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アートもビジネスも旬は短い。村上美術の10年とこれから。
Show your philosophy.

アートもビジネスも旬は短い。
村上美術の10年とこれから。

中目黒にあるショップ「ブリック&モルタル」、デザイン性の強いプロダクトを作る〈アマブロ〉、アーティスト村上周。どれもが今回お話を聞いた村上美術(株)にまつわる一面です。グラフィックデザインという得意分野を古今東西のものと組み合わせ、モノを作り、売り、育てているこの会社が、創設から10周年という節目を迎えました。村上周さんのアート活動とその哲学、村上美術(株)が手がけるビジネスの裏側について、会社の中核を担う3人に話を伺いました。

PROFILE

左:村上敦志(弟)
村上美術(株)にて〈アマブロ〉の企画や営業、流通をおもに担当。兄の周さんと会社を立ちあげる。関西人らしい、ユーモアあふれる語り口が印象的。
中:村上周(兄)
村上美術(株)の代表にして、アーティスト。シルクスクリーン、ペイント、カリグラフィなど作風は幅広い。すべては氏の作品から始まった。宇野薫さんのUNO DOJOで汗をかく日々を送る。
右:鈴木優哉
村上美術(株)のアートディレクター。焼き物などプロダクトに関しての知識も豊富。周さんの影響でブラジリアン柔術を始める。

アーティスト、村上周の哲学。

ー 周さんの作品から村上美術(株)が始まっているとのことなので、まずはアーティストとしての村上周のことをお伺いしたいです。まず作品を拝見して、グラフィックや色彩が魅力的だと感じたのですが、ご自身では、どんな作風だと思いますか?

村上周(以下、周): グラフィックという部分は強みかなと。構成という面では、通常の画家と違うところがあると思ってます。

ー シルクスクリーン作品も多いですが、お好きだからですか?

周: 仕事をスタートしたときにアパレルのグラフィックデザインをやっていたんですが、よくTシャツのシルクスクリーンプリントを自分でやってました。絵を描く時に鉛筆や定規を使うのと同じ感覚で。

ー 鉛筆などで手描きをすることもありますか?

周: よくありますよ。もともとは鉛筆で書いてましたから。(と言って、お店の後ろからスケッチブックを持ってくる)

村上敦志(以下、敦志): 僕の一番の功績は、これをファイリングしたことですね(笑)。昔は捨ててましたから。

ー カリグラフィなどのイメージもあります。文字関連も昔からお好きでしたか?

周: カリグラフィは最近ですね。言葉にはずっと興味がありました。描く文字にはコンプレックスがあったんですが、共同で展示をした神山(隆二)さんは、タギングでばっとエネルギッシュに描く。そこで、きれいさみたいなものは関係ないなと思ったんです。で、自分も形にしてみたら、味になってるし、いいんじゃないかなということで描きはじめまして。

左が「MAKE ART NOT WAR」、右が「POSITIVE THINKING, POSITIVE MINDSET」と描かれている。

ー 言葉の意味も重要ですか?

周: 重要ですね。ここにある「MAKE ART NOT WAR」という言葉は、今年ずっしりきますね。「POSITIVE THINKING, POSITIVE MINDSET」というのは、コロナで自粛時にできたものです。自分は楽観的なので、コロナにかかったらかかったで…くらいでしたけど、たくさんの人が悶々とするんだろうなと思いました。この「POSITIVE…」をインスタであげたら、この言葉をTシャツにプリントできますかと、問い合わせがたくさんきまして。知り合いのお店にも、あるだけのTシャツにプリントして送ってあげたり。そしたらものの数分で完売して。こんなに喜んでくれるんだな、うれしいなと、自粛期間中は、これをずっとやってましたね。当時、コロナのニュースに合わせて、気分が上がり下がりするんで、そのときの気分で色を作ったりしてました。

ー 色彩の話でいえば、すごいユニークな色使いですよね。どうやって培ってきたんですか?

周: たぶん母譲りのところもあるのかな。子供のころ、母が絵の具作りをすごいほめてくれたんです。いまでも色作りには特に時間をかけてますね。色は感情なのかなと。

敦志: 色のセンスについては、昔からよく言われてたよね。

周: 元U.F.O.の松浦俊夫さんと、松浦さんのラジオ番組 「Tokyo Moon」(インターFM897)のイベントをやったんです。松浦さんのプレイリストに魂として反応する部分があって、そこから受けたインスピレーションをもとに作品を発表するというプロジェクトをいまも行ってます。1週間に1枚ずつ作品を作るんです。

ー 1週間に1作品というのは、かなりハイペースですね。

周: 1年間は続けると決めてます。仕事って、いただいた仕事も大切だけど、課題を設けて淡々とやることも重要。年齢を重ねていくと、お声をかけていただくことは増えてきます。でも、いただいた仕事だけだと満足できない部分もあって。どんな結果になるのかはわからないけど、損得なしでこれから先どうなっていくのか、自分でも楽しみですね。

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(sold out)みんな仲良く @brickandmortar_nakameguro

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敦志: この4色の作品も反響が大きかったよね。

周: ブラック・ライブズ・マターの問題が起きたじゃないですか。そのときに、情報に踊らされて感情的になるんじゃなくて、その問題をちゃんと自分なりに解釈しようと思ったんです。人種問題をいろいろ調べている中で自分が出した結論は、禁止するルールがたとえどれだけあろうと、差別を完全になくすことは難しいということ。それだけ根深い問題でしょ? だから、スキンカラーの4色に塗り分けて、ひとつのキャンバスの中で共存しているというこの作品を作りました。共存して、認め合うということですね。たった4色でも深いテーマは描けるなと思いました。

ー 現代アートだと、コンセプトがしっかりしている作品が多いですよね。周さんがアートを製作するモチベーションは、なんですか?

周: いま生きていて感じていることを発表するのは、一種の使命みたいなものかなと思ってます。

INFORMATION

村上美術株式会社

www.murakamiart.jp

BRICK&MORTAR

東京都目黒区中目黒1-4-4
www.brickandmortar.jp

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