05 いい意味で疲れる。映像、音楽、ストーリーに圧倒されました。
PROFILE
『シュプリームの店員モノマネ』でにわかに注目を集めている、お笑いコンビ「おミュータンツ」の一人。映画専攻の大学に入学し、在学中には映画も自主制作。さらに年間300本は観るなど、吉本興行屈指の映画好き芸人でもある。自身のYouTubeチャンネル『おミュータンツch』にて、日々動画をアップ中。
ー 数多くの名作を残しているA24は以前から注目されていましたか?
もちろんです。0か100かっていう挑戦的な感じが好きなんですよね、ハマる人にはとことん刺さる感じ。この『WAVES/ウェイブス』もそうですが、勝負してる感じが伝わってきますよね。ぼくも芸人なので、一定の層にさえ響けばいいと思いながらやっているので。シュプリームの店員モノマネなんてまさにそう(笑)。自分は好きですって開き直ってやったら、以外と評判よかったみたいな。
ー 以前から楽しみにされていたとのことですが、こちらを観た感想は?
シュルツ監督の実体験もストーリーに投影されているとあって、凄まじいエネルギーを感じましたね。そういう作品って見えないパワーが込められている気がしていて、デイミアン・チャゼル監督の『セッション』なんかもそうですよね。いい意味で疲れる映画でしたね、作品のテンポも良かったですし。
ー たしかにそうですね。
最初、“プレイリスト・ムービー”と聞いていたので、ミュージカルをイメージしてたんですよ。だけど、ストーリーを補足するように歌詞やメロディがうまく溶け込んでいて。映像と音楽が絶妙なバランスで成り立ってましたね。
ー 映像的な視点ではいかがでしたか?
ストーリーが進むにつれて、画面のアスペクト比がどんどん縮小していくじゃないですか。それがキャラクターの切迫した心情とリンクしていて、そういう細かい演出もニクいなって。それと動きのあるシーンでは、友達がスマホで撮ってるようなカットもあったりして、“プレイリスト・ムービー”っていう部分だけじゃなく、多彩なカメラワークも新感覚だなって思って観てました。4DXや3Dとはまた違った臨場感があって、生き物のような画作りだなと。だから冷静になって見る間もなく、没入感がありましたね。タイラーと父親の間にいる兄のような感覚で見入ってしまいましたね。タイラーが事件が起こすシーンでは、「おい、嘘だろ…」って思わず声も(笑)。
ー ストーリーと相まって、どんどん引き込まれていきますよね。
そうなんですよ、タイラーとぼくは真逆のタイプのはずなのに、なぜか感情移入してしまうんですよね。タイラーは金髪でスポーツマンでかわいい彼女もいる、いわゆるパリピじゃないですか。イケてないグループに所属していたぼくなんかとは別世界。そんなエリートでも、苦悩はあるんだなって思いましたね。
ー シュルツ監督は、細かい部分の心理描写が巧みですよね。
本当にそうですね。学園内ではイケイケなのに、家に帰ると父親という圧倒的な支配者がいる。父親を尊敬しているけれど、思春期の自分が暴走しそうになるっていう危うさがひしひしと伝わってきて。そういう空気感の操る術が上手な監督だなって唸らされました。
No.1
America
ザ シューズ
ティーン達の自由さと危うさが頭の中で交互に波打つ楽曲。彼らの全てはノッてるか、ノッてないかで決まります。怖いです(笑)。
No.2
LVL
エイサップ・ロッキー
タイラーが吸い込まれていくMRIが鳴いてる様な不気味さが良い。誰もが嫌う穴のよう。
No.03
I Am A God
カニエ・ウェスト
父を押し除け、力を知るタイラー。『スターウォーズ エピソード7』のカイロ=レンに近いものを感じました。制御不能な強さと魅力がある楽曲。
No.04
True Love Waits
レディオヘッド
「完璧ではないけども、壊れたものが、ゆっくりと姿を取り戻していく。微かな希望かもしれないが人になくてはならないモノだ」泣いちゃうねトムヨーク。