CLOSE
FEATURE | TIE UP
本間良二の山暮らしと、そこで履いているブランドストーンのこと。
150th Aniversary. vol.2

本間良二の山暮らしと、
そこで履いている
ブランドストーンのこと。

今年、創業150周年というアニバーサリーを迎えた〈ブランドストーン(Blundstone)〉と言えば、やっぱりサイドゴアブーツ。性別、世代、シーンを超えて愛される、この靴の魅力はなにか…。いまでこそファッションアイテムとして知られていますが、ブランド創業当初は労働者に支持され、第二次世界大戦のときにはオーストラリア軍が履いていました。そのくらいタフな靴ということ。スタイリストでデザイナーの本間良二さんは、2018年から山暮らしをはじめました。伸び放題だった荒地から少しずつ土地を整備し、小さいながら菜園をはじめ、チェーンソーも扱い木工もする。週に何度かは東京でも仕事をする。その山と街の暮らしを支えているのも、〈ブランドストーン〉なのでした。

成功と失敗の繰り返しで築いてきた山暮らし。

本間さんが山での暮らしを始めたのは、「もっと遊んでいたいから」だった。「遊び」とはつまり、自然の中に身を浸し、循環に合わせて生きる愉しみのこと。

家の裏手にある木工場。毎日少しずつ作業を進める。

「山暮らしの先輩である故・田渕義雄さんに取材をさせてもらった影響が、とても大きかった。衝撃と言ってもいい。楽しそうだなとぼんやり考えていたことを、田渕さんはすべてやっていたんです。金峰山近くの1400mの場所に田渕さんの家はあるんですが、とにかく生活に無駄がない。周囲の環境にあるものを全部生かして暮らしていて。その有機物の循環みたいなものを目の当たりにして、いろいろ勉強させてもらいました。山に自分の拠点を手に入れたら、まず何をしたらいいのか、わかります? 田渕さんの暮らしを見ていてわかったのは、堆肥置き場が必要なんです。落ち葉や生ごみから、土を作る場所。循環させるための場所作りからこの暮らしを始めたんです」

文筆家であった田渕義雄の著作を読めば、いかに先端的な思想を持って暮らしを構築していたかがわかる。〈モス〉のテントを研究し、フライフィッシングを嗜み、切り出した樹木でウィンザーチェアを作る日常。著作にある「心が自給自足してますか」という言葉は、本間さんの「もっと遊んでいたい」というセリフと同じ意味ではないだろうか。

田渕さんの足跡を追うようにして山暮らしを始めた本間さんだが、それは決して模倣ではあり得ない。なぜなら、環境が変われば暮らし方の必然も変わるからだ。

「畑でもなんでも、やっぱり土地に合ったやり方があるんです。それは、自然をきちんと観察しなければわからない。それがこういう暮らしの一番の醍醐味。面白いですよ~。観察していると、日々、全然違う。どこから、どんな風が吹いて、土がどういう状態で、周囲にはどんな樹木が生えているか。どんな獣がいて、どんな虫がいるのか、それに合わせて、自分の暮らしを作り上げていく。畑でも『このやり方、ヤバそうだな』と思ったら、また違う方向に進んで、手応えを感じて加速させてみると一気にブーストして結実したりする。もしもうまくいかなかったら、別のやり方を試せばいい。土、水、空気、微生物、あらゆる要素が複雑に絡み合っているから、原因を突き止めるのは難しいかもしれないけれど、別のやり方は見つけられる。人間には、土1mgの中にいる数億個の微生物の分類さえ、できていないんですよ。でも、それらが絡み合って影響を及ぼしあっているのは事実でしょ。本来、その複雑な要素の一部として、人間はいるんですよね。コロナ禍で無菌の方へと進みがちだけれど、その複雑な世界から人間だけ都合よく切り離すことは絶対にできないわけで。こんな時代だからこそ、土には触れていたほうがいいような気がしています」

本間さんは暮らす環境においてトライ&エラーを繰り返しながら、自分の“世界”を作り上げている。その自然との対話のような試行錯誤を「ランドスケーピング」と呼んでいる。

「僕の中では立派なアウトドアアクティビティで、すごく体力も使うし、危ないこともする必要があるし、創造性もすごいんです。とてもクリエイティブな作業だから、みんなからアウトドアアクティビティとして認識される時代が近い将来、必ずやってくると思う。サーフィンやボルダリングみたいに、オリンピック競技にしたらいいと思ってるくらい(笑)」

