CLOSE
FEATURE | TIE UP
PUNPEEが語る “コロナ禍におけるクリエイティビティ” とは。
NEW EP “The Sofakingdom” RELEASE

PUNPEEが語る “コロナ禍におけるクリエイティビティ” とは。

前作『MODERN TIMES』から2年半の歳月を経て、ラッパー/プロデューサーのPUNPEEが待望の最新作『The Sofakingdom』を発表。全5曲の本作は、彼らしいユーモアとポップセンス、そしてヒップホップマインドが結実した快作となっています。この作品が産み落とされるまでの葛藤、とりわけこのコロナ禍での大きな生活や社会の変化は、どのように音楽に影響を与えたのでしょうか。10,000字を超えるロングインタビューで制作工程に迫りました。また、本稿は新しいEPの内容について踏み込んだ記述が多くあるため、『The Sofakingdom』をまだ聴いてないかたはぜひ作品を聴いてからのご閲読をおすすめします。

見て見ぬフリできないことがあるじゃんって。

ー コロナウイルスに伴う自粛期間の話に関しても訊いておかないとと思ってるんですが、EPの制作においてコロナ以前とコロナ以降でいちばん影響があった部分はどこだと思います?

PUNPEE:うーん…ひと言ではなんとも言えないですね…。マインドとしてはめちゃめちゃ食らったし、確実にEPにも影響を与えてるんだけど。ちょっとむずいっすね。体調も崩したし、ツアーだって延期になっちゃったりしたので、そういう部分が精神的に来ちゃったなってのはありますねぇ。でも、なんというか未来に向けてすごい漠然と、説明できないんですけど、それぞれみんな気づいたことだったりがあったのかもなぁと。“なんでそこから目を逸らしてたんだろう” とか。まだ収束してないし、こんなこと言うのもアレかもですが “どうなっていくんだろう” という期待もあります。

ー この状況下での精神的ストレスってどうやって発散したりするのかなって。

PUNPEE:発散かぁ…。もうそれは曲に昇華していくしかないですよね。あとは普段の趣味に救われてるとこはありますよ、やっぱ。映画とかアメコミとか。それにまわりのひとたちの嬉しいニュースとかも希望になってたかなって気はするっすね。

ー 例えば、最近観たものや読んだもので気持ちが救われたような作品はありましたか?

PUNPEE:なんだろうな…。全然救われてはないんだけど、映画『プラトーン』(※1986年公開のベトナム戦争をテーマにしたアメリカ映画)を観てて、もう前みたいな気持ちで映画を観れなくなっちゃったなっていうのは思いました。世のなかにはこんなに考えなきゃいけないことがあったんだなって気づいたというか。見て見ぬフリできないことがあるじゃんって。それに関して出口は未だに自分のなかでわからないんだけど、まずは直面したことによって気づけた。

ー PUNPEEさんのフェイバリットに『ウォッチメン』(※1986年~87年に刊行されたアメリカのコミック作品。2009年には実写映画化、19年には実写ドラマ化された)ってアメコミ作品がありますよね。あの作品で描かれていることって、すごく現代に共通することがあるなと思っていて。核戦争の危機を別の危機をスケープゴートにして回避し、世界の平和が取り戻されるっていう部分があるんだけど、それって現実世界に置き換えると、コロナの収束に向けて世界が団結するってことじゃないかなと。でもなかなかそうはならないっていう。

PUNPEE:それは思いますね。最近、ドラマ版やコミックスの続編『Doomsday Clock』も観たんだけど “いまオジマンディアスがいたらこうかもなぁ…” と思ったり。強くあってほしいですが。もちろん『ウォッチメン』はフィクションだけど、よりフィクションであることを突きつけられるっていうか。自分の「宇宙に行く」って曲でも “エイリアンたちがもし襲ってくれたら地球はひとつになるかもしれね” って歌ってるけど、そんなことなくって、問題の根深さとかおぞましさに直面しますね。ずっと屋根があるような感じ。

ー 閉塞感というか。

PUNPEE:自分自身もちゃんと見てこれてなかったなって改めて考えさせられた。ちゃんと考えたり話したりしなきゃいけなくって、それで社会全体が建設的な方向に進んだらいいのかなって気はしますね。コロナともたぶん長く付き合っていくしかないし。そんななかでも自分にとっての救いってエンターテイメントだと思うんで。早く映画館にも行きたいし、早く『マーヴェル』の最新作も観たいです。いろいろあっても進んでいくしかないっていう。でも学びながらそれができれば、それはそれで必要な時間なのかもです。ホントそれに尽きるなって。今回の作品はタイミングが重なって、結果コンセプチュアルなものになったけど、次の作品はもっと肩の力を抜いたものにしたいですね。それまでにいろんなことが解決したり、よくなっていって、そういうリラックスしたアルバムが求められる世の中になってたらいいなと思います。

このエントリーをはてなブックマークに追加