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ディレクター、スタイリスト、デザイナー。 3つの視点から覗く、ブランドストーンの魅力。
150th Anniversary. vol.1

ディレクター、スタイリスト、デザイナー。
3つの視点から覗く、ブランドストーンの魅力。

今年、創業150周年というアニバーサリーを迎えた〈ブランドストーン(Blundstone)〉と言えばやっぱりサイドゴアブーツ。性別、世代、シーンを超えて愛される、この靴の魅力はなにか。ファッションに精通したお三方に話を伺いました。「ユナイテッドアローズ」の栗野宏文さん、スタイリスト百々千晴さん、〈ダイリク〉デザイナーの岡本大陸さんが、それぞれの視点でブランドストーンについてたっぷり語ります。栗野さんの著書『モード後の世界』に続く話、百々さんのYouTube話、岡本さんによる映画の話など、シューズ以外の話もあわせてどうぞ。

CASE 1 クリエイティブディレクター・
栗野宏文

PROFILE

栗野宏文
ユナイテッドアローズ上級顧問
クリエイティブディレクション担当

1953年生まれ。大学卒業後、セレクトショップを経て、1989年に「ユナイテッドアローズ」創業に参画。LVMHプライズ外部審査員や、英国王立美術学院に名誉フェローを授与されるなど、知識と経験に世界から信頼を集める。近著『モード後の世界』では、豊富な知識と経験をベースに、ファッションと社会の接点を考察している。

この靴は流行とは関係のない、
時代を超えるもの。

ー 〈ブランドストーン〉のことを、栗野さんはいつ頃からご存知でしたか?

栗野:1990年代前半にパリの「アナトミカ」が扱っていたので、その頃ですね。〈ブランドストーン〉のブーツの他に〈ジャムズ〉のショーツや〈ビルケンシュトック〉のサンダルなどがありました。「アナトミカ」というのは体にいい、人体工学的という意味があり、体にいいものとして〈ブランドストーン〉がセレクトされていたようです。悪天候でも履けるし、スタジオでの撮影の際などに靴の脱ぎ履きが楽で便利でした。

90年代半ば頃に〈ブランドストーン〉をよく履いていたという栗野さん。パリの「アナトミカ」かミラノの「WPストア」で購入したというその靴は「ボロボロになるまで履き潰した」とのこと。履いている「BS500 ORIGINALS」は、現在「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」で取り扱い中。

ー 体にいいものや健康的なものは、近年ようやく注目が集まり始めましたね。栗野さんにとっての靴はどのような役割があるのでしょう。

栗野:たくさん歩くので歩きやすさが一番大事です。健康にも靴はすごく重要。実は今年、生まれて初めてマスクをしたこともあり、“健康な精神は健康な身体に宿る”という基本をあらためて実感しました。靴は着るものに合わせて決める日もあるし、スタイリングの締めで選ぶときもあります。ただ、〈ブランドストーン〉は、〈ロレックス〉や「亀の子たわし」と同じように、流行とは関係のない時代を超える存在。そういうものって、最先端のものにも、ずっと変わらないものにも合います。

ー 定番品はそれだけ合わせるものを選ばないということですね。

栗野:例えば、今日履いているジーンズは、昨年誕生した〈テクスト〉というブランド。オーガニックコットンを使用したテーパードシルエットは、所謂ヴィンテージ型とは異なりますが、自分が2020年に〈ブランドストーン〉の靴を履くときはこういうものと合わせます。いまの自分でしか表現できないメッセージを表すのがファッションで、今日、この日に発信するメッセージだからこその合わせです。

質実剛健なものにクリエイティブなものを合わせるのが栗野さん流。「ブリティッシュ・ユースカルチャーのり」と語るコーディネートは、〈ザ・シェパード アンダーカバー〉のニットに、パリ・コレ参加ブランドで学んだ新人が手掛ける〈コグノーメン〉のリバーシブルブルゾン、オーガニックにこだわる〈テキスト〉のデニムと、クラシックながらクリエイティブに昇華したアイテムをチョイス。

