証言3窪塚洋介 a.k.a 卍LINE
(俳優、レゲエDJ)

「DELIくんが出馬すると聞いて、“これは応援しなきゃな”って」
ー 窪塚さんは20代の頃から、NITROWを着て雑誌に出られている姿を時々お見かけしていましたが、その頃にはNITROのメンバーとすでに交流があったんでしょうか?
窪塚洋介(以下窪塚):そうですね。はっきりとは覚えてないんですけど2000年代のはじめくらい、俺が裏原とかHARLEMに通ってた頃に、よく遊んでた先輩の店とか事務所、家に行ったりしてたんですよ。そこに彼らがいることがあって、「俺NITROのDABOって言うんだ」とかって感じで、ひとりずつバラバラに会って行きましたね。確か俺は21、22歳くらいで、世に知られ始めたタイミングだったと思います。俺からすると彼らは先輩で、彼らからすると先輩の後輩みたいな感じだったと思うから、ちょっとやりにくかったんじゃないかな?(笑)
ー ミュージシャンとしての活動もその頃から認識されていたんですか?
窪塚:はい。それまで、雷(家族)とかはいたけど、マイクを回すラップグループっていうのに決して見慣れていたわけじゃなかったから、ステージでそれを観たときにはやっぱり迫力を感じましたね。インパクトもあったし、纏ってる空気もみんな個性的で。その後に彼らがNIKEとコラボしたりするんですけど、その前にはもうNITROWがあって、キレキレのデザインを毎回ブッ込んでるのを見て「かっこいいな」と思いつつ、着るきっかけがなくてSUPREMEとか(5O)DUPPIESとかMASTER PIECEとかを着てたんですよ。でも、あるときEIGHTくん(NITROW・NITRAIDのグラフィックを手掛けていたアーティスト)から「事務所、遊びに来てよ」って誘ってもらって、当時千駄ヶ谷にあった彼らの事務所へ行ったんです。それが初めてひとりでガッツリNITROのところに遊びに行ったタイミングで、和気あいあいと話してTシャツをもらってから、雑誌なんかに出るときも結構着るようになったんです。その服は未だに持ってますね。
ー NITROや各メンバーとのエピソードで、印象深いものはありますか?
窪塚:強く残ってるのは、DELIくんの(松戸市議選)出馬ですね。
ー それはご本人の口から知らされたんですか?
窪塚:そうです。DELIくんから「力、貸してくんねぇかな?」みたいな感じで連絡が来て。最初は「え!?」と思ったんですけど、当時は3.11の後で、「俺らがマジでやんなきゃヤバいんじゃねぇの?」みたいな話があちこちでされてた中で、それが熟成して発酵したらDELIくんが出てきた、みたいな感覚だったから、「これは応援しなきゃな」って気持ちになりました。ラッパーが政治に参画するなんて、本当に漫画とか映画みたいな話だなと思いながら、DELIくんはそれを現実にしてしまったし、それ以上に継続していくことは大変だろうけど誠意を持って自分自身と向き合ってきた結果、ちゃんと今でも続いてる。すごいなと驚かされます。
ー 音楽でもストリートでもない場所で、彼らのエネルギーが発揮されたひとつの例ですよね。
窪塚:3.11のときにも思ったんですけど、あのタイミングで1番最初に動いたのって、僕が知る限りでは不良だったんですよ。人を助けたり、救援物資を届けに行くっていうことをやったのが。物資を持って行ったのに物を盗りにきたと思われて「帰れ!」なんて言われたりしながらも、最後はちゃんと信頼されたとか、被災地の人たちに感謝されたとかっていう話を見たり聞いたりしていて。自分でレゲエを始めたときも、イカツい顔したサウンドマンが「友達裏切らねぇヤツ、どんだけいるんだ!?」とか、「母ちゃん大事にしてるってヤツ、これ聴いとけ!」とかって言ってたのがすごく衝撃的だったんです。不良だから悪いことを歌うっていうのは当たり前……って言ったらアレだけど、不良が大切なこと、優しいことを彼らのやり方で伝えてるのがかっこいいと思うんですよ。それの最たる例で、一番研ぎ澄まされたところにあるのがDELIくんの活動だと思ってます。“ストリートで変える”じゃなくて、“ストリートから向こう側に出て行って、物事を変えていく”っていうのを体現して、若いヤツらにも上の世代にもそれを見せて納得させてる。可能性をすごく感じるし、ああやって腹をくくって矢面に立ってやれる強さに惹かれますね。
ー あれだけトガった人たちの中から生まれた活動ですから、インパクトもひとしおでしたよね。
窪塚:ただただ、すごいと思います。外見が中身の外側だとするなら、あれだけ見栄えの違う8人が音楽、ラップっていうものでひとつになれて、自分のことを認めさせて、お互いのことも認め合えてるっていうのは、本当にすごく大きな愛だと思います。これからも大人のマイク回しとラップをし続けてくれるんだろうなって、楽しみにしています。