詩人・浅井健一の言葉の源と言霊の力。

ー 最新作の『神様はいつも両方を作る』では、個々の断片が折り重なったイメージの奔流という感じで、個人的には浅井さんの歌詞の世界とも共通するものを感じました。
色々な短編があって、そういう風にするしかないよね。文章も全部繋がってないじゃん。日記も日付順じゃなくてバラバラだし、勝手に「この並びのほうが読みやすいだろうな」って観点で構成したかな。
ー 歌詞と書籍で製作スタイルの違いはありますか?
本のほうが楽しいわ。歌詞はやっぱり制約があるでしょう。メロディだとか言葉数も踏まえないかんけど、文章はまったく自由じゃん。途中で考えが変わったら「気づきました」って書いて続けていけば良い。だから、喋っとる感じだね。
ー 確かに浅井さんが喋ってるようなライブ感がありました。
考えて計算することができない。要は読んだ人が嬉しくなったりだとか、強くなったりとか、笑ったりとか、いい方向に変わるようなことが起こるのが一番いいかな。

ー 20年のうちに作詞や文章の書き方は変わりましたか?
昔は夜書いとったんだわ。いまは朝だね。朝のほうがすごいものができやすい。すごいものって言うか、いいのができる確率が全然高い。それは文章だけじゃなくて、なんでもそう。絵でも、音楽でもそう。人間は起きてから2時間が一番冴えてるから、絶対に朝なんだよね。社会の流れからいくと、朝ってみんな電車で通勤したりしてるじゃん。あれ、勿体無いんだよね。特に創作をする人は創造力や判断力は朝が一番いいからね。モノを作ってるうちに色々なパターンが出来てきて、どっちにするか決めなきゃいけないときって一杯あんじゃん。それを判断するのは朝がいいよ。
ー 本の中ではひとつひとつの描写がすごく細かくて、たとえばバイクの描写の部分でも本当にバイクが好きな人が書いてるのが伝わってきました。
そんなんバレバレだわ。単車の道を通ってきたからね。時代もあるし…、いまのオートバイのことは分からんけどね。その頃のチョッパー関係はけっこう詳しいけどね。
ー 中村さんは定期的にバイクを乗り換えてるようなんですが、浅井さんはずっとサリンジャー号(*ヤマハXS400をベースにカスタムした浅井さんの愛車)に乗ってるのも対照的だな、と思いました。
持ってるけど、最近は乗ってないんだよね。達也は生活で使ってるけど、俺は使ってないんだよね。でかいのはやっぱ達也はドラマーだから、ギターやエフェクターボックスを持っていかんでいいでしょう。達也は体ひとつでスティックさえ持って行けば、リハーサルは大丈夫だから。それに、意外に達也は新しいもの好きだからね。乗ってるバイクは古いけど。達也は昔から世の中で流行ってる新しいものを取り入れるね。

ー きっとご自身が好きだからと思うんですが、歌詞やイラスト、書籍ともに、クルマやバイクなど、定番のモチーフが頻繁に登場しますね。
クルマか単車かソフトクリームか猫か….。たまには違うもん描かなって思うんだけど、描きやすいんだろうね。
ー イラストではカラフルな色使いが特徴ですが、歌詞を読んでいても色に関するワードが多いように思います。
色はよく出てくるね。出てきがちだね。困った時に色に逃げる。
ー それがすごく情景が浮かびやすい歌詞になってるんじゃないかと思うんですが。
良ければ良いや。