自身が田渕さんの暮らしを見て「やりたくて仕方なくなったように」、本間さんが遊ぶ姿を見て、誰もが真似したらいいと考えている。

「山暮らしのティップスって、実はなかなか情報化できないんですよね。例えば浄化槽を汚したくないから、油物は外で洗うんです。土によくないような気がしてしまうけど、実はバクテリアが分解してくれて、土が活性化する。ただ土のキャパシティを超えてしまえば、腐ってしまう。その塩梅は、土によって変わり、観察しなければわからない。イエスかノーかじゃないんですよ。急いで答えを欲しがって情報過多の人が多いけど、それではただのステレオタイプ。観察して、実践して、自ら答えを出すことが大事だし、そこが一番面白いところなんだよね。2年目の今の状態もあくまで途中経過だし、まだまだなんにもわからない。きっと終わりはないんですよね。終わりは自分が死ぬ時。よくよく考えたら、自分がいつか死ぬのを理解しているから、こんなキリのない作業をやってられるのかもしれない。そう考えたら、永遠の命なんて死んでもいらないね(笑)」

無限のように続く自然の営みの一部として、有限の命を生きる。山で暮らすとは、自分の来し方行く末を考えるような、問答の連続なのかもしれない。

山暮らしはファッション。
誰も見ていないときだっておしゃれしてる。

生まれ育った東京にも、隙間のように、自由を謳歌できる場所がいくらでもあった。そこから、少しずつ居心地の悪さを感じてトレイルに入り、波乗りを始めるようになる。規則がある山小屋よりも、自然への負荷を最小化するというルールを守った上で、自分なりの方法で自然と戯れる。そうやってアウトドアライフにのめり込んでいった結果として、自分の世界を構築する「ランドスケーピング」、山の暮らしを始めた。

ただし、自身の過去や世間と断絶した仙人のような暮らしを求めているわけではなく、本間さんはただ「遊ぶため」に山にいる。

「半分は、東京で働いてもいるしね。できればずっと山にいたいけど、そうもいかないから。この暮らしも、ファッションなんですよ、僕にとっては(笑)。ファッションが好きでその世界に入って、今でも変わらず大好きなの。ファッションに夢をもたせたいから、この暮らしをしているんです。有機物の循環や生活様式を真摯に突き詰めるファッションもあるんだぜ、って思ってる(笑)」

「ファッションって受け皿がものすごく広いもので、偽物もいれば本物もいる。そんな偽物もいられるのがファッションの懐の深いところ(笑)。もう30年も前に僕がスタイリストになった時代には、東京でももっと夢があったと思うんです。ただ、ファッションが夢を与えてくれるものだっていう考え方は今もあんまり変わらない。だからコレクションでも、こういう暮らしでも、僕にとってはすべてがファッションだから。相変わらずファッションをやってるんですよ。一人で、誰も見ていなくても、自分がいいなと思う服を着て畑に出ますよ。だって、スタイリストだもん(笑)」

憧れの“スタイル”を提案するのが、字義通りスタイリストの役目だとしても、本間さんの暮らしをそのまま真似することはできない。なぜなら、環境はそれぞれ違うから。けれど、本間さんが田渕さんから受け取ったように、そのスタイルを貫く精神性のようなものは、伝承できるはず。〈ブランドストーン〉のような長く愛せる靴の選び方から、材木の切り出し方まで、あらゆる行為の根底となるもの。

陽が暮れて、杉の枝を焚きつけにして火を起こし、ゆっくりとウィスキーを飲みながら、本間さんは、最近深く感銘を受けたというパンク・ミュージックの話をした。「ようやくパンクの哲学がわかってきたんだよ!」と熱く話す膝の上には、つい1ヶ月前までは野良猫だったという、隻眼の猫がくつろいでいた。

本間さんが履いているのは、〈ブランドストーン〉の上位シリーズ「CLASSIC COMFORT」。レザーライナーを配し、インソールにもクッション素材XRD®を採用することで、よりタフで疲れにくく、履き心地を高めている。

INFORMATION

ブランドストーン

日本公式ブランドサイト
〈ブランドストーン〉スタイリング特設ページはこちらからご覧ください。

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事#150th Anniversary

もっと見る