが、設立当時から私たちのコアは変化していません。一方で、我々が積み上げてきた知識や経験がレイヤーのように重なりあってきたという実感はあります。そうした歴史を重んじながら、もっとよりよい方向へ導いていきたいですね。

ー 最後に今後の目標やビジョンについて教えてください。
サイモン:先ほども話したように、私たちは「自由な精神」のもとに、フレキシブルにものづくりをしています。それはつまりいろいろな冒険に挑戦できるということです。そうした気持ちをもちながら服をつくっていますが、ファッションというよりも、お客さんが自分を定義できる服をつくりたい。つまり、着る人が自分自身のアイデンティティを獲得するような、そんな服をデザインしていきたいですね。