シンちゃんたち東京人の遊びがすごく面白かった。
三太: 僕は20歳くらいの時にシンちゃん(SKATE THING)と友達になって一緒に遊んだりするなかで、シンちゃんたちのライフスタイルが面白いなと思ったんですよね。それが『TOKYO TRIBE2』を描く一つのきっかけになっています。特に用もなく集まってしゃべったり、スケボーしたり、都内を車で裏道を通って移動したり、家におもちゃが置いてあったり。そういうライフスタイルが、すごく東京っぽいなって。

渋谷のクラブ、ブエノスやエイジアもリアルに描かれていた。『TOKYO TRIBE2』より(『井上三太画集 SARU』)。
三太: 藤原ヒロシさんの家に連れて行ってもらったときは、僕より2~3歳しか年上じゃないのに家に螺旋階段みたいなのがあって、その間に珍しいスニーカーがダーッと置いてあって「すげー!」となったり。あとはNIGOさんとかタキシンさん(滝沢伸介)、ヒカルさん(岩永ヒカル)、YOPPI(江川芳文)とかも普通にいたりして。
で、今僕はL.A.にいるので「コンプレックスコン」(世界最大のストリートファッションの祭典)とかに行くと、たとえばNIGOさんが作ったものとかKAWSのフィギュアとかが、ものすごい値段で出展されていたりするんだよね。あのとき、ああして築かれた裏原宿のカルチャーが、今なおとてもリスペクトされていることを、東京にいたとき以上に再認識していて。そのカルチャーも元々はアメリカにルーツを持つわけで、僕としてもここでまた新しいことができるんじゃないかなと思っているんです。
ー 『井上三太画集 SARU』には、三太さんのいとこである漫画家・松本大洋さんとの対談も収録されています。三太さんと大洋さんの対談というのは、かなり貴重な企画なのではないでしょうか。
三太: 大洋とは若い頃は仲が良くて、江ノ島で共同生活をしていたこともあったんですが、同じ職業をしていることもあって、ずっと疎遠になっていたんです。特に決定的なケンカがあったわけではないんだけど、なんか気まずくなってしまった時期があって。で、今回の企画で久しぶりに会って。
ー お互いに相当に腹を割って話している印象を受けました。
三太: そうですね。昔、タケイグッドマンくんがあるミュージシャンと気まずい関係になったことがあるみたいなんですが、タケイくんが「俺はその人としっかり話し合って仲直りしたよ。だから三太くんもそれをした方がいいよ」と言っていたんです。まさにその場が、今回の対談になったのかなと。

アメリカでの奮闘記を描いたオールカラーコメディ漫画。『三太のLA LIFE』より(『井上三太画集 SARU』)。
ー あらためて2017年、50歳を目前にしてL.A.に移住した理由を教えてください。
三太: もともと映画や音楽、ファッションをはじめとするアメリカのカルチャーにすごい憧れがあって、15年くらい前からL.A.に旅行したりしていたんです。で、そのときにL.A.のコミックショップの店長と仲良くなって、こう言われたんですよ。「L.A.にいればハリウッドも近いし、映画のプロデューサーとかも紹介できるよ。でも、おまえさんがL.A.に住んでいないと、『来週会議がある』となってもパッと呼べないよね」。その言葉がずっと自分の頭の中に強烈にあって。それで4年前に思い立って、グリーンカード(永住権)を1年かけて取得し、奥さんと当時13歳の娘と一緒に移住してきたんです。