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関西初の直営店「ポータークラシック 京都」ができるまで。
The process of opening "Porter Classic Kyoto".

関西初の直営店
「ポータークラシック 京都」ができるまで。

今年2月に「伊勢丹新宿店メンズ館」内に構えるストアをリニューアルオープンしたばかりの〈ポータークラシック(Porter Classic)〉が、先々月、関西初となる直営店「ポータークラシック 京都」をオープン。2階建ての長屋を一棟まるごと改装したモダンな空間は、居心地がいいだけでなく、自然と気持ちが安らぐ不思議な場所です。では、どのようにして京都店ができたのか。たくさんのお客さんで賑わうオープン当日、代表の吉田玲雄さんにお話を伺いました。

  • Photo_Shinichiro Ariizumi

最近わざわざ行きたいお店が少なくなってきました。EC全盛の今日この頃。たしかに便利だし、衣食住さまざまなものが買えますが、そこには買い物のダイナミズムはありません。あのお店でなければ買えない、検索しても情報が出てこない、週に1日しかオープンしていない、店主に気に入られなければ売ってもらえない、自分だけの一着にカスタムできる、などなど。結局のところ、インターネットに出ていないものが面白かったりすると思うのです。元来、お店での買い物は、自身の気分を高揚させる特別な出来事であったはず。自分だけの“わざわざ”行きたいお店。そんな場所が京都にありました。

フイナムでも何度も紹介している 〈ポータークラシック〉。数々のカバンの名作を世に送り出してきた吉田克幸さんと映画『ホノカアボーイ』の原作を手がけた吉田玲雄さんの親子2人で2007年に設立。“世界基準のスタンダード”をコンセプトに掲げ、日本の伝統文化や高い職人技術に敬意を表し、あらゆる時代の芸術文化を取り込みながら、“メイド・イン・ジャパン”にこだわったものづくりを続けています。

そして、この度オープンした「ポータークラシック 京都」は、2階建ての長屋を一棟まるごと改装した造りで、街中を通りがかる人がふと足を止めてしまうようなファサードと、落ち着いた品のある黒の外装が目印。一階では、2020年春夏シーズンの新作アイテムはもちろん、同ブランドを代表する“PC KENDO”や“PC SASHIKO”、「昭和西川」の“muatsu(ムアツ)”をストラップに採用した“NEWTON BAG”シリーズがフルラインアップ。

一階の店内を奥に進むと、風情のある中庭が併設され、買い物の合間にゆっくりと寛ぐことができます。シルクスクリーンをはじめとしたワークショップや、さまざまなイベントを行っていくとか。2階は、お針子さんのものづくりの過程を垣間見ることができるアトリエ、展示内容を変えながら進化していくミュージアム、ブランドを形成する書籍や資料を揃えたライブラリースペースがあります。

ブランドの世界観をひとつ屋根の下に詰め込んだお店。新作アイテムだけじゃなくて、ブランドのバックボーンも知ることができる。なんだかワクワクしませんか。


PROFILE

吉田玲雄
ポータークラシック代表取締役

1975年、東京都生まれ。写真家、作家。父・克幸とチェコ人の母との間に生まれ、1993年に渡米し、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコの大学で映画と写真を専攻。2003年にサンフランシスコ・アート・インスティテュート大学院卒業。2017年ポータークラシック代表取締役に就任。著書『ホノカアボーイ』は映画化され、2009年に全国東宝系でロードショーされた。

長年やりたかった理想のお店。

ー 京都店オープンおめでとうございます。率直な感想はいかがでしょうか?

ありがとうございます。実は、京都にお店を出したいという気持ちがずっとあって、5年くらい前からいい場所がないか探していたんです。でも、なかなかしっくり来なくて…。この場所を見つけたときは感動しましたね。

ー 決め手というのは?

とにかく“気”がいいんです、自然と人を引き寄せるような。すぐ側に錦市場があっていつも賑わっていて、そこから目と鼻の先にあるのがここ。観光の中心地からちょっと踏み出して、この辺に何かいいお店ないかなって思うような場所。だから、一見さんも観光客も探検がてら来るんです。我々の旅のスタイルと同じですね。鼻をきかすというか、自分の感性のままに行ってみるというような、ガイドブックにはない街の楽しみ方。そういう場所にお店つくったらおもしろいだろうなって。

ー なるほど。この建物は元々何かのお店だったのですか?

大正時代から続く住居でした。梁や柱はそのまま残しながら、〈ポータークラシック〉らしい温かみのある空間に仕上げていきました。ブランドが向かうべき方向であったり、与えられたスペースの中で何をするべきなのか。それは設立当初からずっと考えていることで、正解のない旅をしているようなものでした。ただ、今は、衣類・カバン類・小物類、色んなものを、ひとつの場所の中でお客さんにお見せして、提供して、商いをやる。そういった中で、うちのお針子が、ひと手間加えたり、修理したり。理想は同じ屋根の下で、販売と作る過程の両方をお客さんが体験できるようにしたいです。

ー それが、この京都店で実現できたということですね。

作る場所と売る場所、すべてがひとつの場所に集約されて新たな発見にも繋がると思うんです。

ー アトリエを構えるとなると、京都にいるお針子さんも探さないといけないですね。

次世代のお針子たちを発掘したいですね。この店舗で、西のお針子たちとモノづくりが出来れば。うちのお針子たちは素晴らしいので、今この輪を広げたいですね。

ー お針子さんがブランドを支えていると。

父とたった二人で会社をはじめた時に、初めて雇ったのが営業でも販売でもなく、デザイナーでもなく、お針子だったんです。本当の贅沢は自分流のカスタムをしてもらうことなのです。それを表現するには、やっぱりお針子が欠かせませんからね。

ー 京都店ではミュージアムとライブラリーがあります。これも新たな提案だと感じました。

アトリエだけじゃなくて、ミュージアム、ライブラリーと3つのスペースを設けたのは、もちろんお客さんにものづくりの現場を直接見ていただいて、我々がどういうものからインスピレーションや刺激を受けているのか、〈ポータークラシック〉の真摯な姿勢をより伝えたいという考えからです。「次のお店のあるべき姿」って何だろうって考えたときに、すべてが同じ屋根の下にある。それをスタッフとお客さんが一緒に共有できること。これに勝るものはありません。また、そうすることで、うちのスタッフにも何か得るものや発見がある。ただ黙々と作業するんじゃなくて、常にいろんな角度から物事を捉えることで心も豊かになりますから。

INFORMATION

ポータークラシック 京都

住所:京都府京都市中京区柳馬場通錦上る
十文字町453-6
電話:075-251-6790
営業時間:11:00〜20:00
instagram.com/porter_classic_kyoto
porterclassic.com
newtonbag.com
※新型コロナウイルスの影響で休業中でしたが、5月22日(金)より営業を再開しています。

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