ー ファッションはそのひとからのメッセージであると。

栗野:そうですね。ひとに合わせるのではなく、自分は自分、というひとが好きです。『モード後の世界』で書いたように、ぼく自身もそうありたいと思っています。憧れはあってもコピーせず、自分に取り入れてから、どれだけオリジナルとして表現できるか、ということが重要です。

ー いまの日本はその逆で、流行からの同調圧力みたいなものを感じているひとも少なくないと思います。

栗野:若いひとがそれではまずいですよね。未来があるし、これから世の中を変えていく存在なのだから。若者はひとの顔色を見ながら暮らすなんて、絶対やめたほうがいいんじゃないかな。特にファッションなどの表現は、そこから一番対極であって欲しいです。

個性は出そうとしないと出ない。

ー ちなみに、久しぶりに〈ブランドストーン〉を履かれていかがでしたか?

栗野:いいですね。いい意味で変わっていなくてほっとします。

ー 変わってないとは、褒め言葉ですよね。

栗野:そうです。ファッションは変化するものなので、変わらないことが正解だとは言いません。ですが、生産背景の変化でクオリティが落ちるブランドもある中、〈ブランドストーン〉は変わらないですよね。超高級な〈ロールスロイス〉を目指しているのではなく、〈トヨタ〉のように質実剛健につくられています。そういうものはクオリティが落ちないんですね。

ー ラフに使えて、誰でも履けて、丈夫。いわば労働者のための靴ですよね。

栗野:はい。着脱が楽で、都会でも自然の中でもOKな〈ブランドストーン〉は、キャンプにも良さそうですよね。労働と言えば、こんな状況でも日本がいろいろな意味で救われているのはさまざまなメイドインジャパンが可能だからでもあります。昨今のキャンプ人気で山を買う勢いのひとも登場しましたが、この傾向の結果、農業までもやる人が増えたらいいですよね。

ー 農業といえば、環境問題も深刻ですよね。ファッション業界でもサスティナブルが叫ばれています。

栗野:ナチュラルダイやオーガニックコットン、生分解などはもちろん大事です。ですが、自分が気に入っている靴や服は20年以上愛用しますよね。アイテム自体はオーガニック・メイクではなくても、長年使うというのもある意味、サスティナブル。サスティナブルなものをいくら買っても、翌年に飽きて着ないなら、それはサスティナブルとは言えません。 いくらオーガニックな服を着ても、その人がエアコンをガンガンにかけていたら世界に対していいことをしているとは言えないでしょう?

ー 格好だけではなく、自らでよく考えて選ぼうということですね。

栗野:ファッションは個人的なものであり、同時に社会的な存在です。つくる側も、着用者も個人的なもので、たまたま流行ると大きな潮流になる。個人と集団、例えば都市や国が結びうる接点としてファッションがあります。それが面白いからこそ、流行っているものを単純に真似したくないし、オリジナルでいたい。でも、なぜ流行っているのかを探るのは面白いですよ。

ー ファッションは個人的というお話ですが、変化のない定番品も長年愛用していく内に、やがてそのひとだけのものになっていきますよね。

栗野:そうです、ぼくは制服反対派でしたが、皆が同じ格好だと逆に個性を発揮するディテール部分は面白い。ボタンの開け方や髪型の違い、最近はマスクから見える目や肌つやなど。皆が同じものを着ることを面白いとは思いませんが、その均質化の向こうに個性が見えることもあります。ただし、それは個性を出そうとしなければ出ない。同調圧力に負けていたら出ないものでしょうね。

〈ブランドストーン〉といったら「ORIGINALS」シリーズというくらいの定番モデル。TPUを使用したインジェクション製法のソールは軽量かつクッション性に優れ、伸縮性の高いサイドゴアは着脱性と動きやすさを生み出している。〈ブランドストーン〉の中で最も足の甲とつま先部分が低くフィット感が高い。このモデルには、150年の歴史がギュッと詰まっている。数あるカラーの中でも、このスタウトブラウンとボルタンブラックが定番として知られている。

INFORMATION

ブランドストーン

日本公式ブランドサイト

〈ブランドストーン〉の公式サイトでは、随時ファッションスナップも更新中。
取り扱い店のスタッフによるコーディネートはこちらからご覧ください。

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