03 親が子に学ぶ。そこに心が動かされました。
PROFILE
1994年生まれのファッションデザイナー。バンタンデザイン研究所ファッションデザイン学科の在籍中に自身のブランド〈ダイリク(DAIRIKU)〉をローンチ。2016年には「Asia Fashion Collection」のグランプリを受賞し、2017年秋冬コレクションをNYのファッションウィークで発表。映画からインスピレーションを得たアイテムを数多く展開。現在は、映画の源流を探るべく、20、30年代の名作シネマに注目して鑑賞中。
ー 以前から『WAVES/ウェイブス』は知ってらっしゃったんですか?
(映画評論家の)町山智浩さんがこの作品を好評していたので、絶対に観たいと思っていました。それと『ムーンライト』の色彩感覚やニュアンスが好きで、スタジオも同じA24ですし、それに近しいものを感じていて興味が湧いてましたね。ポスターの写真もそうですが、自然ではありえないピンクとブルーのグラデーションは、ただ目を引くだけの装置ではなく、一つ一つの色に意味がある気がしました。
ー このポスターに目を奪われますよね。実際に観られていかがでしたか?
ポスターを見た段階では、恋愛映画だと思ってたんですよ。いざフタを開けてみると家族愛が描いていて、いい意味で予想を裏切られましたね。厳しい父親や、その父親に萎縮している母親の姿だったり、そういった家庭で育ってなかったとしても共感できる部分がありましたね。
ー 家庭環境や住んでいる国が違うのに、どこか他人事では片付けられない感覚がありますよね。
中盤で主人公が変わったり、そういった部分も新鮮でした。それが違和感ない演出でしたし、前半と後半でタイラーの映り方がガラッと変わるところも印象的でした。
ー そういったストーリーを支えるうえで音楽も重要な役割を果たしていました。
ぼく自身、ヒップホップに詳しいわけじゃないんですが、それでも楽しめましたね。ヒップホップ以外にもたくさんの曲が使われていて、アラバマ・シェイクスの『Sound & Color』は大好きな曲だったので、これが流れたときに思わず感動してしまって。メロディだけじゃなく、歌詞も大切にしている映画ですよね。曲を知らなくても、シーンとともに歌詞が流れていたので、聴き返したくなる曲がたくさんありました。先にプレイリストを作成してから、脚本を手がけたとあって、それが自然な流れを生んでいるのかなと感じました。
ー 印象に残っているシーンはありましたか?
シーンというか、ストーリー性に感動しましたね。序盤は父親がタイラーに熱のこもった指導していて、中盤でタイラーが事件を起こしてからは父親自身が自分にも責任があったんじゃないかって罪の意識を持つ。そしてラストには妹のひと言で家族が動かされる。子が親に学ぶこともあれば、親が子に学ぶこともある。この映画では家族という枠組みで描かれてましたが、もっと広いコミュニティにも通用する価値観だと思いました。
ー そういった教訓めいたものも心に響く作品ですよね。
はい。現代的なニュアンスもありつつ、普遍的なメッセージ性を感じ取れる作品でしたね。いままさに観るべき映画なんじゃないかと思います。
No.1
Sound & Color
アラバマ・シェイクス
印象的なシーンで流れるこの曲が一番印象的でした。”音と色”まさにこの映画を象徴するかのようなタイトルとリリックです。
No.2
True Love Waits
レディオヘッド
たとえ血が繋がっていなくても”家族”について考えられるシーンでこの曲が流れてきて泣きました。
No.03
Godspeed
フランク・オーシャン
予告で使われていた一曲。これから先、この曲を聴くと『WAVES/ウェイブス』を思い出します。
No.04
LVL
エイサップ・ロッキー
普段映画を観ない人でも今まで聴いたことのある曲とともに観られる作りにもなっていて、この映画をきっかけに映画好きになるような序盤に気持ちが上がる曲です。