人工タンパク質がアパレル産業に革命を起こす?
ー 今回の「The Sweater」は、2019年に〈ザ・ノース・フェイス〉から発表された「ムーン・パーカ」と同様、バイオベンチャー企業のスパイバー社との共同開発によるものですよね。新井さんはスパイバーという企業をどのように捉えていますか?
新井: 2014年、弊社の社長である渡辺貴生が、スパイバー代表の関山和秀さんに会うため山形県鶴岡市の本社を訪れた際、私も同行していました。そのときに関山さんから聞いたのは我々の想像を超えた話で、革新的な素材を生み出すことで既存の産業構造を大きく変え、資源や環境など様々な課題の解決を図り、最終的にはそれを世界の平和につなげたいという関山さんのビジョンに衝撃を受けました。そんなスパイバーといっしょにモノづくりができるのは、非常に面白く、刺激的なことです。
ー 人工タンパク質素材が今後普及すれば、アパレルをはじめとする多くの産業に革命を起こす可能性があると言われています。新井さんはその点についてどのように考えていますか?

新井: もちろん人工タンパク質素材については大きな可能性を感じていますし、だからこそ私たちはスパイバーと共同で商品開発に取り組んでいます。ただ、だからといって、すべての石油資源をそれに置き換えられる時代がすぐにやってくると考えているわけではありません。
ぼく自身、かつては〈ザ・ノース・フェイス〉の機能開発に携わり、アウトドアフィールドにおけるスペックの高さを追求してきました。しかしいまはそれだけではダメで、機能的であると同時に、エシカルでサスティナブルであることも求められる時代です。テクニカルな部分とエコファンクションな部分のバランスを取ることは簡単ではありません。これからは今回の「The Sweater」のように、新しい素材と既存の素材をうまく融和させながら製品を開発していくことが大切になるでしょうね。