本間良二の山暮らしと、
そこで履いている
ブランドストーンのこと。

本間良二：スタイリストの活動に加え、〈BROWN by 2-tacs〉のデザイナー、その直営店である「The Fhont Shop」のオーナーを務める。山暮らしは今年で2年目を迎えた。

山暮らしでは3足だけ。そのひとつがブランドストーン。

４WDでなければ怯んでしまいそうなほど急で狭い坂道を登った先、民家の絶えた山中で、本間さんは暮らしている。かつて画家のアトリエだったという山荘からは海を見晴るかし、雑然としたリビングの窓は開け放たれている。本間さんは採れたてのトマトを使ってパスタを作り、枝ごと切ったピーマンを花瓶に活けた。

薪割りは秋から冬の仕事。夏は湿度を含むから、パキッと割れない。そして、このショーツと〈ブランドストーン〉の組み合わせが、本間さんが〈ブランドストーン〉を購入するきっかけとなった藤門さん流。ソックスは長めがお決まり。

冬野菜の準備がスタートしている畑へと降りるために、階段手前にはレンガを敷いている途中。柚子や栗の木の間を抜けて裏手に回れば木工場と材木置き場があり、薪割り姿を撮影している間にサーっと雨が降る。「最近は、こんな天気ばっかりだよ。じきに止むから」という言葉の通り、すぐにまた陽が差した。

山暮らしでは「ほとんどこの３足しか履かない」と本間さんは言う。吟味を重ねて自身に必要な靴を選択した結果、気軽に庭に出るための〈ビルケンシュトック〉の「ナッシュビル」、ハードな作業の時に使う〈ルシャモー〉の長靴、そしてもっとも頻繁に履く〈ブランドストーン〉の「550」だけが残った。

山の作業時に長く愛せる靴を、と探していたときに「550」と出合ったという。

「シェーカー家具の書籍を翻訳したり、ご自身も木工作家として活動している藤門弘さんっていうアウトドアマンがいるんです。北海道に暮らしていて、お会いしたことはないんだけど、時々ブログを拝見していて。そこで藤門さんが履き込んだ『550』を紹介していて、カッコイイなと。ショートパンツに合わせてて、アメリカの国立公園のレンジャーみたいで、僕もこのスタイリングしたい！って（笑）。アウトドアマンって徹底的に道具にこだわる人が多いから、藤門さんが『また同じものを買いました』って紹介しているからには、間違いないだろうと」

家の前に広がる畑。訪ねたときは、ちょうど真っ赤な唐辛子が実っていた。

山暮らしを始めたのと同時期に購入し、2年履いた本間さんのサイドゴアブーツは、美しく汚れ、経年によって自分だけの一足になっている。

「思っていたよりもヘタレないんです。フッ素加工で防水効果があるみたいだから、すぐに表面の加工が落ちてしまうかなと思っていたけど、まったく浸水しない。もう少しタフに改良してみようと、自分で革を貼って補強してみたりして。いい道具は、そうやって手を入れて自分のものにしたくなる。好きだからついひと仕事しちゃうんだよ（笑）。でも、やっぱりこの靴の良さは気軽さにもあるから、元のままの方が好きかな」

本当は専用のオイルで手入れするところを、本間さんは食用油。真似は禁止。

本間さんの“物”を選ぶ基準は、何よりタフでロングライフであること。良い物をガシガシと使って、きちんとメンテナンスをする。ただし、特別なことはしない。泥で汚れれば草の中を歩いて落とし、酸化してしまって料理には使えないオリーブオイルを塗りこんでしまう。そうやって日常に溶け込む“道具”こそが、山暮らしには必要とされる。手入れをすれば次の朝に履く時にも「気持ちいいなあ、って機嫌よくいられるんです」と笑う。