ぼくにとっては版数がひとつの価値基準です。
Selected by AnoLuck
Item01_ Minor Threat Parody T-Shirt

izmt:次はぼくかな。Tシャツを語るうえでまずはシルクスクリーンの歴史から話していきたいんだけど…。
畠中:izmtちゃん、その話は長くなりそうなんで今日は大丈夫だよ(笑)。
izmt:そっか、残念。ではTシャツの紹介をしていこうか。まずこれはただのBMX屋さんのTシャツなんだけど、見ての通りマイナースレッド(MINOR THREAT)をパロッてるっていう。
中野:“PUSHER”ってのがもうやばいね。
izmt:それはお店の名前でコロラドにあるみたい。ボディは〈ギルダン〉で古くもなく古着としての価値はないけど、デザインがとにかく格好良いんだよ。

中野:リアルに一番着そうなTシャツだよね。サイズもMだし、デザイン的にもジャストで着たいな。
畠中:しかもこれ絵じゃなくて写真だよね。マイナースレッドとも微妙に違うような?
izmt:オリジナルはショーツに〈ヴァンズ〉だから、自分たちで撮り直したんだろうね。パロディとしてのクオリティが高い。センスが素晴らしい。
中野:何気に凝ってるなあ。今日みんなが持ってきた中でいちばん格好良いかも。
Item02_Fish Motif T-Shirt

izmt:次もヤバイんだよ。よく魚のプリントのTシャツとか見かけるけど、そういうのって大抵色数が多くインクや版をたくさん使わなくちゃならないから、つくるのが大変なんだよね。
畠中:このTシャツも色が綺麗だよね。
izmt:そういう視点で見ると面白いなあと思って。胸元に会社のロゴかな? “Blackberg’s”というロゴと黒ヒゲの顔がワンポイントでプリントされているんだけど、どっちか片方だけだったら物足りないしだいぶ印象も変わるんだよね。それにこの黒ヒゲが海賊っぽくて良いのよ。密漁とかしてそうな感じが(笑)。
畠中:綺麗な熱帯魚をね(笑)。魚だけでも5版くらい刷ってるよね。すごいなあ。

izmt:5、6版ってところかな。個人的に版数=良いってのがひとつの価値判断なんですよね。単純に、版数が多いってことはつくりづらいっていうことですし。しかもこれは魚のプリントがぐるりと背中にまで及んでて…。
中野:この構図もなかなか思いつかないよね。良い意味で違和感がある。
izmt:真ん中に寄せない、本来あるべきところにないってのが良いんだよ。この感じって、〈オフホワイト〉をはじめ、いまのストリートグラフィックにもにもつながっている気がするんだよね。
Item03_Nautiius T-Shirt

izmt:お次はノーチラス。『不思議の海のナディア』でノーチラス号ってあったでしょ? ノーチラスって語源はオウムガイで、潜水艦とかによく使われる名前なんだけど、 そんな強いイメージの名前に対してボロボロのボディってのがなんか面白くて。触るとペラペラ。生地として成り立ってないくらい。
中野:もともと黒だよね? 色がヤケてこうなったと思うんだけど、海や戦艦のイメージだと沈没船を想起させるね。

izmt:普通、黒ボディがヤケてもここまでの色にならないよね。海ヤケ、松方弘樹的な(笑)。まあ一発でやられるルックスだよね。
中野:ボディが歪んでひん曲がってるのも良いね。親に怒られそうだけど(笑)。
畠中:ここまで自然な味を出すのは難しいよね。これもまた古着の魅力だね。
Item04_Girl Yeah Right T-Shirt

izmt:これはスケートブランド〈ガール〉のTシャツ。“YEAH RIGHT”って言葉は古着でもよく見かけるモチーフ。訳すと“いいじゃん”って感じかな。
畠中:「YEAH RIGHT」は〈ガール〉の有名なスケートビデオだね。確か2003年だったかな。ぼくも持っているけど結構な面子が出ていて当時話題になったよ。

izmt:確かスケボーを黄緑色に塗って、画面から消すっていうシーンがあったよね?全部浮いてるように見えるっていう。あれはヤバかった。それに合わせてプリントも緑なのかな。
中野:フォントも良い意味でバカっぽくて最高!
Item05_Rina Ikoma T-Shirt

izmt:最後は元乃木坂46の生駒里奈さんのTシャツ。発売されたのは2年くらい前かな、たまたまネットニュースでこのTシャツを見て、気になってオンラインストアに飛んだの。んで見てみたら、どうもシルクスクリーンぽいなと。この時代にアイドルのTシャツでシルクスクリーンを使う人なんているんだなぁと感心して試しに買ってみたわけ。でも届いて実物を見たらインクジェットだったっていう。
一同:(笑)。
izmt:でもこれ見て思いついたんだよね。シルクスクリーンの版分け用のデータをつくりつつ、インクジェットでプリントすればパッと見は分からないんだって。この生駒さんのTシャツはドット分解で、白を敷いたうえにグレーの濃淡2色と黒を分解をしてるんだよ。そうすることでインクジェットでもシルクスクリーンに見えるという。触って光に透かしてみてはじめてインクジェットだって事に気づく。凄いよねこれ。
畠中:なるほど。確かに見た目の印象はシルクスクリーンのそれだもんね。
izmt:この手法でぼくもいまTシャツをつくっているんだ。ちゃんと見ないと判断出来ないようなやつ。ただ、それが主流になるとシルクスクリーンは今後さらに衰退していっちゃうのかなぁ。

中野:普通、インクジェットって色の鮮やかさを求めて使うじゃん? だからこれを最初見たときインクジェットの使い方に関心したよ。そうきたかって感じ。でもこれ狙ってやったのかな?
izmt:当初はシルクスクリーンのつもりでデータをつくったんじゃないかな。ただ、コストがはまらなくてインクジェットに切り替えたという予想です。まあそれは置いといて、この生駒さんのポージングも良いよね(笑)。東京ならアリだと思うけど、ぼくが住んでる田舎の村だと着るのはちょっとハードル高いかな(笑)。
一同:(笑)。