当初は全然うまくいかず、いつも通りではダメだと思い知らされた。
ー 生地は糸からつくるところからスタートして、その後はどのようなやりとりがあったんですか?
矢實:岡山の「ジャパンブルー」という生地屋さんに相談をして、わざわざ東京まで来てもらってみんなで生地について話し合いをしました。いまはストレッチが効いていたり、薄かったり、柔らかかったりと、着心地の快適さを求められることが多いと思うんです。でも、ぼくたちが目指したのはタフなもので、13.5ozとか14ozくらいの厚手の生地だったんです。
ー 色味としては先ほど話にあったGジャンが理想としてあって、生地の厚さや質感などの理想はどのようなものを描いていたんですか?

金子:今日持ってきた501がまさにそうです。ただ、これはすでに色落ちしてますけど、デッドストックを用意していたわけじゃないので、履き古したものと、ぼくたちがむかしよく穿いていたブラックデニムの記憶を頼りに話し合いましたね。ブラックデニムはリジッドではなくワンウォッシュで売られていたり、新品特有の毛羽立ちなど、そういう細かなディテールを確認しながらつくっていきました。

矢實:毛羽がちゃんと出て安心してます。
小森:普通はこのケバを出さないようにするんですけどね。
ー サイズ展開はどうなるんですか?
矢實:28から34インチまで1インチ刻みでつくっているのと、36インチも今回つくりました。
ー かなり細かくつくられたんですね。
金子:ここまで細かいと正直リスクもあるので会社の人はイヤがるんですけど、せっかく2フィットつくって選べるようにしているのに、ジャストで穿けないのはもったいないじゃないですか。やっぱり自分に合ったサイズを穿くというのが肝だと思うので。

ー 生地がやや青みがかって見えるのは光の当たり方のせいですか?
金子:それもあると思います。はじめはもっと青かったんですよ。横糸が白なので、それで黒い色が若干淡く見えるんだと思います。
ー 穿いていくことによって毛羽立ちも収って、先ほどの501のような色合いになっていくのでしょうか?
金子:なっていってほしいというのが我々の願いです(笑)。そればかりは穿いてみないとわからない。染色の方法はおなじなので、ベースとしては似たような感じになると思うんですが、経年変化は人それぞれなのでいい感じに育てて欲しいですね。
矢實:当初は中国の工場で縫う予定だったじゃないですか。あのときって、金子さんも小森さんもスケジュールの話を会社の方々としていて、ここでぼくが意見を言うと納期とかに支障が出るなと思ってちょっとハラハラしてたんです。それが結果的にコロナの影響で中国で縫えないという話になり、ぼくらがいつもお世話になっている岡山の工場でやることになって。
金子:それが最終的にクオリティーに結びつきましたよね。
矢實:そこからできることが多くなって、こだわりが爆発しはじめましたよね(笑)。ネームや紙パッチにもこだわりはじめて。


ー 〈スタビライザージーンズ〉の生産背景がすごくよかったんですね。
金子:ぼくはバイヤーとしていろんなブランドがつくっているのを見て、簡単にいいのができるだろうと甘くみていたところもあるんです。でも、全然うまくいかなくて。やはりその分野のプロフェッショナルが必要だった。いつも通りではダメだと思い知らされましたね。それで紙パッチのデザインを何度もやり直したり、ネームも試行錯誤しました。
ー 今回は同じ生地でバッグとハットもつくったようですね。

〈LE〉デニムハット ¥13,000+TAX、トートバッグ ¥5,900+TAX
金子:そうなんです。〈リーバイス®〉でもバッグや小物をデニムでつくってるんですが、ジーンズとは異なる生産背景でつくられたものみたいなんです。だからぼくたちもあえて工場を変えて、小物屋さんみたいなところに頼んでつくりました。なんかそういうお土産感みたいなものが出ればいいと思って。