リーボック側の意見を鵜呑みにしたらぼくがやる意味がなくなる。

改めて、デザインの作業はどんなことからスタートしていったんですか?

絵型を描いたんですけど、それでも通常のプロセスとは異なるやりとりがあって。コーポーレートカラーとか、シーズンカラーをいただくんですけど、ぼくは勝手に原色が強いだけって思ってたけどそうじゃなかったし、シーズンカラーも相当数あったし、2020年のインラインのプロダクトも見ておかないとダメだしで、なかなかスタート地点に立てなかったなぁ。

型数も決まってたんですか?

今回シューズも含めて26型あったんですが、それはなんとなくで具体的な数字は決まってませんでした。


今回はファッションブランドではなく、スポーツブランドのデザインですよね。そういった難しさもあったんですか?

カテゴライズとしては“スポーツカジュアル”っていうことにしてもらっています。スポーツウェアって括ってしまうと自分の範囲外でもあったのと、また競技やフィールドによってつくるものが変わってきてしまうので。だからアーバンライフに合わせてデザインしました。

お話を聞いていると、デザインのプロセスの中で困難もたくさんあったかと思うんですが、いちばん苦労したのはどんなことですか?

リーボック社の方々の信用を得ることですね(笑)。社内でのアプローバルを取っていかないといけなかったので、そのプレゼンが難しかったです。正直プレゼンが苦手で…。モノをつくって見せて、それで判断してもらうことが多かったので。絵型と生地を使って見せていくんですけど、上手くイメージを伝えられず。でも、ウェブ上で拾ってきた画像を使って、「こういう感じです」っていうのもやりたくなかったですし。


それをどうクリアしていったんですか?

先ほど話したぼくを誘ってくれた担当の方のサポートがあってなんとか乗り越えました。その人がいなければきっと頓挫していたと思います。
リーボック側の意見のみだとぼくが参加する意味なんてなくなるし、ぼく自身もこのプロジェクトを通してステップアップしたいという想いがあったので、自分の考え方に対して柔軟さも意識しました。1年間がすごく長かったですね。
経験によってデザインの幅が広がると、ステップアップにつながる。

デザイン面では、手がける上でどんなことを意識しましたか?

うーん、どうだろう。違和感をどこで出そうかっていうのは考えましたね。たとえばジャージのパンツなんかには、ピンタックを入れてるんです。一目見て、なんか普通じゃなさそうだな、みたいなのが分かるといいじゃないですか。

シルエットに大北さんらしさが表れているような気がします。とくにセットアップのトップスは、袖がセットインじゃなくて他ではあまり見られないデザインになっていて、なおかつボリューム感がありますよね。

こういうシルエットは昔から好きで。ショルダーのラインがキレイにでるんですよ。

〈Reebok eightyone〉ジグキネティカ 各¥13,000+TAX

シューズのモデルも大北さんが選んだんですか?

ある程度候補が絞られている中からぼくが選びました。

〈リーボック〉の代表作である「ポンプ フューリー」と、最新モデルの「ジグキネティカ」がラインナップしているところが印象的です。

ぼくは「ジグキネティカ」好きなんですよ。特殊というか、いい意味で変な靴ですよね。こっちのチャコールグレーのほうは全部おなじ色で指定したんですけど素材によって出色が変わって、いい感じにグラデーションが表われました。先ほどの違和感という意味では、あえてミントグリーンをつかいました。これが黒や白だと安定したかっこよさが出ると思うんですけど、あえてこの色で。


珍しい色ですよね。

まえに〈ヴァイナルアーカイブ〉で「デイトナ DMX」を別注したときに、黒ともう一色珍しい色で2色展開したんです。それが海外のお客さんに好評だったみたいで、しかもファッションにこだわりを持っている人が履いてくれていたみたいなんです。それがすごくうれしくて。〈ヴァイナルアーカイブ〉単体で考えるとこういう色は使ってこなかったんですけど、経験によって「こういう色も通用するんだ」と分かると幅が広がるというか、ステップアップに繋がりますよね。